• 【2022年アニメ総括】『水星の魔女』『ぼっち・ざ・ろっく!』注目すべきTVアニメ
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2022.12.31

【2022年アニメ総括】『水星の魔女』『ぼっち・ざ・ろっく!』注目すべきTVアニメ

『機動戦士ガンダム 水星の魔女』キービジュアル(C)創通・サンライズ・MBS

多彩なアニメ作品が放送・上映・配信された2022年。
記憶に残ったタイトルは? アニメ作品やアニメビジネスの新たな傾向とは?
昨年2021年に続き、アニメ評論家・藤津亮太とアニメージュプラス編集長・治郎丸が1年のアニメシーンを振りかえる対談を、2回にわたってお届けしよう。
第2回のテーマは、2022のTVシリーズ注目作とTVと配信の今後だ。
▲藤津氏(左)と編集長・治郎丸(右)

【気を吐くオリジナル作品とガンダムの新機軸】

編集長 2022年のTVシリーズ、藤津さんはどんな作品が印象に残りましたか。

藤津 個別の作品で言うと、TVに関してはオリジナルが予想より強くてよかったですね。まず『リコス・リコイル』がヒットしたのは大きかった。

編集長 『リコリコ』は完全なオリジナル作で、足立慎吾監督もアニメーター、キャラクターデザイナーとしては名前が知られていたものの初監督作品ですから、当初はどこに注目すべきか見えにくかった。それが、始まってみたら内容の面白さが評判になり、一躍人気作に。

藤津 「正しいオリジナルアニメのヒットの仕方」ですよね。同じくオリジナルで気を吐いた作品では『機動戦士ガンダム 水星の魔女』も挙げられます。こちらも、今の若い人に“ガンダム”を届けるという目標をはっきり打ち出し、それをクリアしている。

編集長 『水星の魔女』はシリーズ初の女性主人公、しかも学園をメインの舞台にしているという、異色づくしの作品です。にも拘わらず、見事にガンダム作品として成立させているのが凄い。

藤津 そうですね、毎週バトルするというわけでもないですし。

編集長 「ガンダムとは何なのか?」という問いを柱に物語が進むので、MSバトルがなくとも作品の中心にガンダムの存在を感じ続けることができる。そのストーリーテリングが実にクレバーで巧みだなと思いました。

藤津 玩具メーカーの要請というファクターは一旦置いておいて、かつてロボットアニメが隆盛だった時代ってハードウェアに人々が魅力を感じていた時代、さらに言うなら子供がお父さんの持っている自動車やライターといったガジェットに憧れていた時代だったと思います。当時だと、ラジカセもメカニカルなボタンの作動感などに魅力がありましたよね。
それが今はソフトウェアの時代になり、ガジェットそのものに対する憧れが減ってしまっている。それが大きな時代の変化となっていて、今の10代の人からすると作品内に「ロボットを出す理由」がわからなく感じる理由にもなっていると思うんですね。

編集長 なるほど、それはありますね。

藤津 そういう時代にロボットものをどう作るのか、というのが命題となってきます。そこで“世界の謎型ロボット”というジャンルが出てきまして、その象徴が『エヴァンゲリオン』です。

編集長 つまりロボットという存在に対するフェティッシュな欲望が一般的でなくなったため、その存在自体を物語のテーマ、みんなが知りたい「謎」の位置に据える、ということですね。

藤津 そうです。『エヴァ』は特にTVシリーズ前半は実直にロボットアニメをやっているのですが、後半に進むにつれて「そもそも、このメカは何だ?」ということ自体がテーマになりますよね。作品の間口を広くするとなると、ロボットの存在そのものがドラマに絡んでいく必要があるわけです。

編集長 『水星の魔女』はまさにそういう展開になっています。そのような新機軸がある一方、同じガンダムで劇場版作品の『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』のような、ファースト回帰の動きもありました。今年はそれらが両立したところも、おもしろかったですね。

藤津 『ククルス・ドアンの島』は「歌舞伎『機動戦士ガンダム』ククルス・ドアンの段公演」的な感覚だと思うんですよ。長い演目のここだけ抜いてお見せしますが、ガンダム的な要素は全部入っていますよ、というのがミソ。

編集長 富野由悠季監督のガンダムではなく、安彦良和監督のガンダムというところもひとつのポイントですよね。

藤津 その一方で、富野監督も劇場版『Gのレコンギスタ』2作(『IV 激闘に叫ぶ愛』、『V 死線を越えて』)が公開されて意気軒昂で。
そういう意味では、作品の幅が広がると共に、『水星の魔女』が若年層を取り込んだことで、ガンダムというブランドのポテンシャルがさらに上がった1年、という言い方ができるかもしれません。

アニメージュプラス編集部

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