内藤 それにしても信じられないのがこの作品、ドチャクソにイレギュラーな形で出来た訳じゃないすか。
――そうそう。ジェームズ・ガンは『GOG Vol.3』監督解雇騒動を経て、電撃的なDC作品参加となって。▲ブラッドスポート(イドリス・エルバ:左)を演出中のジェームズ・ガン監督。
内藤 こんなボンクラに優しい奇跡みたいなタナボタってあるんだねえ。まさに人間万事塞翁が馬というか。いや、本当にジェームズ・ガン尊敬しますよ。映画関係者じゃなくてよかったとすら思う。もしこれを漫画でやられてたら俺、筆を折るかも知れない。「もう俺が頑張って描かなくていいじゃん。みんなこっち観てろよ
‼」って(笑)。
――いやいや、こちらはR15+指定だから内藤君のマンガみたいにはいかないってば。内藤 指定されるだけのことはやってるか~。
――うん、相当な感じだった(笑)。内藤 アヴァンからスーサイド感満点だからね。悪いことしてるから酷い死に方をしている人もいれば、悪いことをしてないのに酷い死に方している人もいるという。まあ、死は平等に訪れるっていう、ある意味良い話ですよ(笑)。
▲容赦なく危険地帯へと送り込まれる悪党ご一行。
――音楽に関してはどう?内藤 ジェームズ・ガンの音楽の使い方って、ドラマと楽曲が完全に絡み合って存在しているじゃないすか。ハリウッドの強みって、一度当たったものをシステム化するところだと思っているんだけれど、あの音楽リンクの才能がどこまで分解分析されているのかが気になる
……。
――そこは共有できないと思う。むしろ模倣することでダサくなる予感が……。内藤 そっか、それはありそう。
――ジェームズ・ガンは、絶対使用楽曲を聴きながらシナリオ書いてると思うな。内藤 うん、マイサントラ作ってね。また選ぶ曲がドンピシャじゃなくて微妙にずらしてくるところが憎い。何だあのセンス。
――既存曲をサントラにする、といえばクエンティン・タランティーノだけど、その辺りのセンスは似てると思います?内藤 個人的な印象では、ジェームズ・ガンのグルーヴは
MVっぽい作り。タランティーノはもっと劇伴扱いになっている気が。編集のドライブ感などは、マシュー・ヴォーンとかエドガー・ライトと共通するところがあると思う。あの辺り何か繋がりあるのかなあ。同時多発かなあ。いやー、しかしまた1本、生涯好きでいられる作品ができましたよ。
――絶対に好きだと思って、今回の取材企画となったわけですよ。内藤 マジありがとう! もし僕がこの映画の感想訊かれて嫌いだって答えたとしたら、その時は多分後頭部にコード刺さってて何かに操られてますわ(笑)。オフビートなやり取りと露悪的なゴア描写、そして急に出てくる隠せない優しさ
……本当に自分が好きなものしか入ってない。はみ出し者が世界を救うっていうのは『
GOG』と同じなんだけど、今回はさらにバチッとハマってしまった感ある。ジェームズ・ガン作品史上レコード更新したかも。
――では改めて、内藤君にとって『TSS』はどんな作品になりましたか。内藤 この映画を擬人化したら、めちゃめちゃ下品でバカな話しかしないんだけど、ここぞの時は優しくて義を貫いてくる本当に良い奴という感じ。そういう友達なんてみんな大好きに決まってるじゃないすか。だからみんなも観よう! 俺今、試写の直後だけど、すでにもうまたあの映画に会いに行きたいんだよ!
▲よし、また観に行くか!
内藤泰弘(ないとう・やすひろ)漫画家。代表作に『トライガン・マキシマム』『血界戦線』など。現在『ジャンプ
SQ.RISE』にて『血界戦線
Back 2 Back』を連載中。
>>>見逃し厳禁!『ザ・スーサイド・スクワッド "極"悪党、集結』場面カットを見る(写真10点)
(C) 2021 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved TM & (C) DC Comics