• 『千と千尋の神隠し』の “優しい悪夢” に魅せられる夜【金曜ロードショー】
  • 『千と千尋の神隠し』の “優しい悪夢” に魅せられる夜【金曜ロードショー】
2022.01.07

『千と千尋の神隠し』の “優しい悪夢” に魅せられる夜【金曜ロードショー】

(C) 2001 Studio Ghibli・NDDTM


千尋が迷い込むのは現実とも夢ともつかない異世界で、そこに登場する異形の者たちの様子は、実はかなり不気味で恐怖さえ感じさせる。
巨大な頭部の湯婆婆、身体は蜘蛛で頭は老人の釜爺、巨大な赤ん坊の坊、無表情な仮面のカオナシ……。
油屋の情景も華やかながら猥雑だし、千尋がカオナシに連れられて乗り込む電車が水の上を走る名シーンはシュールでどこか “狂気” のようなものも感じさせる。
まさに夢で見るような、それも悪い夢にうなされるような映像が続く……のだが、きっとこの映画を見終えた後に「悪い夢を見た」という印象を抱く人はほとんどいないはずだ。


千尋が変わっていくにつれて、見慣れぬ風景も親しみやすいものとなっていく。
老獪な湯婆婆や厳しい釜爺の奥に隠された優しさや、カオナシの冷たい仮面の下の哀しみや孤独に触れた時、恐怖さえ感じさせていた異形の者たちが魅力的に見えてくる。
そんな風に、観る側の感覚を変容させる絵の力、そして演出の力。
そこに、宮崎駿という監督の魔力、ジブリが作り出すアニメーションの力がある。

言わずもがなの名作ゆえに、『千と千尋の神隠し』はもう何度も観た、という人もおそらく多いだろう。
それでもなお、観るたびに新しい魅力に気付かせてくれるのが名作というものだ。
今回のTV放送ではぜひ、“悪夢” のような世界が徐々に愛すべき世界へと変わっていく、そんなアニメーションの優しい魔法を感じてほしい。
そして、この作品の新たな魅力を見つけてほしい。

(C) 2001 Studio Ghibli・NDDTM

アニメージュプラス編集部

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