• ねこ姉さん誕生秘話! 『ゲゲゲの鬼太郎』プロデューサーインタビュー【前編】
  • ねこ姉さん誕生秘話! 『ゲゲゲの鬼太郎』プロデューサーインタビュー【前編】
2020.07.14

ねこ姉さん誕生秘話! 『ゲゲゲの鬼太郎』プロデューサーインタビュー【前編】

(C)水木プロ・フジテレビ・東映アニメーション



“ねこ姉さん”誕生の裏側


ーー今言われた「同じこと」を繰り返さないためのチャレンジが、今回の受賞でも「新たなサブキャラクターの登場や、主人公たちの設定の見直し」という点で評価されたようですね。その典型が、ねこ娘の頭身を高くしたことだと思うのですが、この発案者は狩野さんだったと、以前お聞きしました。

狩野 まあ、たまたまですよね(笑)。結果、受け入れられたから良かったけど、受け入れられてなかったら「何してくれてるんだ!」って言われているはずなんで(笑)。

永富 そうですね、間違いなく(笑)。

ーー確信があるわけではなかったんですね。

狩野 自分が見たかっただけですけどね。ねこ娘って、物語の中での立ち位置が難しいんです。

永富 それで言うと、やはり5期の知見というのが、僕のなかにありました。つまり、「ねこ娘を触ると、ものすごく反響が大きい」ということを知ったんです。実は4期から5期にかけてのねこ娘の変化って、5期から6期にかけてと同じか、それ以上に大きい。5期のようなねこ娘は、それまでの歴代シリーズにはいなかった。アイドル化して頭も刈り上げていないし(笑)。アルバイトをして、ねずみ男の代わりに事件を引っ張って来て、時にメイドさんになり、時にバスガイドさんになり、時に水着になる。そんな可愛いねこ娘はいなかったわけです。それを当時、僕は営業の部署で傍目から見ていて教えられました。それに6期では、鬼太郎と同じ目線の人間の女の子・犬山まなを新たに設定しました。それもあって、ねこ娘には何かしらの変化を加えないといけなかったんです。目線の高さも含めて同じにしちゃうと、3期でユメコちゃんとネコ娘の立ち位置がバッティングしてしまったようなことが起こる。これも先輩たちがやった作品の知見の結果からして、6期のねこ娘はまず見た目からちょっと変えないといけない。そういうことを検討し始めて、僕らは中途半端にちょっと大きくしていたんですよ。そうしたら、狩野さんが「そんな中途半端は面白くない! やるんだったら思い切って、(タレントの)菜々緒さんみたいに」って(笑)。つまり、思いつきで「でっかくすりゃあいいんじゃない?」ではなくて、それまでの先輩たちの経験から教訓を得た結果、ねこ娘をあのように変化させたということです。
でも、それが世の中に受け入れられるかどうかは、僕は半々くらいだと思っていました。実際、6期のねこ娘を公開した後に、『鬼太郎』を愛している社内のクリエイターの先輩から「何てことしやがるんだ!」と、本気とも冗談ともつかないような絡まれ方をしました(笑)。ですから、世の中に出した時に石を投げられる可能性に対する覚悟というのはありましたね。たまたま皆さんに受け入れていただけたので良かったけれど、準備している時はやはり、かなりハラハラしながらでした。


ーー受賞理由には「50年以上にわたり6回もアニメ化されたことは、テレビ史に残るできごと」ともあります。同時に本作は、同じ東映アニメーション(旧・東映動画)で一貫して作られてきたアニメという点でも他に類を見ないシリーズです。

永富 そういう意味では、東映アニメーションで『鬼太郎』という作品に関われる喜びは大きかったです。でも『鬼太郎』は、過去に失敗をしたことのない作品でもありました。やれば必ず話題になり、一定の視聴率を確保してきたという歴史のなかで、自分が受け取ったこのタスキを落とすわけにはいかない。プレッシャーも大変なものでした。ただ、委縮して何も出来なくなるほうがもっとカッコ悪いとも思って。やるからには自分の持っているものを全部出せる『ゲゲゲの鬼太郎』にしよう、という意識はありましたね。特に『鬼太郎』は、翻案する余地があるところがとても面白い作品なんです。強烈な原作が存在しているとはいえ、漫画の1コマ1コマを1ミリも動かさずにアニメーションにしなければいけないという作品ではないので。そのなかに、どのようにオリジナリティを出すか、面白いと思っているものを埋め込むかという作業は、非常に充実感を感じました。まあそれでも、めっちゃ怖かったですけどね。やっている最中も外野からいろいろなことを言われますし。

ーーどういうことを言われましたか。

永富 最初にポスターを出した時は、「何だこれ?『鬼太郎』じゃない」って言われたし。職場で、近くには5期のプロデューサーをやった櫻田(博之)がいて、ときおり飲みに連れて行ってくれる清水(慎治)が4期のプロデューサーで、3期の監督さん(芝田浩樹)の仕事をスタジオで拝見していて……。そういう先輩たちが周りにいるんです。放送が始まってから櫻田と話したのですが、『鬼太郎』って振り子なんですよね。1、2期をセットとして考えて、まずそれが片側にある。すると、3期は逆側に行くじゃないですか。つまりヒーロー的な『鬼太郎』。で、3期がそっちに行ったから、4期は「原点回帰しよう」って今度は元に戻るんです。すると、5期はまた逆側に行って、ヒロイックな鬼太郎になる、だから6期は、やっぱりこっち(原点回帰)に来る。それって「1作前の『ゲゲゲの鬼太郎』と同じにはしないぞ」という意識の表れでもあって。「ああ、確かにそうだったな」と、少し思いますね。

>>>インタビュー後編はこちら

(C)水木プロ・フジテレビ・東映アニメーション

アニメージュプラス編集部

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