9月9日(金)に全国公開される『夏へのトンネル、さよならの出口』は、八目迷原作のライトノベルを劇場版アニメとして映像化した作品。中に入れば欲しいものが手に入れられるという「ウラシマトンネル」の都市伝説を通して出会った高校生の男女、塔野カオルと花城あんず。夏の田舎町を舞台に、切なくも優しい二人の青春ドラマが展開する。
また本作は映画『デジモンアドベンチャーLAST EVOLUTION絆』や TVアニメ「アクダマドライブ」「BLEACH千年血戦篇」などを手がける田口智久監督と、『映画大好きポンポさん』を制作した新進のアニメーションスタジオ「CLAP」がタッグを組んだことも大きな注目ポイントとなっている。
今回は田口監督、そして本作の制作プロデューサーを務める松尾亮一郎さんに、作品とスタジオそれぞれの魅力を語っていただいた。
▲田口智久監督
――まず、本作を監督されることになった経緯からお聞かせいただけますか。
田口 定期的に劇場作品を手がけていきたい、と考えていたところに、自分が今まで手がけたことがない青春もの、しかも劇場作品というオファーでしたので、「これは断る理由はないな」と思いました。
――このジャンルに興味があったのですか?
田口 自分のフィルモグラフィー的にはアクションものが多いこともあって、「王道の青春もの」は新しい挑戦になるんじゃないか、という期待がありました。
――原作を読まれた際の印象は?
田口 ラノベと聞いていたので気軽に読み始めたところ、空気感の描写が非常に上手くて……読み進めていくと目の前の風景が立ち上がってくるような印象を受けました。お話の展開もいわゆるジュブナイルSFやボーイ・ミーツ・ガールものに見えて、実は家族の問題など根深い要素もあるなど、場面ごとに各色合いが強まるような不思議な構造のドラマとなっていて「そういう部分を映像で描いていくことに意味があるかもしれない。これは面白いものになるな」と思えました。
――では、読み進めていく中で映像の具体的なイメージはできあがっていた感じでしたか。
田口 作品のテンションやフィルム感みたいなものは出来上がっていたと思います。特に冒頭部分の語り口を読みながら、以前からやりたいと考えていた、風景を重ねながらキャラクターの心情に寄り添うみたいな演出がハマるんじゃないかな、なんて考えましたし。
――それを具体化するために、特にこだわられた部分はありますでしょうか。
田口 フレームサイズを横長のシネマスコープにして、背景をしっかり見せることで作品への没入感を高めたり、演技の間尺をしっかりとる、ということは意識しています。
――つまり、劇場で観ることを意識した作りになっている?
田口 そうですね。まずは劇場で楽しんで頂けるように考えて作っています。
――キャラクターデザイン・総作画監督を務める矢吹智美さんはどういうところから参加を?
田口 実はこの作品の前にオリジナル企画をやるはずで、その時に矢吹さんが参加されていたんです。結局その企画は止まってしまったんですが、そのまま矢吹さんに本作に参加してもらうことになりました。
――矢吹さんの絵は本作にもフィットした、ということですね。
田口 そうですね、何回かのやり取りでしっかりとこちらのイメージするキャラクターを作り上げていただきました。あと矢吹さんの絵の安定力が凄まじくて、作業が進んでいく中で、そこに本当に助けられています。素晴らしい人材に出会えてよかったです。
――絵が崩れないことが大事というのは、おそらく本作が微妙な仕草や表情にこだわられているからだと思うのですが、違いますか。
田口 そうですね、丁寧な描写を大切にしています。
(C)2022 八目迷・小学館/映画『夏へのトンネル、さよならの出口』製作委員会
アニメージュプラス編集部