• 神田伯山と黒沢ともよがリスペクトを交わした『クラユカバ』唯一無二の〈声〉表現
  • 神田伯山と黒沢ともよがリスペクトを交わした『クラユカバ』唯一無二の〈声〉表現
2024.05.09

神田伯山と黒沢ともよがリスペクトを交わした『クラユカバ』唯一無二の〈声〉表現

(C)塚原重義/クラガリ映畫教會

ノスタルジックでミステリアスなSF/ファンタジー世界を独特な感性で描き出すアニメーション作家・塚原重義が、満を持して放つ長編アニメーション作品『クラユカバ』と『クラメルカガリ』。同じ世界観をベースに、それぞれ異なるテイストで楽しませてくれる2作品が4月12日(金)より同時に公開開始となった。
そのうちの1本『クラユカバ』は、危険な地下世界“クラガリ”を舞台に謎めいた集団失踪事件の謎を追う探偵の姿を描くミステリアスな物語。主人公の探偵・荘太郎の声を人気講談師の神田伯山が担当し、荘太郎と共に謎を追う人物・タンネを演じるのは幅広い表現力に定評ある若手声優の黒沢ともよ。独特の世界観を作り上げる〈声〉の魅力にも注目が集まっている。
本作が二度目の共演となった伯山と黒沢の二人が、本作の奥深い魅力とそれぞれの〈声〉の表現について語った貴重なインタビューをお届けしよう。

◆行っちゃいけない世界に惹かれる心◆

――お二人はTVシリーズ『ひそねとまそたん』(2018)以来の2度目の共演ですが、まずは本作に出演なさったお気持ちからお聞かせください。

伯山 僕は本当に、プロの声優さんに対して凄く敬意があるので、申し訳ないって気持ちです。よく声優さんたちの中にタレントが入ってくることあるじゃないですか……僕、お客の立場として大っ嫌いで、本当に(笑)。しかも黒沢さんはプロ中のプロですから……逆に言えば、そういう方がいらっしゃるからこそ今回、荘太郎をやらせていただきました。助けていただけるというか、こんなにも頼もしくありがたいものなのかと、本当に拝むような思いでした。

黒沢 そんな……私のほうこそ伯山先生とご一緒させていただけて、拝むような思いです。アニメーションっていろいろな人の力で作られていますが、今回の『クラユカバ』は特に「音」「言葉」の情報がとても多い作品だと私は感じています。「言葉」を生業にされている方がお二人(伯山と活動弁士の坂本頼光)いらっしゃったので、情報量が二倍、二乗、という感覚。台詞も一つひとつが長めで、会話劇というより書き言葉をやり取りするというか、〈語り〉の感覚があった気がします。そこがこの作品にしかないテイストにつながっていて感動的でした。

――作品の世界観や物語にはどんな印象を受けましたか。

伯山 僕は池袋に住んでいたんですけれど、池袋って少し治安が悪かった時期があって、「あそこは行っちゃいけないよ」とかよく言われていたんですよ。ドラクエ狩りとか、バッシュ狩りとか、オヤジ狩りとか、とにかくやたらと狩られていた時期(笑)。

黒沢 (笑)。

伯山 でも子どもって、そういうのにどこかで惹かれるんです。獣道と楽な道があると獣道のほうに行っちゃうとか、童話とかでも子狐がわざわざ危ないほうに行っちゃうとか、あるじゃないですか。好奇心旺盛だから「行っちゃいけない世界」ってどういう世界なんだろうって感じる。僕は臆病な子だったので実際には行けなかったですけれど、子どものほうがそういうドキドキとか不思議とか、好きだったりするんですよね。
この映画を観ると、そんな童心に戻るような、行っちゃいけない世界にスッと誘われるような気持ちになるんです。そういう意味では、親子で観に来ていただくのにも向いている物語なんじゃないかなって思いました。

黒沢 私たちは2年前に「序章」として冒頭の15分を収録させていただいていて、今回やっと全編に触れることになったのですが、序章の段階ではもっとドラマチックに展開するのかしらと思っていたんです。でも実際に全編に触れてみると、「死」が身近になるクラガリで生きる人たちの“日常”を描いた作品なんだなとわかって、それが面白いと思いました。
秘密が少し明らかになる気もするけれど、実際のところ何も明らかにならず、淡々と物語が展開するのが魅力的です。


アニメージュプラス編集部

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