今年初頭に劇場公開されて話題を集めた、TVシリーズ特別編集版『名探偵コナン vs. 怪盗キッド』のテーマソングとして好評を博したWANDSの「大胆」が、4月10日にCDシングルとしてリリース。怪盗キッドをイメージして制作したという同曲は、ミステリアスでスリリングなイントロから始まるアツい楽曲で、タイトルの「大胆」も怪盗キッドの大胆不敵さが表現された。楽曲制作について、WANDSのボーカルで作詞も担当した上原大史、作曲・編曲を手がけたギターの柴崎浩に話を聞いた。
(前編/全2回)■イントロで「つかみ」はOK――『名探偵コナン』のTVシリーズ特別編集版『名探偵コナン vs. 怪盗キッド』テーマソングとして好評の「大胆」は、怪盗キッドをテーマに作られたとか。柴崎:そうです。本当にイメージぴったりの曲ができたら、「今後も怪盗キッドが登場する時に毎回使ってもいいくらいの気持ちだ」とおっしゃっていただいて若干のプレッシャーを感じつつ(笑)、コナンやキッドのファン、制作サイド、WANDSのファン、みんなにいい感じで、スッと入っていける曲が書けたらいいなと思って制作に臨みました。
――ストリングスから始まってギターが入ってと、何段階かで盛り上がるイントロが最高です。キッドがヘリコプターで現れてみたいな。柴崎:いつもキッドは格好良く登場するので、颯爽と現れるような雰囲気をイメージしました。アニメ制作サイドからは「イントロが大事です」という言葉が明確にあったわけではありませんが、そういう雰囲気を感じたので、イントロは印象的に作りました。
上原:最初に聴いた時はもっとシンプルで、ストリングスからのフェイドインみたいな感じで、その時点ですでに格好良かったんですけど、フルができて今のイントロが付いたらよりキャッチーになっていて。いい意味でのアニソン感と言うか、いわゆる「つかみ」ができて、すごくいいなと思いましたね。
――Aメロはミステリアス、Bメロは雄大、そしてサビは疾走感みたいな。アニソンの原則みたいなものが詰め込まれている感じだと思いました。柴崎:セクションごとにコントラストが付けられたらいいなと思っていて、自分の中でも非常に上手くできた感がありますね。ただキッドらしさやコナンらしさは考えましたけど、「アニソンを書いてやろう」という意識はありませんでした。
上原:キッド登場みたいなイントロの後の展開がとてもスタイリッシュで、サビに向けてドラマチックに広がっていく。そこは「さすが柴崎さんだな!」って思いました。
――柴崎さんのデモを聴きながら、歌詞はどんな風に書こうかと思いを巡らせていたのですか?上原:歌詞に関して言うと、アニメ側からの要望として「直接的な表現はやめてほしい」ということでした。昨年『名探偵コナン』オープニングテーマとして制作した「RAISE INSIGHT」も、コナンに出てくるワードを使っていなかったので、今回もそういう感じで、彷彿とさせるくらいのイメージでお願いしますと。『名探偵コナンVS怪盗キッド』の対比感は残しつつ、含みを持たせるバランス感は難しかったです。
――〈宝石〉と出てくるのはキッドっぽいですね上原:そうですね。キッドってキザでクールだし、攫ってほしいくらい格好良くて、できることなら自分が宝石になって奪いに来てほしい。僕にはそういう趣味がありませんけど(笑)、そういったキッドファンの願望も重ねて書いてみました。
■キャッチーさとダサさは隣り合わせ――作詞は大変でしたか?上原:作詞にあたっては、印象に残ったところをメモしながら『名探偵コナン』のキッドが出ている回を観たんですけど、結局そのメモは使いませんでした。一行詩みたいなものも何百個くらい書いたんですけど、結局それもほとんど自分の中でボツにして。自分の中に残ったイメージだけを頼りに、ゼロから書いていった感じです。
――「大胆」というタイトルですが、それこそ大胆ですよね。上原:これはいつも話すことなんですけど、キャッチーさとダサさは隣り合わせだと思っていて、一歩間違えるとダサくなったり、ありきたりのものになってしまうんです。でもWANDSの格好いいイメージ、格好いい曲と格好いいMVがあった上で、今回の「大胆」というタイトルが引っかかりとなって、キャッチーさにつながるんじゃないかと。これが世に出た時のことも想像した上で、アリだなと思って付けました。あと、それとサビ頭の言葉をタイトルにするというのも常套手段です。そうすると覚えてもらいやすいし。
柴崎:歌詞を読んだ時、サビの歌詞は音的にも格好いいと思いました。一個の音符に何文字を当てはめるかは、作詞家に委ねられていて、サビの〈いつだって〉という歌詞の〈いつ〉は2文字だけど音符としては1個なんです。
上原:そうそう。それこそ〈大胆〉は4文字だし、〈大胆に〉を〈きみに〉と歌うこともできるんだけど、それだと印象が全く違う別物になってしまうんです。
柴崎:そこは上原のセンスで、「さすがだな」って思いました。
上原:あとこの歌詞は、二世という視点もあって。キッドは天才の父親がいてっていう。この戦いは三世、四世にも続いていくかもしれない、というのは自分の妄想ですけど(笑)。戦いが受け継がれていくことも、勝手に想像しながら書いたので、聴いてくれた皆さんもいろいろ想像してくれたらうれしいです。
――WANDSも第5期ということで、受け継がれている。上原:そうそう。偶然にもそういうところがあって、書きながら思いました。
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