• 藤川千愛『内の臓が愚痴をこぼすもので』愚痴をこぼすことでの解放
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2023.11.17

藤川千愛『内の臓が愚痴をこぼすもので』愚痴をこぼすことでの解放

藤川千愛『内の臓が愚痴をこぼすもので』愚痴をこぼすことでの解放

TVアニメ『マイホームヒーロー』オープニングテーマ「愛の歌」や『盾の勇者の成り上がり Season 2』エンディングテーマ「ゆずれない」など、話題のアニメのテーマソングを手がける藤川千愛が、アルバム『内の臓が愚痴をこぼすもので』をリリース。インタビュー後編では、あえて地元の岡山弁をタイトルにした「やっちもねぇ」や、たとえが絶妙な「ぬか床」など彼女の独特の感性に迫りつつ、開催中の「FUJIKAWA CHIAI LIVE TOUR 2023-2024 『内の臓が愚痴をこぼすものでツアー』」について聞いた。(後編/全2回)

【前編】【盾の勇者の成り上がり】藤川千愛が表現した“好き”という気持ち!

■岡山弁を出すにはちょっと勇気がいる

――先日もテレビ朝日『アメトーーク!』で、岡山出身芸人をやっていて、岡山出身の芸能人が今多いみたいですね。

藤川:そうなんです。千鳥さんをはじめ、ウエェストランドさん、見取り図リリーさん、東京ホテイソンたけるさんなどお笑い界では岡山がすごくアツくて。アーティストでは藤井風さんがそうで、藤井風さんは井原市の隣の出身なのでめちゃめちゃ近所なんです。

――藤井風さんは岡山なまりをそのまま歌詞やメロディに乗せて歌っていて、トークもすごく味がありますよね。

藤川:私も普段は岡山弁ですけど、敬語や丁寧語だとどうしても標準語になってしまうんです。岡山弁ってちょっとフランクになりすぎてしまうところがあるので、こういう取材などで岡山弁を出すにはちょっと勇気がいるんですね。その代わり歌詞では、岡山弁をたくさん使っていて、ライブのMCでもみんなとの距離をもっと縮めたいと思って、結構岡山弁を使うようになりました。

■人間用のぬか床があったらいいなと(笑)

――アルバム『内の臓が愚痴をこぼすもので』の収録曲にも、岡山弁がふんだんに出てきます。例えば「やっちもねぇ」という曲名も岡山弁ですよね。

藤川:「やっちもねぇ」は「しょうもない」という意味で、この曲は一言で言うと「占いとか口が上手い人に騙されるなよ」という歌です(笑)。占いが嫌いなわけでも恨みがあるわけでもないのですが、占いに頼り過ぎたり度が過ぎる人を見るととちょっと怖いなと思ったりはします。まあ、押し付けさえなければ構わんちゃ構わないのですが、私の歌を聴いてくれる人には、変な人に騙されたりしてほしくはないですね、そう思って書いた曲です。

――アルバム収録曲はほかに「バルサミコ酢」「ぬか床」「ブラックコーヒー」など。

藤川:なんか生活臭が(笑)。

――「ぬか床」は、どんなことをテーマに?

藤川:私は野菜が好きなんですけど、どんな野菜でもぬか床に一晩漬けておけば、その野菜の美味しさが引き出されるじゃないですか。人にもいろんな可能性や才能が潜んでいて、それに気づける人もいれば気づけないままの人もいて、気づけないまま人生が終わっていくのでは、ちょっと悲しいよなと思って。ぬか床のように気づけたらいいよなって。つまり、人間用のぬか床があったらいいなと(笑)。

――歌詞に〈ぬか床に問うた午前二時〉と出てきますが、実際にぬか漬けを作っているのですか?

藤川:普段は全く料理をしませんけど、ぬか床は面白そうだと思って、初心者用の一晩くらいで漬かるセットでやってみたんです。それからぬか床への興味も増したので、「何年もの」とか言いますし、今後はぬか床を育てることに挑戦してみようかと(笑)。

――「ブラックコーヒー」はどういうイメージで?

藤川:ちゃんとした言葉がないまま付き合いだした二人なのか、そもそも付き合ってすらいないのか、相手が冷めてしまったのかとか、微妙な関係性の二人の歌です。タイトルは、「バルサミコ酢」「ぬか床」と来たので、その後は「ブラックコーヒー」かなと(笑)。私はブラックコーヒーが飲めないんですけど、昔お付き合いした人はブラックコーヒーが好きで、自分も一緒に飲めるようになりたいと思って練習をしたことがあったんです。結局飲めるようにはならなかったけど、当時は背伸びをして我慢して飲んでいました。そういう背伸びとか、それだけ相手を思っていることの象徴的なものがブラックコーヒーかなと。

――なるほど。あと、最後の「自律神経」という曲も面白いですね。

藤川:もう自律神経が乱れて(笑)。この曲は、まさしく私という感じの歌です。普段は基本ネガティブですけど、自律神経が乱れるとさらにネガティブになるし情緒がジェットコースターで、頭痛もしてくるし眠れないし。自律神経とか副交感神経とか、自分ではコントロールできないものが整っている人はすごいなと思って。眠れない夜に、いっそのこと自分の自律神経が乱れていることを歌にしてしまおうと思って作りました(笑)。

■歌を歌うと、自律神経が整うんです

――アルバムタイトルの『内の臓が愚痴をこぼすもので』は、「ぬか床」の歌詞の一節ですよね。

藤川:はい。タイトルやジャケット写真を見ただけで、どんな曲が収録されているのか興味が沸くじゃないですか。タイトルに惹かれて聴き始めて、お気に入りの曲を見つけてもらえたらいいなといつも思っていて。今回もインパクト重視で付けさせていただきました。

――藤川さんの内臓は愚痴をこぼすんですか?

藤川:こぼしまくりですよ(笑)。さっきの「自律神経」と通じた話ですけど、自分の嫌いなところでもあるし、でもポジティブな意味もあるんです。逆説的に、ため込まず自分を解放してほしいなという気持ちを込めています。

――ライブの前に、緊張でお腹が痛くなったりすることは?

藤川:ライブはむしろ体調が良くなりますね。歌を歌うと、自律神経が整うんです(笑)。

――現在はツアーを開催中ということで。

藤川:ツアーは3年前にコロナ禍で中止になってできなかったので、約3年ぶりのツアーです。でも私の曲はタイアップの関係でバラードが多いイメージがあるので、今回のアルバムでは、ツアーに向けてライブで盛り上がる曲を増やそうと意識しました。1曲目から2曲目のロックな展開とか、9曲目から10曲目の流れとか、掛け合いをする曲もあります。みんな次の日は筋肉痛で動けないくらい、“内の蔵が喜ぶくらい”いいライブにしたいと思っています。皆さんも体調を整えに、ぜひライブに足を運んでください!


ライター:榑林史章、編集:アニメージュプラス

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