またキラと学校の仲間たちとの艦内での人間関係も一筋縄ではいかない展開に。艦内でただ一人のコーディネイターであるキラは大事なストライクのパイロットであると同時に、ナチュラルにとっては憎き敵という存在となる。戦場はそんな複雑なキラの立場を炙り出し、内部での不信・拒絶の反応も容赦なく描いていく。
ある時は利己的に、またある時は日和見にふるまう現代の若者たちに共通する気分を『無限のリヴァイアス』『スクライド』などで若いアニメファンの注目を集めていたアニメーター・平井久司が手がける繊細なキャラクターが後押しし、アニメファンはこのヒリヒリとしたドラマを我がことのように見守ったのだ。
そして最後は、戦闘描写のアップデートだ。『ガンダム』では、ミノフスキー粒子というレーダーを阻害する物質が散布されたことで、モビルスーツによる有視界戦闘を中心とした、第二次世界大戦時のような状況での戦闘が繰り広げられていた。
『ガンダムSEED』では、核分裂が抑止される「ニュートロンジャマー」が導入されることで、核兵器や核融合によってエネルギーや動力を得る兵器が使えず、さらに電波も妨害されるために通信や誘導弾による攻撃は大きく制限されるという設定が導入された。電子戦に対抗した機器の導入や至近距離のみ電波が有効という状況、また登場する艦船の武装なども含めて現用兵器的な戦闘描写が特徴となっている。
そこに『ガンダム』以降いくつものガンダム作品を手掛けてきた大河原邦男デザインによるモビルスーツの魅力も加わり、新旧両世代を魅了するアクション場面を生み出すこととなった。
▲スピーディかつ重量感あふれるMS戦が次々と繰り広げられる
『ガンダム』の持つ不変の魅力に新たな形で挑んだ『ガンダムSEED』は、従来のガンダムファンだけでなく、新たな若い世代をも巻き込んでの一大ブームを巻き起こすこととなる。そんな『ガンダムSEED』の起点となるエピソードが語られるのが『機動戦士ガンダムSEED スペシャルエディション 虚空の戦場 HDリマスター』だ。
キラとアスランの対立を中心にした本作のドラマは、様々な登場人物によって大きなうねりを与えられていくことになる。
プラントの歌姫であり、アスランの婚約者であるラクス・クラインは、アークエンジェルに保護されたことから艦内の人間関係に少なくない影響を与える。そしてキラの級友であるフレイ・アルスターは父の死をきっかけに、キラを手駒にしてのコーディネイターへの復讐を誓うことに。
▲天真爛漫なザフトの歌姫ラクス・クライン。その笑顔の下に秘めた思いは……。
▲憎きザフトを倒すための力を求めたフレイはキラに急接近
さらにザフトの勢力圏であるアフリカに降下したキラは、ゲリラとして活動する少女カガリ・ユラ・アスハ、そして「砂漠の虎」の異名を持ち、バナディーヤを拠点とするザフトのアンドリュー・バルトフェルドと出会うことで、大きな転換点を迎えることとなる。
▲キラはヘリオポリスで目撃した少女・カガリと再会する
▲敵であるはずのバルトフェルド、だがその人間的な魅力にキラは親近感を抱く
日本のアニメシーンを揺るがせた『ガンダムSEED』、そのドラマの出発点を凝縮した「虚空の戦場」――最新作『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』へと繋がる興奮はここから始まるのだ。
>>>すべてはここから始まる!『虚空の戦場』場面カットを見る(写真16点)(C)創通・サンライズ