【松原秀が語る6つ子それぞれの個性】長男・おそ松欲望人間で、本能で生きているヤツ、自分のやりたいことしかやらないヤツです。それから、僕のイメージでは「フィルターがない人」ですね。何かトラブルが起きたり、激しい言葉を投げつけられても、「へー、そうなんだ」のひと言で全部素通りさせちゃうんです。チョロ松だったらツッコむところも、おそ松にとっては問題なしなんですよ。ある意味、寛大というか。だから、無職であることも本人にとって全然NGじゃないのかも……。
次男・カラ松カラ松は見たままのキャラクターですね。第2話で、橋の上で女の子たちの視線を意識しながらブツブツ言っていたシーンがあったじゃないですか。本当は悪口を言われているのに、自分の世界に浸って「ようやくきたかい、カラ松ガールズ」って。あのシーンは、実にカラ松らしかったです。でも、優しい一面も持っていて、人に対して怒らない。それから、意外と泣くんですよ。素の感情が出ると、涙もろいヤツです。
三男・チョロ松唯一の常識人という設定ですが、そこには「?」がつきます。藤田監督と話していて、「結局、コイツも仕事をしていないんだから、何かあるぜ」と。そこで生まれたのが女の子が絡むと急にポンコツという設定。チョロ松が常識人ぶっていると、「お前もたいがいだぞ」って笑っちゃいますね。でも、脚本を書いていると、味方になってくれる貴重なキャラです。みんなが勝手なことをするなかで、脱線した話を元に戻してくれるので。
四男・一松なかにはテンションの低い、自虐的なヤツも混ざっているんじゃないかな、と。それで生まれたのが、ダウナー系という性格です。一松は、自分を社会の底辺に置いていてゴミ扱いしていますけれど、それは自分を客観視できているということでもあって、案外、隠れた常識人なのかもしれません。初期段階では、一松のダウナーと十四松のハイテンションという設定はなく、後から生まれたものでした。
五男・十四松こいつのことは、わからないですね。十四松は十四松としか、言いようがありません。なぜ野球のユニフォームを着ているのか、なぜ触手みたいな腕の動きをするのか、僕にもまったく説明不可能です。脚本を書いていても、何か起こると勝手にリアクションを取ってくるので、僕はそれに乗っかっているだけなんですが、太刀打ちできずに「もう勘弁してくれ」と。すぐにどこかに行ってしまって、いなくなっちゃいますし。
末っ子・トド松唯一、外の世界と接触が持てる、世間との橋渡し的な存在。「僕はほかの5人とはちょっと違う」という空気を醸し出して、常にうまいことやる人ですが、「パチンコ警察」のときみたいにほかの5人に束になられたら抗えない感じです。銭湯のシーンではひとりだけなぜか胸を隠していましたけど、よくわかりませんが「胸を出すのがイヤ」みたいなこだわりもあるんでしょうね……ほかの大事なトコロは平気で出していましたけど(笑)。
(初出=アニメージュ2015年12月号)
(C)赤塚不二夫/おそ松さん製作委員会