本作は大画面で大音量での鑑賞を推奨したい。配信を待つという方もいるだろうが、劇場の大スクリーンでの鑑賞体験には、はるかに及ばないからだ。
内容的には導入部を含み、以下の7章に分かれている(※もちろん、私の私観)。
1) プロローグ(仮面ライダー&クモオーグ篇)
2) コウモリオーグ篇
3) サソリオーグ篇
4) ハチオーグ篇
5) バッタオーグ02&KK(カマキリ・カメレオン)オーグ篇
6) 11人ライダー&チョウオーグ篇
7) エピローグ
冒頭、本郷とルリ子の逃走するバイクを追跡する2台の大型トラック。初見の時は唐突にパトカーを押し出しているように見えたが、2回目にIMAXで鑑賞したとき、俯瞰でのカットで、2台のパトカーが道を塞ぎ、それをトラックが蹴散らしているのが確認できた。その後、爆発と共にルリ子は空中に放り出され、人間なら即死と思われる高さから落下しても無傷なのは、生体コンピュータとして生まれた強化人間だからなのだろう。
本作はヒーローモノだが、そこに共に組織で育ったルリ子とヒロミ(ハチオーグ)という、こじらせ気味の百合要素と、本郷と一文字の正統派BL要素が混入されているのも楽しい。
「すまない、一文字くん」
「謝罪じゃない。そこは感謝だ」
「ありがとう、一文字くん」
「くんじゃない。ここは呼び捨てだ」
「わかった、一文字」
ここのやりとりはグッとくる。一文字が攻め、本郷は総受けだ。
また、ショッカーは悲しい記憶を多幸感で上書きするという洗脳プログラムを用いているが、ルリ子にパリハライズされ、洗脳が解け滂沱の涙を流す一文字に、「彼の過去に、いったいどんな凄惨なことが」と思いを巡らしてしまう。
そうした、必要最低限の描写や説明しかないため、妄想をかきたてるシーンがいかに多いことか。コミケの二次創作が楽しみだ……話が横道にそれた。
最後に本作の楽しみ方を紹介しよう、
まず、最低3回は観てほしい。これはマスト。
初回は劇場中央部で物語を把握、2回目は劇場後部で画面を、隅から隅までを注意深く観察。そして3回目は、スクリーンを見上げるほど前に座り、迫力を堪能する。
これだけで、きっと気づきがある。
ちなみに私は4月5日段階で13回鑑賞しているが、毎回、気づきがある。例えば、ハチオーグの口癖「あらら」は全部で8回。これはハチと8を引っ掛けているのではないだろうか? そういった何度も見直してわかる部分は多い。
ちなみに、クライマックスで登場する11人のバッタオーグ(偽ライダー)。この11人という人数は原作準拠で、後半戦で6人になるのはテレビ版に準拠。つまり、原作とテレビシリーズ初期を融合させたハイブリッド作品なのだ。
またショッカーの戦闘員が無言で「イーッ!」とか言わないのは、TV版でも放送初期は声を出して無かったのに準拠しているようだ。
……お分かりだろうか? 世代でないと言いながら、マニアのような原稿。そう! 映画を観てからTV版のDVD-BOXを買い、ムックなどを買い込み、絶賛研究中なのだ。
公開されている限り、何度でお足を運びたいと思う。
スタッフ、キャストの皆さま、そして監督、お疲れ様でした!
ありがとう!
60過ぎてから仮面ライダーにはまるとは思っていませんでした!
いやー、いいものを観せていただきました!(急に丁寧語)。
それにしても、いろいろ書かせていただいたので “心、スッキリだ”。
追伸
近年の「仮面ライダー」シリーズは、バイクが出てこないと聞いていた。それなのに「なぜライダー?」と、学生時代にバイク通学していた私には大いに疑問だった。
しかし、本作におけるバイクシーンは多く、かつ、格好イイ! 変形し、空を飛ぶサイクロン号(仮面ライダーの愛車)のシビれるような描写。また、自立走行して本郷の後からゆっくりついてくるさまは犬のようだ。
何よりメカをキャラクターとして扱っているのが嬉しい。80年代に「メカは友達」というセリフのロボットアニメがあったが、そう、メカは友達なのだ。
岸川靖/キシカワ オサム映像研究家・編集者・ライター。最近はYouTubeでホラーゲームの実況中継をやっている「コジマ店員のホラーは怖くない」がお気に入り。(もちろんチャンネル登録している)
『シン・仮面ライダー』絶賛公開中!
脚本・監督を務める庵野秀明と現代日本における最高のキャスト・スタッフが心血を注ぎ生み出す、新たなる仮面ライダーの物語。
出演:池松壮亮 浜辺美波 柄本佑
西野七瀬/塚本晋也 手塚とおる 松尾スズキ/森山未來
原作:石ノ森章太郎
脚本・監督:庵野秀明
★映画公式サイト★映画公式ツイッター(C)石森プロ・東映/2023「シン・仮面ライダー」製作委員会