●漫画とアニメのテクニック
星野 素人の質問で恐縮ですが、脚本で書かれている文字数が何分になるのか、これはやってらっしゃらないと掴めないですよね。筆がのって書いてしまうこともあると思います。アクションが多いエピソードと、会話が多いものとで違いがあるんでしょうか?
山下 アクション作品になると多くなりがちですね。ト書きばかりになるけど「これ30秒もかからないよね」とか。人によるかもしれませんが、僕の場合アクションシーンは気にせず書ききってしまって、全部書いてからどうしようか考えます。途中で気にすると良くないんです。
星野 なるほど。
山下 全部書いてからぎゅっと縮めた方が面白くなるというのは、先輩から教わったことですね。後から切っていくのは誰でもやることなので。その方が自分の書きたい部分、どうしても残したい部分、自分のやりたいものが出てくるというか。
———星野先生はネーム作業の前に、メモなどは取られるんでしょうか?
星野 文章で書き起こしてから始めるタイプです。思いついたエピソードやセリフを文字で書いて、それをページに割り振って……。その作業の中で、やはりどうしても削ることになりますね。でも、削っていった方が洗練されるなという感覚があります。
山下 思いの丈がどんどん凝縮される感じですね。
———今回の脚本作業で、一番多く稿を重ねた話数は?
山下 たぶん第1話か第2話が一番稿を重ねた気がします。第7稿までいったのかな? もちろん第3稿くらいで決定した話数もあります。
———第1稿の段階で一番長くなった話数などは覚えていますか?
山下 これもやはり第1話が一番長くなった気がします。みなさんに見せる前に削っていますけど。
星野 全13話になったとはいえ、私はコミックス8巻分を1クールに入れ込むなんてあまりにも無茶振りじゃないかと思っていました。私の師匠となる先生は「コミックス4巻で1クールくらい。俺はそれを狙って作っている」とおっしゃっていましたし。
山下 それは作りやすいかも(笑)。
———4巻というと、どのくらいの連載期間になるんでしょうか?
星野 週刊連載だとちょうど1年くらいですね。
———1年の連載が、アニメになると3ヶ月に。
星野 そうなんです(笑)。なので、これは相当な無茶振りだなと思ったし「果たして実現出来るのか?」とも思ったんです。と思ったら、いただいた脚本の1話1話が面白くて。「え? 本当に? 凄くない?」って。それでいて抑えていただきたい部分はちゃんと抑えていただいている感もあって、これが職人かと。
山下 それはお仕事ですから、というとあんまりなんですけど(笑)。原作があるものを受け取った時は「オリジナルを書いていたらこの子たちはどうして欲しいのか……」というのを常に思い浮かべながらやっています。
(C)星野 真・小学館/「ノケモノたちの夜」製作委員会