• 【映画『バブル』】荒木哲郎&川村元気、注目タッグの秘密!「大事なのは〈最初の観客〉でいること」
  • 【映画『バブル』】荒木哲郎&川村元気、注目タッグの秘密!「大事なのは〈最初の観客〉でいること」
2022.04.27

【映画『バブル』】荒木哲郎&川村元気、注目タッグの秘密!「大事なのは〈最初の観客〉でいること」

(C)2022「バブル」製作委員会


ーー荒木監督の作品を川村さんがプロデュースする、という本作の企画はどのように動き出したのでしょうか。

荒木 きっかけとしては、自分とWIT STUDIOの和田丈嗣、中武哲也、両プロデューサーが川村さんに「一緒に作品を作ってもらえませんか」と相談しました。それは、自分たちが今やっているフィールドからさらに外に出るため。自分たちだけでは届かないところに、川村さんと一緒になら連れて行ってもらえるのではないかと思ったからです。もちろん、オレ自身が細田守さんや新海誠さんたちと同等の才能を持っているなんてまったく思ってはいませんが、ただ、何というか……新海さんたちが川村さんと仕事をすることで、ご自身の可能性をさらに大きく開いたという印象があったんですよ。川村さんとの仕事は、より広いお客さんに向けて自分を開くことができる場だと感じて、「オレだったらどう開けるのだろうか?」という興味があったんです。

ーーでは川村さんは、どんな思いで荒木さんとの仕事を選んだのでしょうか。

川村 細田監督、新海監督、そして今回の荒木監督もですが、日本の優れたアニメーション監督が海外でさらに広く知られて、より多くの観客に作品を届けられたらなと思っています。荒木監督とお仕事をする上で決定的だったのはやはり、『進撃の巨人』の北米でのインパクトでした。ロサンゼルスで仕事していると、ハリウッドの監督たちなどもかなりアニメの『進撃』を観ていて、「あれ、メチャクチャいいね」って言ってくるわけです。「荒木監督の演出とWIT STUDIOの映像は、ものすごく強く支持されているんだな」と感じました。特にアクションですよね。活劇的なエンタテイメントはまだ、自分の中でも充分にチャレンジしていなかった領域なので、もしやれるならば荒木監督とやってみたいという気持ち大きかったですし、それが日本のアニメーションファンはもちろん、きちんと海外のアニメーションファンに届くといいなと思いました。

ーー荒木作品の魅力をもう一段、世界に広いところに届けるために、どんなプランを?

川村 いつもそうなのですが、僕はあまりプランを持って臨んではいないんです。そのとき一緒にやる監督やチームと、そのときにしかできない、ユニークなことを突き抜けてやりたいだけ。ただ、「最初の観客でいよう」と思ってはいます。観客が1900円払って、マーベルとかDCとかディズニーとか面白い映画がたくさんある中でわざわざこの作品を選んでくれたとすれば、キツいことを言う権利もある。「ここが良くない」とか「ここで醒めた」とか「意味がわかんないんだけど」とか……そういう意味では観客は残酷です、本当に。だから、そういう気分で自分たちに厳しめに見ておこうと心がけている。自分が観客として観たときに、単純に「なんか醒めちゃった」とか、そういう目線も大事にしています。

荒木 まさに、そういう川村さんの視点こそが、一番参考になりました。川村さんには「僕、心がOLなので」っていう殺し文句があるんですが(笑)、そういうストレートな感想がけっこう効く。たとえば、今回の映画で「メイクアップ」と我々が呼ぶ手法を使っていますが……。

ーー『甲鉄城のカバネリ』から使われている、決め所のカットでキャラクターのディテールを濃厚に描くという手法ですね。

荒木 その使いどころを勉強し直したような気持ちになりました。というのも、制作中にいかにもキメのカットでメイクアップをバンと使ったとき、川村さんが「感動してくれって言われたみたいで醒める」って言ったんですよ。それは寝耳に水だった。「決め所で使ったら感動するに決まっている」と、オレは思い込んでいたんだなと(笑)。

川村 メイクアップカットは、エモーショナルでもう十分感動できているシーンよりも、さりげないところで使った方が効いてくる気がしたんです。リアルな恋愛でも、失恋して悲しいときに思い出すのって、とびきり可愛い瞬間とかドラマチックな瞬間じゃなくて。歯磨きしている姿とか、寝起きとか、そういう何気ない瞬間を思い出すほうが切なくなると思っています。そういう、普通の人間の心理を伝えただけなんですけどね(笑)。

荒木 でも、言われてみればその通りで。オレはどこかで「決めどころだから、オレたちの必殺ホールド!」みたいな感覚でいたのかもしれないと、考えをあらためました。もちろん、メイクアップが効く場面も依然としてあるし、手法そのものは否定しようとは思わないけれど、もう一段進歩したかたちでより効果的に使うことができると気づけました。

ーー完成する前に観客に見てもらって素直な感想を言ってもらえるような感覚でしょうか。

荒木 そうですね。川村さんには今回、ほかにも常に手厳しいことを言われ続けて……「ダビングの最中でも言うんだ」とビックリしましたけど(笑)。

川村 映画ができた後、観客から言われると傷つくじゃないですか(笑)。それよりは、先に言っておいたほうがいいかな、と。

荒木 確かに(笑)。だから今回は、川村さんはもちろん他のスタッフのみんなの意見も徹底的に聞いて、それを受け切るというのがオレの中の大きな挑戦でした。WIT社内の全員に声かけて、とにかく大勢に制作中のムービーを通しで見てもらって、アンケート用紙に「どう思ったか」って書いてもらうみたいなこともやりました。そこで遠慮なく言われたこともかなり勉強になりましたし、その意見に応えて考え直すたびに作品がよりよくなるのを実感できたし、実際にお客さんの目に触れる前に先回りして、懸念点を可能な限り整えて出すことができたと思います。そういう意味でも、やはり川村さんと一緒に作れてよかったと感じますね。


(C)2022「バブル」製作委員会

アニメージュプラス編集部

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