本作を特徴づけるもうひとつのポイントは、TV第1シリーズや宮﨑駿監督『ルパン三世 カリオストロの城』で作画監督を務めた大塚康生が、監修として参加していること。
大塚によれば本作は「『旧ルパン三世』の感じでやってほしいということだったんですよ。エンターティメントに徹して “全編追っかけ” というのをやってほしい」(アニメージュ1987年7月号/以下、大塚のコメントは同号より)というプランでスタートしており、その言葉どおりに緑色のジャケットを着たルパンが登場し、全編にわたって小気味よいアクションを楽しむことができる1作としてまとめられている。
ルパンの名場面といえば、『カリオストロの城』冒頭のカーチェイスを思い浮かべる人も多いのではないだろうか。本作もまた、その原画を手掛けたアニメーター・友永和秀が本作の作画監督を務めていることもあってか、序盤から凝りに凝ったカーチェイスが展開される。
「ルパンたち銭形警部の追っかけは、今までのどの映画よりも徹底的にやってある」と大塚も太鼓判を捺す、本作のルパン一味と銭形のカーチェイスは、舞台を日本に移したこともあり、アイデアもボリュームもさらに膨らませて展開する名シーンとなっている。
もちろん、ルパンたちが乗っているのは『カリオストロの城』と同じくフィアット500。そして、チェイスの途中ですれ違う対向車がクラリスの乗っていたシトロエン2CVという嬉しいファンサービスもある。一瞬で通り過ぎてしまうので、ぜひ見逃さないでほしい。
そのほかにもシチュエーション、動き、レイアウトなどに『カリオストロの城』を想起させるポイントがあるが、大塚自身も「スタッフに『カリオストロ』をやった人が多いので、その影響を多く受けていますね」と、その傾向を当時から認めている。
シリーズの中で『カリオストロの城』にオマージュを捧げている作品は他にもいくつか存在するが、本作は大塚や友永、また美術監督の小林七郎などを筆頭とした『カリオストロの城』に関わったスタッフが「再演」してくれた、という意味でも特別な作品になっていると言えるだろう。
時を経て、『ルパン三世』の世界も様々な形でより広く、より深く楽しまれるようになっている。『風魔一族の陰謀』の本当の面白さは、今だからこそストレートに感じることができるのかもしれない。
>>>貴重な古川ルパンを楽しめる『風魔一族の陰謀』場面カットを見る(写真5点)原作:モンキー・パンチ(C)東宝・TMS