『アリスとテレスのまぼろし工場』プレミア試写のサプライズに岡田麿里「毛穴が開いた」

『あの日見た花の名前を僕はまだ知らない。』『花咲くいろは』など数多くのヒット作を手がける脚本家であり、2018年には劇場アニメ『さよならの朝に約束の花を飾ろう』で監督デビューを果たした岡田麿里が再び監督＆脚本を手掛ける最新劇場アニメ『アリスとテレスのまぼろし工場』が９月15日に全国ロードショー。
製鉄所の爆発事故をきっかけに時が止まってしまった町で、変化を禁じられ鬱屈した日常を生きる14歳の少年・菊入正宗。ある日、正宗は謎めいた同級生・佐上睦実に製鉄所へと導かれ、その第五高炉には言葉を話せない野生の狼のような少女・五実が住んでいた。この3人の出会いをきっかけにして、世界の均衡は少しずつ崩れていって……。

９月4日には舞台挨拶付きプレミア試写会が開催され、岡田監督とミステリアスなヒロイン・佐上睦実役の上田麗奈さん、さらに製鉄所に住み着く謎の少女・五実役の久野美咲さんが登壇、作品制作やアフレコ収録の裏話などを語ってくれた。

上映前の舞台挨拶には、上田さん、久野さんに続いて松葉杖姿の岡田監督が登壇。転倒し足を痛めたとのことで「（それ以外は）とっても元気です！」と、岡田監督は笑顔を見せる。

トークセッションは「変化が禁じられた町」という設定についての話題からスタート。「変わっていくことがいいことで、変わらないことはダメなこと」と言われて育ったという岡田監督は、「時代的にも何となく閉塞感を感じる中で、変化が出来ないってこういうことなのかな。変化って、実は勝手にしているんだな」と気付き、その思いを本作に込めたと語った。

「もし変化のない町に閉じ込められたら？」という問いに、上田さんは「（自宅の）猫ちゃんとずっと一緒にいられたなら幸せだな」とポジティブな答えを返す。その猫LOVEっぷりに久野さんも「確かに！　すごく幸せなことだね」と明るく賛同。
また久野さんは、「初めて脚本を読んだ時に、この変化のない町をとても息苦しく感じてしまいましたけど、私たちも望んでる状況じゃないけれども安定して毎日を暮らすことが出来ている」と、私たちの日常生活と重ねることができる舞台設定であることを語った。
▲五実役：野美咲さん

この作品の惹句「恋する衝動が世界を壊す」にちなみ、MCから「恋する作品が作りたかったのか？」と尋ねられた岡田監督は「作りたかったですね」と即答。
「“恋” って誰でも出来るものじゃないんじゃないかな、って思うんですよね。否応なく好きになっちゃう、そんな恋のトリガーというか衝撃度って、“恋する衝動が世界を壊す”ものになるのかなと思って」と惹句を解説して「今まで愛情につながる恋愛を書いてきたんですが、恋とはご無沙汰となった日々の中でその激しさを書いてみたいと思いました」と、作品に込めた思いを明かした。

抑えられない衝動を経験したことはあるか、という問いに上田さんは「カフェインを摂りたーい、みたいな？」と、ユーモラスに返しながらも「物理的に世界を壊すってことではないけど、自分の世界が昨日と違ってしまう。カフェイン一つにしても、無いと落ち着かないとか、生きてられないってなると恐ろしい。自分の世界が壊れるって、そういう小さいことでも思ったりしたりする」と語り、そんな上田さんの言葉に久野さんも「一つの言葉で世界がガラって変わるのって日常でもあるものね」と共感した様子だった。

本作で描かれる恋の衝動について聞かれると、上田さんは「『恋っていいな』って、やっぱり思いました」と笑顔を見せ、「もどかしいなとか苦しいなとか、そういうのも観ていてすごく感じたんですけど、それがあるから……あああぁぁぁ、“世界が変わる”という言い方で難を逃れますかね（笑）」とネタバレにならないように言葉を選んでコメント。
▲佐上睦実役：上田麗奈さん

アフレコでは正宗、睦実、五実の三人の存在をリアルに感じながら芝居をしたいと思ったシーンがあったそうで、主人公・正宗役の榎木淳弥さんと上田さん、久野さん３人からの提案で、お互いが向き合う形で行なわれた。岡田監督は「アフレコが終わった時に居合わせた他のキャスト陣からため息のような声が漏れた」と現場の様子を伝え、さらに「素晴らしかった演技に負けないよう、スタッフも奮起することになった」と、3人の演技が制作現場に強い影響を与えたことを明らかにした。

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