• 言葉にすることの大切さ、しないことの優しさ【好きあま】監督が語る
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2024.05.25

言葉にすることの大切さ、しないことの優しさ【好きあま】監督が語る

映画『好きでも嫌いなあまのじゃく』 (C)コロリド・ツインエンジン


◆観た人に元気になってほしい作品◆

――本作を紹介する際にあえて「ジャンル」で括るとすれば、監督としてはどのように表現なさいますか。

柴山 ポスターには「青春ファンタジー」と書いてあったんですが、青春ファンタジーなのかな……青春ファンタジー・ロードムービーかな(笑)。最初の企画書には「異種族恋愛譚」というワードもありましたが、途中から「家族もの」の要素が強くなり、その中に少し漂う恋愛感――というバランスになっている気がします。

――夏を舞台にしたボーイ・ミーツ・ガール、しかもロードムービー。ある種、青春映画の王道とも言えますよね。

柴山 はい、王道と言えば王道ですね(笑)。

――逆に、王道中の王道に正面から取り組むのにはかなりの覚悟も必要だったのでは?

柴山 そうですね、描くべきテーマやメッセージは繊細ですが、だからといって繊細さだけを意識して作るべきではない、という思いはありました。むしろエンタテインメントとしてど真ん中の作り方をしないと、繊細なテーマも伝わらないのではないか、と。一方で「鬼」という要素にも昔話的な意味だけではない現代的な解釈を取り入れていますし、後半に登場する「隠の郷」という鬼の世界などにはオリジナリティもかなり詰め込んでいます。ですから、堂々と勝負できる作品になっているという手応えは感じています。

――今作で特に注目してほしい、楽しんでほしいポイントがあれば教えてください。

柴山 たくさんあります(笑)。コロリド作品としてはいつものように絵の美しさはもちろん大事にしています。ひとつは、リアリティのある世界からファンタジー世界へ観客に自然に移行してもらえるように、背景美術には力を入れました。まず、山形県の米沢市でロケハンをしたのですが、その魅力的な風景をしっかり伝えられるように。そして鬼の世界である「隠の郷」も、雪が降り続いている世界ですがどんよりとした空気にならないように、それはそれで美しく魅力のある場所として描くことにこだわりました。全編通して、魅力的な雰囲気になっていると思います。
また、音楽も素晴らしいです。今作はわかりやすい表現をあえて避けている部分もあるのですが、音楽の窪田ミナさんはそこを本当に深く理解していただいて、劇伴で映像と観客との橋渡しをしていただいています。主題歌・挿入歌のずっと真夜中でいいのに。(略:ずとまよ)さんにも、本編にしっかり寄り添いながら、ずとまよさんらしさもある素敵な曲を作っていただきました。
映画全体としては柊とツムギのロードムービーとして、二人の関係に注目していただければ楽しめると思います。いろいろな場所を回り、いろいろな人に出会い、映画的な見どころも多いはずです。そして何より、今、生きづらさを感じている人に「もっと正直な気持ちを伝えても大丈夫なんだ」と感じていただき、少し元気になって帰ってもらいたいなと思っている作品です。Netflix配信なので、世界中の人たちの反響が楽しみです。Netflixでは何度でも繰り返し観ていただいて、映画館では大きなスクリーンと素敵な音響で、物語に没入して特別な体験をしていただけたら嬉しいです。


アニメージュプラス編集部

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