• 【BLOODY ESCAPE】「断食」で収録に臨んだ小野友樹に谷口悟朗監督も驚愕
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2024.01.07

【BLOODY ESCAPE】「断食」で収録に臨んだ小野友樹に谷口悟朗監督も驚愕

小野友樹さん演じるキサラギは、吸血鬼とヤクザに追われる改造人間 (C)2024 BLOODY ESCAPE製作委員会

TVアニメ『エスタブライフ』と共通する世界観で描かれるオリジナル劇場アニメ『BLOODY ESCAPE -地獄の逃走劇-』が1月5日(金)から劇場公開中だ。
人体実験によって改造人間となったキサラギは、分断された「東京」の制覇を目論む不死身の吸血鬼集団「不滅騎士団」に “裏切者” として追われていた。新宿クラスタに逃げ込んだキサラギは、親友クルスとその妹・ルナルゥの元へと身を寄せることになる。しかし、吸血鬼に加えて、新宿クラスタのヤクザたちも追っ手に加わったことで、事態は予想外の大抗争へと発展していく――。

破天荒な設定とアクションで一気に突き進む本作はいかなる思いを持って結実したのか、本作では原案・脚本も担当した谷口悟朗監督、主人公・キサラギ役を演じた小野友樹さんにお話をうかがった。

――本作はTVアニメ『エスタブライフ グレイトエスケープ』と共通の世界観で描かれている作品になりますが、今回新宿をメインの舞台にしたのはどういう理由から?

谷口 ぶっちゃけてお話しますと、私は最初この映画を(TVシリーズとは)まったくの別物と考えていまして、エクアたちも出さなくていいかなと思っていたんですよ。ですが、プロデューサーたちから逃がし屋たちも出して欲しいと希望がありまして。まあ、確かに既にあるものを変えていく方が作業的には効率が良いし、その分のカロリーを別のところに突っ込めるかと考え直して、だったら舞台は新宿かな、と。それ以外のクラスタだと、パンツ一丁だったりペンギンが支配していたりと癖が強くお話的にやりづらいんです(笑)。

――小野さんは、本作の新宿クラスタの世界観をご覧になられて、どんな印象を抱かれましたか。

小野 新宿はスタジオもあるのでよく通っている、割と馴染みのある場所なんですが、このクラスタは歌舞伎町あたりのエリアを拡大してさらに荒廃させたような印象がありますよね。

谷口 はい、あの辺りはバブル期の新宿のイメージです。街の汚い部分が夜のネオンの光に隠されている――その雰囲気が小野友樹さんにはよく似合う、と。

小野 なるほど!……って、え?(笑) でも今の監督の説明を聞いて、何となく自分の中で腑に落ちたところがありました。その日その日を生き抜いていく切迫感と華やかな夜の街が両立している世界――そんな新宿のイメージが本作の世界観にドンピシャだったのかな、と思っています。

――本作の登場人物は誰もが曲者という印象なのですが、その中でも小野さん演じる主人公のキサラギは強烈なキャラクターだと思います。構成要素の一つひとつの癖も強いのですが、谷口監督はこの人物をどういう思いで生み出されたのか、また小野さんはどのような印象を受けましたか。

谷口 本作の企画であるスロウカーブさんとは先に『revisions リヴィジョンズ』(2019年)で組んでいたのですが、これは元々あったストーリーや世界観に後から私が乗っかった形で進めたものだったんですね。「じゃあ次は企画の立ち上げから一緒にやりませんか?」みたいな話になって、いくつか挙げた企画の中に 自分の身体を手術しながら吸血鬼と戦う医者のキャラクターがあって、「これを持ってきたらハマるかな?」と考えたのが始まりですかね。
他の記号は実写映画的にクセが強いものを選定した、と言えばいいでしょうか。例えば「ヤクザ」って実写映画の中では大事な要素のひとつじゃないですか。クセが強くって。

――小野さんから見たキサラギ像はいかがですか。

小野 キサラギは性格上のクセはそこまでなくて、周囲の環境に翻弄されて、結果としてそうならざるを得なかったっていう印象を持っています。というのも、本編で挿入される過去のキサラギの姿がすごく素直な感じなんですよね。 確かに改造人間ですし、ヴァンパイアを殺せる血を持っているというぶっ飛びの設定を抱えてもいますけれど、心は誰よりも人間だな、と思いながら演じさせてもらいました。

――そのギャップは興味深いですよね。

小野 だからこそ今回僕にキサラギの声を託してくださったっていうのがすごく嬉しくて。数年前に『純潔のマリア』でご一緒した時に「人を殺している声でありながら、根底に愛がある声を持っている」と谷口監督が言ってくださっていたんです。本作のジャパンプレミアの舞台挨拶でも谷口監督がそのことを話してくださったので、「だからキサラギを僕に預けてくれたのか!」という答え合わせができたんですね。
良かったと思ったのは、それを収録前に聞いてしまっていたら、おそらく演技が変わっていたと思うんですよ。

谷口 いらん色気が出てきてウィスパー気味に喋ったりして「そっちじゃないよ、この野郎!」みたいなね(笑)。

小野 いや、本当に(笑)。今日この話を聞いて、僕の中での『BLOODY ESCAPE』が完成したなって思えました。ありがとうございます。

――本作は非常にバイオレンス度が高めの内容になっています。そういう要素を今回の映画で入れようと思ったのは、どういう狙いがあったのでしょうか。

谷口 それは(作品の)「特徴」としてのものですね。TVシリーズは橋本裕之監督を中心とした女の子3人組が明るくワイワイとしたイメージでまとめられていましたが、それとは違う雰囲気にしようと考えた時に、ヤクザやヴァンパイアといった血なまぐさいものを持ってこないと、私自身がTVのイメージに引っ張られる危険性があったんですよ。
ちなみにヴァンパイアは、さっき話した原型になった企画の流れから入ってきたのですが、もしどちらかの要素を否定されていたら、代わりにでかいサメを持ってきたと思います(笑)。

小野 タイトルロゴのデザインにも、そんな本作の世界観を強く感じるんですよね。 いわゆるスタイリッシュな今時のアニメみたいな感じじゃなく、昭和の任侠映画じゃないですけれど、僕はそういったニュアンスを受け取りました。
台本を読んでみて、やはり同じキャラクターは登場してもTVシリーズとは描く角度が全然違うんだなと察しましたので、そのつもりで向き合わせていただきました。

谷口 さらに補足しますとですね、ここ数年の間でキレイ過ぎるアニメ映画が増えたかな、という印象があるんです。扱っているテーマだったり、もしくは男女の恋愛の機微だったり……いや、別にそれがダメというつもりはないんですが、それはややもすると特定の見せ方や洗練された作品ばかりになってしまう危険性があるのではないかと感じています。
私が元々好きなアニメーションが持っている多様性……と言えばいいのかな、もっとこう下世話で乱暴な部分を観客に思い出してもらう必要を感じたし、自分も思い出す必要があった。それを1回ぶつけてみたかった、という気分はありますかね。

(C)2024 BLOODY ESCAPE製作委員会

アニメージュプラス編集部

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