• 【『映画大好きポンポさん』SP】加隈亜衣が語る平尾監督作品の〈希望〉
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2021.06.18

【『映画大好きポンポさん』SP】加隈亜衣が語る平尾監督作品の〈希望〉

(C)2020 杉谷庄吾【人間プラモ】/KADOKAWA/映画大好きポンポさん製作委員会


名作!『ヨヨとネネ』の思い出

ーー『ヨヨとネネ』で平尾監督にはじめてお会いになった時の印象を振り返っていただけますか。

加隈 私はそれまで監督という方に会ったことがなかったので、最初は正直、怖い人が来たらどうしよう……と思っていました(笑)。でも、実際にお会いした平尾さんは、「監督です」みたいな威圧的な雰囲気もないし、かといって「ずっとスタジオにこもって黙々と作業をしています」という感じでもなく、そういう意味では「普通の方」という印象でした。しゃべりかたも何となく、動物っぽいというか。

ーー動物っぽい?

加隈 のらりとした感じ……あまり攻撃してこない、無害な感じだなと(笑)。とてもしゃべりやすい人だなという印象で、それはいまだに変わらないです。ただ、たまにスイッチが入ると「ああ、やっぱりこういう作品を作っている人だな」と思わせられるような面が出てきます。「この作品はこういう世界感で……」と自分の言葉でしっかり伝えてくれますし、ご自身が大事にしている部分は妥協することなく、まっすぐに自分の世界感で突き進んでいく人でもあるんだなと感じました。

ーー加隈さんご自身にとっても『ヨヨとネネ』は思い入れの強い作品だと思いますが、あらためて作品の魅力について教えてください。

加隈 やはり、映像に引き込まれます。“映像美” と言葉にすると簡単だけれど、とにかくこだわりがすごくて。物語を知ってもう一度見返してわかる細かい描写も詰まっていて、『ヨヨとネネ』ならではの「魔法」の世界の魅力が絵から鮮烈に伝わってくるんです。かと思えば、そんな世界から急に、現実がバンと突きつけられたりもするんですよね。

——主人公のヨヨさんが、魔法の世界から人間の世界に迷い込んで……というのが映画のストーリーですよね。

加隈 魔法の世界と人間の世界を行き来するシーンがあるんですが、そのシーンの色味が急に怖さや不気味さを感じさせて、それで一気に引き込まれるのが印象的です。そして、ちょっとチートすぎるくらいの魔力を持っているヨヨさんが、人間の世界で魔法を使えなくなってしまうけれど、最終的にみんなの応援、暖かさに触れて、魔法を使えるようになる。力をくれたのはみんなで、それが魔法に変わるーーそんなドラマの流れも好きです。夢や希望、可愛らしさ、そこにちょっと毒々しさも混ざっていて、ちょっと大人っぽさもありつつ、でも純粋さも感じさせてくれて。何というか……とにかく、すごくオススメしたい作品です。「今まで観た映画で何が好きですか?」と聞かれたら、私はまず『ヨヨとネネ』をあげます。落ちこんだ時や、真っ直ぐな気持ちになりたいなと思うと、観る作品ですね。まっすぐに「届け!」という言葉を伝えてもらえるのが心地いいというか。少年の純粋な想いを届けられたような、そんな感覚がとても好きです。

*魔女っ子姉妹のヨヨとネネ=2013年公開の平尾監督劇場作品。原作はひらりん(物語環境開発)の『のろい屋しまい』。〈魔の国〉でのろい屋を営むヨヨとネネの姉妹が主人公で、強力な魔力を持つ姉のヨヨが現代世界に迷い込んで起こる事件を描く。

平尾作品の中心は “希望”

ーー作品を通して「平尾監督らしさ」を感じることはありますか。

加隈 以前、平尾さんと「(『ヨヨとネネ』の)キャラクターで、自分は誰にいちばん近いんですか?」とお話しをしていたら、「それぞれのキャラクターにちょっとずつ(似ているところが)ある気がします」っておっしゃっていました。「ヨヨさんぽいかもしれないけれど、ネネさん的なところもあったりるすのかなって思いつつ……タカヒロが一番近いんじゃないかな」って。でもどちらかというと特定のキャラクターというより、お話の流れ、ドラマ全体から伝わってくるものが “平尾さんらしい” と感じます。

——他の平尾監督作品からも、同じような “平尾監督らしさ” を感じたりは?

