• 『まんが 赤塚不二夫伝 -ギャグほどすてきな商売はない!!-』を楽しく読む方法!
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2024.03.14

『まんが 赤塚不二夫伝 -ギャグほどすてきな商売はない!!-』を楽しく読む方法!

(C)Fujio Akatsuka

赤塚不二夫という人はなかなかに難解な人なんじゃないだろうか?
トキワ荘関連の作品や本を読み漁り、関係者のインタビューや記事をチェックし、時には実際に関わった人に話を聞いたりしてきたが、トキワ荘作家の中で最も素の顔が見えにくいのは赤塚不二夫なんじゃないかという風に思ってきた。

マンガ家の中でも、赤塚不二夫は特にパブリックイメージがしっかり定着している作家だろう。ギャグマンガの王様で、芸能関係に交友が深く、お酒と宴会が大好きで、破天荒なエピソードも少なくない。小さな事にはこだわらず、面白さが最優先、トラブルに意を介さず、悩みには「これでいいのだ」、おそらく世間の人が思う赤塚不二夫はこんな感じだと思う。

赤塚自身もそういうイメージに自覚的だっただろうし、自覚した上で、周囲の求める赤塚不二夫を演じていた部分がかなりあったような気がしてならない。というのは、自分を語ったエッセイやインタビューなどを読むにつけ、サービス精神の塊であったと同時に、繊細で人を凄く気遣う人だったんじゃないかと思わずにはいられない一面が見え隠れしているからだ。

赤塚不二夫の “自伝的まんが” と “記念碑的まんが” を1冊にまとめたオリジナル編集の文庫『まんが 赤塚不二夫伝 -ギャグほどすてきな商売はない!!-』(光文社/知恵の森文庫)が2023年末に発行された。
様々なテーマで描かれた歴代の自伝的作品と、プロ以前の中学時代の処女作や投稿作品、初少年誌連載作品など赤塚の人生を語る上で欠かすことのできない記念碑的な作品を網羅した読み応えのある一冊になっている。巻末にフジオプロの松木健也によって書かれた、各作品についての貴重な写真や資料と合わせた詳細な解説が収録されており、この本の価値を高める一役を買っている。
▲収録作品一覧

この文庫を読むと、赤塚不二夫の色んな角度の素顔がうかがい知ることが出来る。ガキ大将にうまく取り入る子供時代や、友人に最後の大事な食べ物を食べ尽くされてしまっても文句ひとつ言えない貧乏時代、仲間との楽しい日々とはいえ自分だけ先が見えず弱気になったり、あまり人気作家になって以降に見せた表情は出てこない。
特に面白いのは、盟友石ノ森が登場する作品での描き方だ。石ノ森に対する、単純ではない感情が見え隠れしている。『ギャグほどすてきな商売はない!!』のトキワ荘で石ノ森に作画のアシストだけでなく身の回りの世話までなし崩し的に押し付けられていく描写や、『ぼくの音楽青春』ですぐ身近な女子に惚れては相手にされない石ノ森の様子を何度も描くあたりに、赤塚の本音が少し漏れてはいないだろうか? 当時の正直な気持ちをそっと混ぜこむ、そこに赤塚の作家性に繋がる繊細さを感じてしまう。

赤塚と石ノ森が固い友情で結ばれていたのは間違いないし、文庫の最後に収録された石ノ森が逝去した時に書かれたエッセイにある「実の兄弟を失ったよりも悲しい」という言葉も疑いようがないが、年齢も育った環境も作家としての立ち位置も違った若い頃の二人の間の関係は、単なる友情という言葉で簡単に片づけられるものではなかったのかもしれない。

そんな二人の関係にフォーカスした『ふたりの絆 石ノ森章太郎と赤塚不二夫』展も豊島区立トキワ荘マンガミュージアムで3月24日まで開催されている。お互いが語ったお互いのエピソードを中心に、二人がトキワ荘でどんな生活をしていたか、どう作家としてキャリアを積み上げていったか、代表作の原画なども含めて紹介されている。『まんが 赤塚不二夫伝 -ギャグほどすてきな商売はない!!-』を片手にぜひ足を運んでみてもらいたい。逆に石ノ森章太郎は赤塚をどう思っていたのか、そんな事を想像しながら観ても楽しいに違いない。

>>>『まんが 赤塚不二夫伝 -ギャグほどすてきな商売はない!!-』書影やサンプルページを見る(写真5点)

(C)Fujio Akatsuka

アニメージュプラス編集部

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