• 【山寺宏一+福井晴敏インタビュー】「宇宙戦艦ヤマト」という時代とデスラーという男
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2021.06.07

【山寺宏一+福井晴敏インタビュー】「宇宙戦艦ヤマト」という時代とデスラーという男

(c)2012 宇宙戦艦ヤマト2199 製作委員会 (c)西﨑義展/宇宙戦艦ヤマト2202製作委員会


〈山寺デスラー〉の魅力

ーー福井さんは、山寺さんが演じる〈山寺デスラー〉の印象はいかがですか?

福山 山寺さんはそれこそ “七色の声を持つ男” と言われ、「オリジナルの声優さんがもう引退なさったしなぁ……」というような時に「そうだ、山寺さんに頼めば大丈夫だ」と必ず最初に名前があがる方ですよね。でも、それは「真似」が上手いからかというと、けっしてそうではないんですよ。山寺さんのデスラーも多少は、過去のシリーズで伊武雅刀さんが演じたデスラーに寄せているところがないではないけれど、やはり基本的には山寺さんのデスラーです。それは、どこが違うかというと、伊武さんのデスラーよりも山寺さんのデスラーのほうが、より人間味を感じるということかな、と。そこはどちらが上ということではなく、時代的な皮膚感覚、距離感覚の違いだと思います。山寺さんのデスラーは、この平成・令和という時代に合ったデスラーとしてしっかりと作られているという印象があったので。こちらの脚本もそれに則って、より人間的な部分を掘り下げるようにしたつもりです。

山寺 ありがとうございます。

ーー山寺さんとしても、伊武さんのデスラーを意識しながら、ご自身のデスラーを?

山寺 もちろん意識というか、僕も過去のシリーズのデスラーが大好だし、伊武さんのファンでもあるので。まったく変わってしまうのは、自分でも嫌だなと思いますから。でも、やれることは限られているし、そんなにそっくりにできるわけがない。表面だけ真似しても仕方ないので、あとは脚本に導かれるように演じていくだけです。さきほど「人間味」というお言葉をいただきましたが、それは僕の演技がどうこうではなく、そういうデスラーが脚本に描かれていたということだと思いますよ。

福山 伊武さんの声はパンと発したときにスッと通るイメージですが、山寺さんの声はたとえば同じセリフを言ったとしても、奥のところにビビっとくる震えがあるんですよ。その「震え」に共感したり、心を動かされる瞬間というのがある。その表現が、他の誰にもできない。

山寺 ありがとうございます! 今のはぜひ太字で(笑)。

福井 (笑)

山寺 でも、自分のことは本当にわからないので。単に、伊武さんのような深い声が、僕には出せないというだけなんですけどね。

福井  いえいえ。『2199』の段階で山寺さんがデスラーにキャスティングされていたことは、自分が『2202』の脚本を書くにあたっては本当に望外の喜びでしたよ。

新たなる旅立ちに向けて

ーー『「宇宙戦艦ヤマト」という時代』の先に、次回作『宇宙戦艦ヤマト2205 新たなる旅立ち』も控えていますね。

山寺 はい、実はもう収録がはじまっておりまして。これがもう……最初からちょっと「ええっ!?」と感じるような展開が。

福山 先日の収録で、山寺さんが「いやぁ……精神的にきた」と言いながら帰っていかれたのが印象に残っています(笑)。ひとつだけ情報を明かすと、山寺さんにひとつお願いをしたことがあって。1カ所、「このセリフの時はデスラーを忘れてください」と。

山寺 はい、あのシーンですね。

福井 デスラーのままではできない芝居があって、そこは一度すべて取っ払って、本当に何もなくなった状態で、とお願いしたところがあるんです。つまり……デスラーがそんな目に遭います(笑)。

山寺 そうなんですよね。これまでも、ひとりだけのシーンやモノローグの中、子供の頃のシーンなどで、「ああ、デスラーも元々は、ひとりのコンプレックスを持った弱い人間だったんだ」と感じさせることはありました。でも、誰か他人がそこにいたら、絶対にデスラーとしていなければいけなかった、なのに『2205』では……と、そのくらい大きなできごとが起こるということです。

ーーつまり『2205』ではデスラーの新たな側面、もしくは、もともと持っていたかもしれないけれど見せていなかった側面が見られるのでしょうか?

福井 そうですね、デスラーファンには間違いなく満足していただけると思います。

山寺 それを楽しんでいただくためにも、今回の『「宇宙戦艦ヤマト」という時代』をぜひ、観ていただきたいですね。今まで『ヤマト』を観てこなかった人も “入門編” として楽しめます。今まで大好きだった人なら、あらたにあの感動が蘇ってきます。いろいろな思いで観て、楽しめると思うので。すべての人にぜひ観ていただきたいと思います。

福井 観ていて楽しいのと同時に、観ることで現実の見え方が少し変わったり、「今の現実ってこうなのかな」と再確認したり捉え直したりできるのが、フィクションの魅力です。『「宇宙戦艦ヤマト」という時代』のベースである『2199』を『2202』はコロナ禍の状況がはじまる前に作られた作品なので、言って見れば東日本震災後以降の10年くらいの日本の気分が反映されています。そして今、さらに大変なことが起こっている。そんな、不安が連続して襲ってくる時代をどう生き抜くかということに関しては、続く『2005』の物語でしっかりと掘り下げています。昨今、空回りしがちな “希望” という言葉の重さ、大事さをもう一度確認できるような物語になっていると思うので、ぜひご覧になってください。

山寺宏一【アベルト・デスラー役】
やまでら・こういち/アクロスエンタテインメント所属。最近のアニメ出演作は『ルパン三世』シリーズ(銭形警部役)、『銀魂 THE FINAL』(吉田松陽/虚役)、『ハクション大魔王2020』(ハクション大魔王役)ほか多数。映画吹き替えやナレーションでも活躍。

福井晴敏【構成・監修】
ふくい・はるとし/小説家。『亡国のイージス』、『終戦のローレライ』など小説作品のほか、『機動戦士ガンダムUC』(ストーリー)や『機動戦士ガンダムNT』(脚本)などにも参加。『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』ではシリーズ構成・脚本を担当。

(C)2012 宇宙戦艦ヤマト2199 製作委員会
(C)西﨑義展/宇宙戦艦ヤマト2202製作委員会

アニメージュプラス編集部

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