• 【盾の勇者の成り上がり】藤川千愛が表現した“好き”という気持ち!
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2023.11.17

【盾の勇者の成り上がり】藤川千愛が表現した“好き”という気持ち!

【盾の勇者の成り上がり】藤川千愛が表現した“好き”という気持ち!

TVアニメ『マイホームヒーロー』オープニングテーマ「愛の歌」や『盾の勇者の成り上がり Season 2』エンディングテーマ「ゆずれない」など、話題のアニメのテーマソングを手がける藤川千愛が、アルバム『内の臓が愚痴をこぼすもので』をリリース。インタビュー前編では、放送中の『盾の勇者の成り上がり Season 3』エンディングテーマ「好きになってはいけない理由」、『聖剣学院の魔剣使い』のオープニングテーマ「1000年愛」、岡山県井原市 市制施行70周年記念ソング「普通じゃない世界を知らなかった僕ら」について、歌詞に込めた気持ちなど話を聞いた。(前編/全2回)

■どのキャラクターと重ねてもいっぺんの救いになれば

――藤川さんと言えば『盾の勇者の成り上がり』です。放送中の「Season 3」エンディングテーマ「好きになってはいけない理由」が話題です。

藤川:私はタイアップの作品は、まずは原作を読み込んで、物語には描かれていない時間だったりシーンをできるだけ想像して歌詞を書くようにしています。「好きになってはいけない理由」は、物語も第3期ということも考慮してヒロインのラフタリアと主人公・岩谷尚文の煮え切らない、心の葛藤や本音というものを歌にすることで、ヒロインの気持ちを代弁できたらいいなと思って書きました。なので今までの楽曲よりも、一歩も二歩も踏み込んで“好き”という直接的な言葉を使って作詞をしました。

――これまでも同シリーズの第1期エンディングテーマ「きみの名前」と「あたしが隣にいるうちに」、第2期エンディングテーマ「ゆずれない」を担当。今回で同シリーズに書き下ろすのは4曲目ですね。

藤川:3曲とも王道バラードという感じの楽曲でしたので、今回は変化を付けたいと思って、作曲・編曲の藤永龍太郎(Elements Garden)さんには、「スローバラードでもなくアップテンポでもない絶妙なBPMの曲にしたい」とお話をして、本曲の制作に入りました。

――テレビアニメSeason3の藤川さん的な見どころは?

藤川:原作では、人と人の複雑な関係や人間の弱さが深く描かれていて、そこがアニメでどんな風に表現されていくのか楽しみにしています。個人的に注目しているキャラクターは、やっぱりアトラです。「好きになってはいけない理由」は最初、ラフタリアの目線で書いていたのですが、書いているうちに「これはアトラにも当てはまるな」と思うようにもなりました。実際にこの曲が放送で流れると、SNSで「これはアトラの曲だと思う」と考察している声もたくさんあって。でもラフタリアやアトラに限らず、尚文を慕っているどのキャラクターにも当てはまる部分があるので、どのキャラクターと重ねてもいっぺんの救いになるような曲になればいいなと思います。



■1000年もの間夢の中でも“あなたと会えることを待ち望んでいる”

――『聖剣学院の魔剣使い』のオープニングテーマ「1000年愛」は、どんなイメージで制作されましたか?

藤川:主人公の魔王がヒロインと再会するために1000年の眠りにつき、1000年後に転生したヒロインを探すというストーリーです。この曲も物語には描かれていない部分を書きたいと思って、主人公が眠っていた間の気持ち、1000年もの間夢の中でも“あなたと会えることを待ち望んでいる”という気持ちを、サビにしたいと思って、それで〈1000年同じ夢をみたよ〉というフレーズが最初に浮かびました。〈誰かをまた救うなんて『愚』〉というフレーズもお気に入りなのですが……。主人公はもともと人間の勇者で、救った人間に裏切られ殺されて魔王になるといういきさつがあって。でも1000年後に蘇った時、また人間を救っている。そうした状況に皮肉を込めて〈『愚』〉と付けました。

――この曲も藤永さんの作曲・編曲ですね。

藤川:そうですね。いつもアニメの世界観に寄り添いながら私の良さも引き出して、エモい感じで作ってくれるので信頼しています。

■歌手になりたいと言ったら先生に鼻で笑われた

――最新アルバム『内の臓が愚痴をこぼすもので』にはそんな2曲のほか、岡山県井原市 市制施行70周年記念ソング「普通じゃない世界を知らなかった僕ら」も収録。

藤川:岡山県井原市は私の出身地で、小学校の時の先生から、コロナ禍に学校生活を過ごした学生たちに特別な体験をさせてあげたいという依頼をいただいて、学生と一緒に制作しました。学生のリアルな言葉を反映させたいと思い、今の学校生活に対する思いとか未来に対する思いなどアンケートを採ったり、オンラインインタビューなどを重ねて、学生たちの思いを汲み取って作詞をしました。

――やはりコロナ禍の学校生活は苦しかったのでしょうね。

藤川:私もそういうイメージを勝手に持っていて。ずっとマスクをしていて、修学旅行などの学校行事が中止になったりで、きっと不満がたくさん出てくるだろうと思っていたんです。でもアンケートを見たら不満の言葉はほとんどなくて、今の自分たちの環境の中で自分たちなりの青春を見つけて最大限楽しんでいる姿に、“ハッ”とさせられました。確かに自分が学校生活で何が楽しかったか振り返ってみても、学校行事はもちろん楽しかったけど、やっぱり友だちとくだらないことで笑い合ったことが一番思い出に残っているんです。そういうことを歌詞にしたり、先生の立場からはなかなか言えないような、私のようなはみ出し者だからこそ言えるアドバイスを忍ばせたりしました。

――藤川さんの学生時代は、はみ出し者だったんですね。

藤川:ルールに縛られるのが嫌いでした。子供の頃から歌手になりたいと思っていたのですが、周りから「なれるわけがない」と言われ、先生に鼻で笑われたこともありました。やっぱり先生って、こうあるべきとか逃げちゃだめだとか、言い方は悪いけど正論を押しつけるところがあって、生きづらさをずっと感じていました。そういう自分の経験から、Dメロで〈逃げたいときは躊躇なく逃げて 怠けるときはとことん怠けてさ 弱さなんか隠さなくていい〉と書きました。逃げることも選択肢のひとつで、逃げたからこそ新しい可能性や道が見えることもあるし、立ち止まったり逃げることは全然悪じゃない。「逃げないことで自分の心を壊すくらいなら、どんどん逃げなよ」って伝えたくて、ここは私からの手紙のような気持ちで書きました。実際「ここのフレーズが刺さりました」という感想を、生徒たちからたくさんもらってうれしかったです。



【後編】藤川千愛『内の臓が愚痴をこぼすもので』愚痴をこぼすことでの解放

ライター:榑林史章、編集:アニメージュプラス

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