掛け合いの中で探ったエルル――アフレコで記憶に残っていること、掛け合いのお芝居で意識したことは?川井田 アフレコの初日は私がド緊張していたこともあって、大塚さんとの掛け合いで秋乃の心情と重なったことが思い出深いです。秋乃がお客様として初めてちゃんと会話した相手って、実はエルルなんですよね。ほかのお客様からは「邪魔だよ」「どいて」と言われてしまった秋乃が、最初に声をかけてもらったのがエルルで。コンシェルジュとしてやっとお仕事ができると思ったら、エルルのお尻を押すという……(笑)。ワクワク感からの戸惑い、でも夢に一歩近づけたという嬉しさ。それを私自身も、アフレコの時に感じていました。
大塚 秋乃との会話はキャッチボールをしつつも、ふわっとしているんですよね。その中にも芯がある、というのは意識しました。哲学的なことを言ったりするんですが、決して秋乃をからかっているわけではなく、エルルなりに彼女の言葉を受けて感じたものを言葉にしていると思っていて。川井田さんと掛け合う中で、エルルのことを探り、役を作っていきました。映画全体でエルルは東堂さんとの場面が多く、飛田展男さんとご一緒する機会もあったんですが、とにかく面白かったです。アフレコは先輩方の素敵なお芝居の記憶が鮮明に残っています。
エルルと東堂 (C)2023西村ツチカ/小学館/「北極百貨店のコンシェルジュさん」製作委員会
――本作で特にお気に入りのキャラクターを挙げるとしたら誰ですか?川井田 ニホンオオカミさんです! 眉がハの字に垂れている困った顔がすっごくかわいくて。ニホンオオカミさんのお話も好きなんですよね。秋乃とレストランの皆さんのチームワークは、私の仕事にもつながる部分を感じましたし、ニホンオオカミさんと彼女さんの関係性も美しいなと思って。二人のシーンはとても愛にあふれていて、プロポーズの言葉の演出も素敵でした。アニメーションになってより好きになったエピソードです。
ニホンオオカミ (C)2023西村ツチカ/小学館/「北極百貨店のコンシェルジュさん」製作委員会
大塚 動物たちもそれぞれのエピソード込みでとても印象的なんですが、一人挙げるとしたら丸木さんです。うっかりしてしまうところもありつつ、大事なところではコンシェルジュ精神を見せてくれて。原作と少しビジュアルが変わっているんですが、映画の丸木さんも素敵なキャラクターになっています。丸木さんだけでなく、東堂さんの昔の姿が見てみたいなと思わされます。
川井田 そうですよね!
大塚 森さんの新人時代とかね。そういうスピンオフが出てもいいんじゃないかな。
川井田 本当、見てみたいです。