• アニメ評論家・藤津亮太が注目した「2023年TVアニメ」ならではの多彩な魅力
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2024.01.13

アニメ評論家・藤津亮太が注目した「2023年TVアニメ」ならではの多彩な魅力

「金曜ロードショー」枠で4エピソード一挙放送スタートし、話題を呼んだ『葬送のフリーレン』 (C)山田鐘人・アベツカサ/小学館/「葬送のフリーレン」製作委員会

新春企画としてアニメ評論家・藤津亮太とアニメージュプラス編集長が2023年~2024年のアニメシーンを語り合う対談企画を、全2回にわたって掲載。後編のテーマは2023年のTVアニメとアニメシーン全体の総括、そして2024年に向けての展望を語る。
▲アニメ評論家・藤津亮太さん

>>>藤津さん×アニメージュプラス編集長の対談:前編はこちら!

◆藤津さんが印象に残った2023年のTVアニメ◆

――2023年のTVシリーズは『鬼滅の刃 刀鍛冶の里編』(4月~6月/外崎春雄監督)や『呪術廻戦』第2期(7月~12月/御所園翔太監督)、『SPY×FAMILY』Season 2(10月~12月/古橋一浩、原田孝宏監督)といった継続作は引き続き好調。それ以外だと、上半期では『機動戦士ガンダム 水星の魔女(Season 2)』(4月~7月/小林寛監督)や『推しの子』(4月~6月/平牧大輔監督)が大きな話題を呼びましたね。

藤津 『水星の魔女』はSeason 1に続いて大変に面白かったですし、「若い世代にガンダムを訴求する」といった「結果」を求められ、そこにしっかり応えたというのが素晴らしかったです。
『推しの子』は本当に丁寧に作られていたという印象ですし、最初の第1話が90分+劇場先行公開という構成も有効だったなと思いました。何より、世間を巻き込むヒットになったというのが大きいですね。もともと原作漫画も人気でしたが、アニメ化されて大きく跳ねて。年末の「ネット流行語100」でも関連ワードがランキング上位を席巻しましたし、YOASOBIの楽曲「アイドル」も世界中でヒットした。そういう意味では、2023年の一番大きなムーブメントといえば『推しの子』だったという気がします。その仕上げが紅白歌合戦のYOASOBIのステージだったかなと。

――藤津さんご自身が印象深かったTVアニメというと?

藤津 上半期で僕が楽しんで観ていたのは、たとえば『REVENGER』(1月~3月/藤森雅也監督)ですね。
▲『REVENGER』(C)REVENGER製作委員会

――虚淵玄さんがストーリー原案・シリーズ構成を担当したことも話題になったオリジナル作品。

藤津 いわゆる「必殺仕事人」系の作品です。実は最近『妖刀伝』(1987年のOVA)を観直したりもしているのですが、こういったタイプの作品がもう少しアニメにあっていい気がするんです。この作品は、架空の江戸時代が舞台で、リアルと言うには大嘘ですが、ある種の生々しさもあって、いわゆる「ナーロッパ」を舞台にするのもいいんですが、こちらのほうを掘っていくとまた新しい世界が広がるんじゃなういかなと。映像的にも藤森監督+亜細亜堂制作なので非常に確かな出来でしたし、最後の主人公の扱いも、70年代的な暗さがあって良かったです。

『TRIGUN STAMPEDE』(1月~3月/武藤健司監督)も素晴らしかったです。ORANGE制作の3DCGアニメは、絵柄がとても柔らかいんですよ。本当に面白い映像になっていて、しかもストーリーは「リイマジネーション」なので、原作からのひねり方も含めてとても良かった。
ORENGEの社長でCGチーフディレクターを務める井野元英二さんにお話を聞いたら「もう、手描きに擬態するのをやめようと思った」とおっしゃっていて、セルルックな仕上がりだけどCGでしかない動きをどんどん入れていく方向になったそうです。

――こちらは完結編が製作されるという情報も出ていたので楽しみですね。
▲『TRIGUN STAMPEDE(C)2023 内藤泰弘・少年画報社/「TRIGUN STAMPEDE」製作委員会

藤津 あと、観て驚いたのは『アイドルマスター シンデレラガールズ U149』(4月~6月/岡本学監督)。「シンデレラ」だからなのかわかりませんが、アイドルものとしては比較的お話が重たいんですよ。
やる気のない上司がいてプロデュースを任されるのは新人プロデューサー、「U149」というユニット名をメンバー気に入っていないくだりを描いたり、子供ながら芸能界で働くキャラが親に対して抱く感情だったり、さまざまなデティールを積み上げて、大人の都合に振り回される子たちの話を丁寧に描いているのがとてもユニークです。第1話のプロデューサーと橘ありすの距離が縮まるシーンなども印象的で、『無職転生』第1期が好評だった岡本監督ですが、やはりこういうかっちりした演出で見せたい人なんだな、と改めて思いました。
『もういっぽん!』(1月~3月/萩原健監督)も印象的で、第1話は何度観ても良く出来ていて面白いです。

アニメージュプラス編集部

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