加隈 そういえば、『ヨヨとネネ』に出演するにあたって、平尾監督の作品を観てみたいと思って『ギョ』という作品を観て……「もしかしたら、観なければよかったかも?」って(笑)。テイストがまったく違っていて、「こんな作品を作っていた人が、『ヨヨとネネ』みたいな可愛い映画を作るの?」と驚きました。

——『ギョ』はかなり刺激の強いホラーですからね(笑)。

加隈 でも考えてみれば、『ヨヨとネネ』も可愛いだけじゃないですよね。人間が持っている、ちょっと綺麗なだけじゃない部分や、挫折や心が折れるような経験も描かかれています。でも、最終的には救い、希望の方向へ向かっていく。その純粋さは、何となく平尾監督らしいなと思います。それから、TVシリーズ『GOD EATER』に私も1話だけ出させていただいたのですが、私が出たのは主人公の過去編でした。主人公と、私が演じたお姉さんの生活——最終的にお姉さんは死んでしまうという結末ーーが描かれるのですが、そこでもやはり、絶望的な世界の中のちょっとした希望を感じさせてくれる。そういうところが、平尾監督らしさかもしれないですね。ネガティブなものも含めたいろいろな感情が複雑に混ざり合いつつ、中心にあるのは “希望”。そこは変わらない気がします。

*ギョ=伊藤潤二のホラー漫画が原作の2011年公開の作品。足の生えた不気味な奇形魚によって引き起こされるパニックを描く。

*『GOD EATER』シリーズ=人類が衰退した地球を舞台に、特殊な武器〈神機〉を使ってモンスター〈アラガミ〉と戦うアクションゲーム。椎名は本シリーズの音楽を担当し、平尾監督はPVやOP&EDアニメーション等を制作している。後述のアニメ『GOD EATER』は本作の世界感をベースにしたオリジナルストーリーを描く、平尾監督のTVシリーズ。

ーーそれは確かに、平尾監督の一貫したテーマかもしれないですね。ネガティブな面から目はそらさず、そででも希望は絶対に失わない。

加隈 『ポンポさん』でも、そこは強く感じますよね。原作をしっかり大事にしながら、平尾監督らしい切り口で、素敵だなと思います。あとは、映像の見せ方が心地良いのも、平尾監督作品の魅力ですが、『ポンポさん』で言うと終盤の “編集シーン” の演出が印象的でした。実際に映画の編集をされて、現実を知っている人が、あんなドラマチックに “編集” を描けるのが不思議に思いました。リアルを知っている人が、逆にどうしてこんな表現を思いつけるんだろうって。それに個人的には、『ポンポさん』と『ヨヨとネネ』との違いもおもしかったです。『ヨヨとネネ』は前半はわりとゆったりと進んで、後半にワッと盛り上がる構成だったと感じますが、『ポンポさん』は本編を90分の枠に収めるということもあって、冒頭からテンポよく進んでいく。その変化も含めて、平尾監督が培ってきたものを全部ぶつけている感覚、平尾監督にとっての “映画” というものに全力で向き合った結果が、『ポンポさん』には詰まっている気がしました。そこにも個人的に “物語性” を感じて、胸がキュンとするところもあります。『ポンポさん』を気に入った方にはぜひ、今までの平尾監督作品も観ていただいて、楽しんでいただくのもオススメです!

(C)2020 杉谷庄吾【人間プラモ】/KADOKAWA/映画大好きポンポさん製作委員会

アニメージュプラス編集部

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