本作でキャラクターデザインを担当したのはロシア出身のイリヤ・クブシノブ。母国で絵を学びながら日本の漫画・アニメに大きな影響を受けた多国籍なタッチが特徴の、気鋭のイラストレーターだ。イリヤがデザインした草薙素子は、これまでとも異なる魅力を放っており、今作のビジュアルの強烈なアイコンとなっている。
▲かわいくなった草薙素子? だが作中では相変わらずの、貫禄の佇まいだーーキャラクターデザインにイリヤさんを起用した理由は?
神山 3Dのキャラクターをデザインするのは、2Dの絵だけを描いている人だと難しいんです。その点、イリヤくんの絵は立体的なリアルさと、かわいい、気持ちいい、萌えといったリビドーと、その両方を持っているというところですね。それに本人も『攻殻』は大好きだったらしいのでね、ありがたいことに。
荒牧 僕らが仕事を頼む前から、画集に「明らかに素子をイメージしているな」と感じるようなイラストもありましたからね。そういうものも見て、「これだったらいけるんじゃないか」とお願いしました。絵に若々しさ、新鮮さも感じたし。一番端的にいうと、何よりキャラクターとしての魅力。彼が描く素子なら魅力的になるんじゃないかな、という手応えがありましたよね。
ーー今回の素子はこれまでより少し若いというか、「かわいい」という印象もあります。
神山 そこはイリヤくんのデザインもさることながら、実は3DCGならではの事情もあるんですよ。というのも、アニメ的なキャラクターの体型だと、リアルな3Dの空間にうまく収まらないんです。『009 RE:CYBORG』ときにもその問題があったんですが……あの作品のキャラクターは11〜12頭身あるんですね。
荒牧 スーパーモデル以上の体型だ(笑)。
神山 膝下がすごく長いから、見た目は格好いい。だけど3Dの空間の中におくと、階段を1段ずつ降りられなかったりするんです。ひっかかってしまう。それを上手くごまかす演出方法もあるんですけど、『攻殻』の場合はそういうところがごまかせないんです。『攻殻』ってスタイリッシュに見えて実は、ある種、泥臭いお芝居をしっかり見せないと成立しない世界なんです。だから今回、頭身をわりと寸詰まらせているんです。イリヤくんが描いた絵よりも、さらにね。
荒牧 頭も若干、大きめですよね。
——通常のアニメより頭身がやや低いから、少しかわいい印象を与えるわけですね。
神山 そういうところにも、物語を作る上での要請みたいなものが絶対にあるんですよ。イリヤくんのデザインが持つ魅力を3Dのモデラーが上手く落とし込んでくれたのが、今回のキャラクターということなんで。そのデザインだけを見ちゃうと、「若い」とか「かわいい」と感じてしまう。「少佐っぽくない」という意見も、もしかしたらあるかも……とも思ったけれど(笑)。でも多分、動いたら「少佐」なんですよ。
——確かに本編を観ていると、この「かわいい素子」のルックスのまま、しっかりと素子らしい貫禄や存在感が感じられます。
荒牧 そこは、田中敦子さんのおかげもありますね。田中さんの声がすると、そこはちゃんと素子になるんで。
神山 そう、本当にね。