――本作はセカンドシーズンの物語が描かれますが、TVシリーズとはニュアンスが異なる部分も多くなっています。水島 変わっている部分は多いと思います。前作も「かなり変わっているので納得がいかない」みたいなことを言うファンの方もいましたが、僕が関わっていて、しかも僕自身が納得している脚本なので、松崎さんの作る舞台は間違いなく『ガンダム00』と言って間違いないです。
――前作で登場しなかった沙慈・クロスロードとルイス・ハレヴィが遂に登場しましたね。▲戦いの渦に巻き込まれていく沙慈・クロスロード
水島 今回、彼らはドラマの中心にいる感じになっています。描くテーマによっての取捨選択は重要で、例えば舞台にマリナ・イスマイールはまったく出てこないんですが、それは橋本祥平君演じる刹那のドラマの肝がそこではないと思っているからなんです。
――それはどういうことでしょうか。水島 TVシリーズの刹那はずっと子供のままなんですが、舞台版では世界を見ようとする意欲が強くなっている。それは祥平君が持ち込んでくれたお芝居がそう見せてくれていて、舞台という限られた尺でやる場合はそれが正解だと思ったんです。
個々のキャラクターを舞台の3時間近い尺の中でどう表現するかということにきちんと向き合った仕上がりになっています。セリフは同じでも、シチュエーションや温度感が違うのでそこも楽しんでもらえると思います。
――演じる役者さんの個性が、新しい『ガンダム00』を作り出しているんですね。水島 役者さんが板の上で演じるからには、どうしてもその人なりのキャラクターが出るわけです。そこを肯定しながら、どうバランスをとるか。そこを松崎さんはしっかりと取り組んでいます。キャストの皆さんも、最初はいろいろアドバイスすることが多かったんですが、今は前回の物語を踏まえて、尺の中でキャラクターがいかに生きるのかを考えてくれているので「自分の思う通りにやってください」と。
――水島監督から見て、今回の舞台の印象はいかがですか。水島 松崎さんがすごく苦心して、ドラマを実にテンポよく、しかもアニメの総集編みたいにならないように見せてくれているので、満足度の高いものになっています。
――アクションシーンも多くて、しかも観ていて「怪我をするんじゃないか」と心配になるほどの激しさですよね。▲数多くのライザーが舞台狭しと駆け巡り、激しいMS戦を再現。
水島 ライザーに乗りながら、そこで立ち上がって戦ったりしますからね。殺陣も手数が多く、ライザーを動かしてくれるチームとの連携も素晴らしくて、前回を越えたものになったのは間違いないです。自分たちが作ったものが、これだけクオリティの高い形で舞台化されたことは、本当にありがたいですね。
――水島監督的に、今回の舞台で注目してもらいたかったポイントはどこですか?水島 それはやはりTVシリーズどおりのストーリーではない、というところですね。変更したことで、ある意味物語を強化している部分もあります。原作だ、監修だと言っているけど、本当に新しいものを見せてもらってワクワクしている感じもあるし、まさに「いろんな『ガンダム00』があっていいんじゃないか」という表現が提示できている。いわゆる2.5次元の舞台の中でも、かなりオリジナリティが高いものになっていたと思います。
――では最後に、今後の『ガンダム00』に関して舞台以降の展開などはありますでしょうか。個人的な希望も含めてお聞かせください。水島 一応サンライズとは「何かを作りたい」という話をしています。朗読劇でやった『RE:Vision』の内容も含めて、皆さんがまだ見ていない刹那たちの物語を描きたいですね。
さらにこれまでの『ガンダム00』の世界観で新しいことが展開できないか、ということも考えています。それは僕や黒田さんがやるというよりも、『ガンダム00』というブランドを続けていきたいということです。
――「まだ見ていない刹那たちの話」というのは、劇場版の先の世界ということですか?水島 今まで地球を中心とした戦争を描いていましたけれど、宇宙戦争というよりは宇宙の中での秩序……みたいな大きな風呂敷を広げるのも面白いと思っています。ちゃんとSF設定を絡めた新しいアイデアを作らないといけないので、それを一緒に作るスタッフを探すことから始めないといけないですが、そういう他のガンダム作品ではできないやり方、『ガンダム00』だから広げられる考え方を提示してもいいかなと考えています。
最終的に『ガンダム00』は僕が作らなくてもいいんです。誰もが作品を展開できるプラットフォーム化を最初から考えていましたし、今後自分がちゃんとお膳立てして、若い世代に作品を楽しんで作ってもらえるアイデア出しをしていこうと思っています。
水島精二(みずしま・せいじ)アニメーション監督。『新世紀エヴァンゲリオン』(1995)の演出などを経て、『ジェネレイターガウル』(1998)で監督デビュー。主な作品は『シャーマンキング』(2001)、『鋼の錬金術師』(2003)、『大江戸ロケット』(2007)、『機動戦士ガンダム00』(2007)、『UN-GO』(2011)、『楽園追放 -Expelled from Paradise-』(2014)、『コンクリート・レボルティオ~超人幻想~』(2015)、『BEATLESS』(2018)、『フラ・フラダンス』(2021)など。
>>>舞台『機動戦士ガンダム00ー破壊による覚醒―』原作再現度MAXのキャストを見る(写真25点)(C)創通・サンライズ