• 【魔法使いの嫁】ヤマザキコレが担当編集と明かす原作コミック誕生秘話
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2024.03.29

【魔法使いの嫁】ヤマザキコレが担当編集と明かす原作コミック誕生秘話

『魔法使いの嫁』20巻 カバー  (C)Kore Yamazaki / BUSHIROAD WORKS


■今、改めて振り返る原作連載の裏話

──連載にするにあたって、ヤマザキ先生と新福さんの間ではどんなやり取りをされたのでしょうか。

新福 ヤマザキさんに「どういう設定を考えているんですか?」と聞いたら「こういうのを考えています!」と、膨大な量の資料が送られてきて(笑)。それが最初の驚きでした。それから、絵については「ファンタジーを描くに値する原稿の仕上がりにしたい」とおっしゃっていました。「僕も頑張ってほしいと思っているから、どう頑張るか考えましょう」という話をした記憶があります。まずは背景の手数を増やしましょうということで、最初の数話は出力した原稿に赤ペンで「ここにこういう描写を増やしてください」と書いてヤマザキさんに原稿を戻していました。

ヤマザキ そうでしたね。「草原がのっぺりして見えるから、もっと手数を増やしましょう」と言われたりしました。あと、「髪の毛ももっと線の数を増やそう」って言われて、髪の毛だけ別の紙に描き直して一度完成した原稿にはめ直したんですよ。デジタルとアナログを併用していたからできた荒業ですね(笑)。

新福 当時の原稿、まだ残っていますよ。
▲『魔法使いの嫁』第1話の初期稿(上)と決定稿

ヤマザキ うわ~、今見返すとやっぱり描き込みが少ないですね! プロでも10年経つと絵柄、画風がすごく変わるので、今、漫画を描いている皆さんもそこに不安があるなら勇気を持ってください(笑)。

新福 ヤマザキさんも二回目の連載で、僕にとっては初めての連載だったので、あのときはお互いに手探りしながら、いかに打ち切りを回避するかに必死でしたよね。そのぶんいろんな失敗もあって。第1話の冒頭のモノクロページも、全部の原稿ができあがったあとで1ページ足りないことが発覚して、ヤマザキさんに2日で捻り出してもらいましたもんね(笑)。

ヤマザキ そうそう(笑)。すごく申し訳なさそうに言われたのを覚えています。でも、あの1ページが入ったことで世界観がばっちりハマったと思っています。

──「打ち切りは回避できそうだ」と、手応えを感じたのはいつ頃でしたか?

ヤマザキ 第1巻が発売されて1週間後くらいに続々と重版の話が入ってきて。「これは回避できるのでは……?」と思いました。これだけ手を掛けてもらって打ち切りは嫌だなと思っていたので、ホッとしました。

新福 実は編集部としては、第1巻の発売前から「この冊数じゃ足りないよ! 早く増刷してほしい」という電話が書店さんから来ていたんです。たくさん作らなかったことを怒られたのはその時が初めてでした。ただやっぱり、実際に売れるかどうかは蓋を開けてみないとわからないし、ぬか喜びになるとつらいので、その時点ではヤマザキさんには伝えていなかったんです。

ヤマザキ 確かに、それでぬか喜びになったらつらすぎる!(笑)

新福 でも、発売当日以降もドンドン追加注文の連絡が来るようになり、それでようやく「打ち切りは回避できそうだ」と安心し、ヤマザキさんにその旨をお伝えできました。その後も続々と重版がかかるから「これなら10巻ぐらいまでは続けられるだろう」という確信が生まれ、それからシリーズとして構成を組み立てていくことになったんです。

ヤマザキ それでカルタフィルスとの物語を作っていったんですよね。その後の「学院篇」は、SEASON1のアニメ化の後に新福さんが「『学院篇』もアニメをやるつもりでいますからね」と言っていたので、アニメがある前提で構成を練っていきました。

新福 とはいえ、いろいろと右往左往もしましたよね(笑)。

ヤマザキ そうでしたね、キャラクターが多い分、みんながしゃべり出すと収拾が付かなくなってしまって……(笑)。そういった反省点もありましたけど、第1巻~第9巻とは別のことをやれたという意味で「学院篇」を描けて本当によかったなと思います。こんなにも漫画が世に溢れている時代に、新たなことにチャレンジさせてもらえたのは本当にありがたいと思っています。

──チセが学院に通う布石は早い段階で用意されていたので、最初から「学院篇」の話まで構想ができていたのかと思っていました。

ヤマザキ あ、学院の構想自体は早くからあったんですよ。元々は学院から物語を始めようかとも考えていたんですが、あまりうまくハマらず一度はお蔵入りになったという経緯がありました。
一つ裏話をすると、学院は大英図書館の地下にあるという設定なのですが、実は当初、間違えて大英博物館をモデルにしてしまっていたんです。私が大英図書館だと思っていた建物は大英博物館のリーディングルームだったという……(苦笑)。先入観を持ってはダメなんだなと反省しました。それ以来、植生や建材などについてもしっかりと一次資料を当たって調べるようになりました。日本では当たり前だと思っていたものが、イングランドでは全然違ったりすることもありますからね。

※「アニメ「魔法使いの嫁」公式コンプリートブック」(MdN刊)より一部抜粋

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(C)2022 ヤマザキコレ/マッグガーデン・魔法使いの嫁製作委員会
(C)2022 ヤマザキコレ/マッグガーデン・魔王使いの嫁OAD 製作委員会
(C)2017 ヤマザキコレ/マッグガーデン・魔法使いの嫁製作委員会

アニメージュプラス編集部

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