●書店員：栗俣力也オススメ！ 異世界マンガ３選！
＜栗俣力也＞
小説とマンガが好きな書店員。絶版書の復刊プロデュースを数多く仕掛けるなどヒット本を発掘することで知られ、読者や出版業界関係者に「仕掛け番長」の愛称で呼ばれる。
☆異世界へ行く前が重要⁉ 細部まで見逃せない家族戦記
『ゲーム オブ ファミリア‐家族戦記‐』原作:山口ミコト 作画:Ｄ．Ｐ／出版社：KADOKAWA
主人公は16歳の男子高校生。父親が最近再婚して、血の繋がらない母、姉、妹が出来たが、再婚から３カ月も経たないうちに父が他界。そんな中、血の繋がらない女家族と主人公の４人は異世界へ召喚されてしまう……という話。この作品の注目ポイントは、圧倒的統率力と判断力をもち、会社経営もこなすスーパー主婦の若い母、空手の全国大会５位の実力をもつ最強ＪＫの姉、小６ながら来年海外の大学へ飛び級が決まっている天才少女の妹、というチート女家族……ではない！
まず注目して欲しいのは、この作品の原作者である山口ミコト氏。山口氏は、『トモダチゲーム』、『DEAD Tube』、『ガン×クローバー』など、人間の心理的な闇の部分を打ち出した作品を得意とし、ヒットを飛ばす人気作家。そして作画のD.P氏はそんな山口氏と『ガン×クローバー』でタッグ組んだ、ダークファンタジーの名手とも言える超画力の持ち主。そんな２人が組んだ作品が、「ただのチート異世界物」である訳がない！
今作は、主人公が「人を騙し欺くこと」により実現させる、自分以外の３人の家族のかりそめの英雄譚なのだ。ちなみに、物語の途中で明かされる死んだ父親の真実には度肝を抜かれるし、この作品の本質が見えてくる非常にオススメのエピソードだ。異世界に行く前の話が物語で重要な役割を持つのは、他の異世界作品であまり見られない、この作品の面白さのひとつだろう。
☆作風に注目！ ギャグも盛り沢山の王道ストーリー
『ひとりぼっちの異世界攻略』著：びび、五示正司／出版社：オーバーラップ
高校生活をぼっちとして過ごしていた主人公。クラスごと異世界召喚という目に合うも、他のクラスメイトとは違う場所に一人ぼっちで召喚される。しかも、貰えるスキルが早い者順で、既にクラスメイトが取り尽くしてしまっていたため、残りものしかなく……。
この作品は基本的には、いわゆる異世界物のお約束をしっかりと踏襲した王道ものになっており、もちろん内容も面白いのだが、オススメポイントは作風にある。『コロコロ』や『ボンボン』という雑誌で育ったという漫画好きは多いのではないだろうか？ あの頃ゲラゲラ笑ったりドキドキしながら読んでいた漫画達の作風そのままで内容だけ濃くなった漫画……。そんな作品がこの『ひとりぼっちの異世界攻略』なのだ！ もちろん大人が読む漫画としての読み応えもあるのだが、ギャグのツッコミや独特の間の演出、そしてあの頃の憧れのヒロイン像……。懐かしさと新しさが交互に襲ってくるような新しい読み味に、虜になってしまうだろう。
☆絶望から這い上がれ！ 状態異常の恐ろしさを侮るな
『ハズレ枠の【状態異常スキル】で最強になった俺がすべてを蹂躙するまで』著：鵜吉しょう、内々けやき、篠崎芳／出版社：オーバーラップ
クラスごと異世界へ召喚された主人公。クラスの他のメンバーが勇者と称えられる中で、彼に冷たい笑顔を向ける女神から告げられたのは「廃棄」の一言。彼が異世界召喚で得た能力はEランク。いるだけで他の勇者の足を引っ張りかねない迷惑な存在であると。クラスメイトからも「お前は邪魔だ」と責められ、彼は洞窟のような場所に捨てられてしまう……。
今作はそんな最悪の展開から物語が始まる。絶望の中から這い上がるストーリーは、異世界物の中でもダークサイドとして人気がある。この作品は、そんな作品の中でも、女神の性格の悪さがひときわ目立つ漫画だろう。
そんな世界にあって、主人公が得た能力は毒・麻痺・睡眠。いわゆる相手を異常状態にするスキルだ。確かにこれではダイレクトにダメージを与えることは出来ない。しかし、こういった異常状態能力は実は使い方によっては何よりも怖いスキルであることは、『ポケモン』をはじめ多くのゲームで実証されているのではないだろうか？ そう、この物語の見どころは状態異常スキルを使い、何をしてでも生き抜く主人公のその姿そのものなのだ。
計６作品を紹介したが、気になるものは見つけられただろうか？ 2月5日から開催される『GoTo異世界キャンペーン』第1弾では、33作品が対象作品になっている。自分だけの異世界、探しに行ってみては？
★『GoTo異世界キャンペーン』で異世界にGO！＞＞＞
アニメージュプラス編集部
