◆人気マンガ原作への様々なアプローチ◆――下半期に話題となったのは、現在も放送中の『薬屋のひとりごと』(10月~現在放送中/長沼範裕監督)や『葬送のフリーレン』(10月~現在放送中/斎藤圭一郎監督)です。藤津 『薬屋』と『フリーレン』はどちらも力の入れ所のメリハリがしっかりしていて、コントロールされているのが特徴ですね。同じように、漫画原作を丁寧にアニメ化したということでは『スキップとローファー』(4月~6月/出合小都美監督)も印象に残りました。
逆に、アニメとしての映像表現が強いなと思ったのは『天国大魔境』(4月~6月/森大貴監督)。シンエイ動画の『僕の心のヤバイやつ』(1月~3月、第2期:現在放送中/赤城博昭監督)も良かったです。
▲『僕の心のヤバいやつ』(C)桜井のりお(秋田書店)/僕ヤバ製作委員会
下半期の作品では『オーバーテイク!』(10月~12月/あおきえい監督)が印象に残りました。若手レーサーの登竜門となる自動車レース「フォーミュラ4」を題材にしたオリジナル作品です。
一般的にはあまり馴染みのない題材な上に、視点人物のひとりが大人のフォトグラファーに設定されていて、そこに震災が絡む。非常に意欲作だなと思いました。キャラクターの心情をお芝居でどう見せるか、演出にも心が砕かれていたし。静岡の御殿場、小山町あたりの風景もしっかり描かれて、凄くいいなと思いましたね。
――アニメ『進撃の巨人』の10年に渡るシリーズ完結(『進撃の巨人 The Final Season 完結編(後編)』11月4日/林祐一郎監督)も、下半期の大きなトピックスでした。藤津 『進撃の巨人は、あの原作の物語を最後までやりきったというも凄いですが、さらに注目すべきは海外で大きなポピュラリティを得たことだと思います。今年公開された『ミュータント・タートルズ:ミュータント・パニック!』(9月22日 日本公開)では、『進撃の巨人』が物語に深く関わっているんですよ。タートルズが夜の高校に案内されるシーンで、ロッカーにK-POPのBTSなどと並んで「ATTACK ON TITAN」とラクガキされていて。それが、クライマックスの展開に大きく関わるんです。
――「みんなが知っている」作品であり、海外の観客にとっても「共通の情報」として認識されているわけですね。藤津 完結の大きな出来事だったけれど、奇しくもそれに近いタイミングで海外での認知度の高さも証明された。これも大きかったと思いますね。