• 【ネタバレ注意】何度でも観たい!『シン・仮面ライダー』は褒めるところしかない
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2023.04.09

【ネタバレ注意】何度でも観たい!『シン・仮面ライダー』は褒めるところしかない

(C)石森プロ・東映/2023「シン・仮面ライダー」製作委員会

庵野秀明が脚本・監督を務めた映画『シン・仮面ライダー』が現在公開中だ。仮面ライダー生誕50周年作品ととして制作された本作は石森(現・石ノ森)章太郎の原作コミックとTVシリーズ第1作への深いリスペクト、そして現代的にアップデートされたビジュアルとストーリー、アクションによってまったく新たなヒーロー像を提示する作品として結実し、大きな話題をふりまいている。
『シン・仮面ライダー』の魅力はどんなところにあるのか? その真実に迫るべく、『シン・仮面ライダー』にどっぷりハマってしまった映像研究家/編集者の岸川靖さんによるコラムをお届けしよう。
※本稿はいくつかの本編の細かい描写に触れています、未見の方・ネタバレを気にする方はご注意ください。


「世代じゃないのでご辞退させてください」
『シン・仮面ライダー』の試写のお誘いを、そう断ったのは3月初めのことだ。いまから思えば、何ともったいないと反省してしまうが、当時は本当にそう思った。
もちろん、私の周囲の友人の多くは、放映当時どハマりしたという人が結構多く、大ヒット作であるという認識はある。だが、なにせオリジナルのTVシリーズが始まった時、私は中学3年である。
第1話を観た印象は「何てちゃっちい」だった。伊上勝の脚本は『隠密剣士』と構成が同じだし、安っぽいタイツの怪人も、コマ落としの特撮も受け入れられなかった。そういえば、ヒーローものには昔からハマったことがなかった。そういう理由もあり、現在までに「仮面ライダー」は全シリーズや劇場版を合計しても10エピソードも観ていない。当然、作品に対する思いれはゼロだ。

とはいえ、私はフィルムコミックなどを含めると20冊以上に及ぶ庵野監督作品の書籍の構成・編集を、またテレビアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』最初のDVD化の時は解説を担当している。そういう付き合いもあり、公開2日目に映画館に出かけた。

衝撃だった! 画面中央に映し出される映倫マークと共に始まる、アップテンポの劇伴、映像はバイクと大型トラックのチェイスシーン。大スクリーン(IMAX)で展開される映像と音響は、想像をはるかに超える迫力だった。画面レイアウト、短いカットの積み重ねによるモンタージュ。たちまち、その世界に引き込まれた。そこからはアッという間の2時間だった。根底には多くの石森章太郎作品に共通する、孤独と哀しみもあった。
「すまん! 俺が悪かった」と誰に謝るでもなく、猛省。以降、連日、映画館に通い(4月5日現在、13回鑑賞)続けている。

本作の魅力をどこにあるのか? 以下、思いつくままに書き出してみよう。
まず、気に入ったのは、全シーンの隙のない画面レイアウト(画面構成)だ。このシーンだと、この要素とこの要素は同時に入っているとわかりやすいとい思うときは、必ずそうなっている。それは伏線であったりするが、初見時は主人公(というか画面中央で起こっている出来事)に集中しており、見落としている要素が2度、3度で判るという仕組み。短いカットが多用され、再見しないとわからない描写もある。また、シーンによっては左右対称のシンメトリーで、このあたりはスタンリー・キューブリック監督の作品を彷彿させる。

さらに、段取り(お約束)を飛ばした大胆な構成もすごい。それは、いわゆるジャンプカットの多用だ。仮の例を挙げるなら、昔の刑事物で、犯人を捕えるため、情報を握っている人間を探す描写(聞き込みなど)の丁寧な積み重ねがあるのに対し、本作では一足飛びにいきなり情報屋を殴っているかのように、途中の段取りをすべて飛ばしている。これは80年代にTVドラマ『特捜刑事マイアミ・バイス』でマイケル・マン監督が多用した手法に近い。

段取りを飛ばしているのは冒頭からで、上映開始1分57秒ほどで仮面ライダーが登場する。このあたりが『スパイダーマン』や『スーパーマン』など、数多のヒーローもののリメイクとは明確に異なっている。
それまでのヒーローものが、誕生までの過程を丁寧に描いているのに対し、本作は登場まで1分57秒、1分57秒なのだ!(大事なトコなので3度書きました)
過去のリメイク作品では正直過ぎるほど丁寧に描いた(観客にとっては既知の要素である)誕生部分を、あっさり捨て(のちにフラッシュバックカットで入る)、いきなりの登場! 圧倒的な強さを見せつける。

登場キャラクターの内面の声も、タイトルが出た直後に主人公が自問自答する以外、ほとんどない。
最近のアニメーションでは、その世界観や設定を過剰ともいえるほど、キャラクターのモノローグで説明してしまう作品が多いのに対し、本作では最低限に留めているのも良い。
なぜ、最低限にとどめていると良いのか? 想像力を喚起するからだ。説明がある場合、物語はそれ以上でも以下でもない。しかし、説明が無い場合、想像力を使えば無限の物語世界が拓ける! 想像力は妄想力でもあるのだ!

(C)石森プロ・東映/2023「シン・仮面ライダー」製作委員会

アニメージュプラス編集部

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