• 鉄郎の切ない通過儀礼『さよなら銀河鉄道999』
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2022.04.08

鉄郎の切ない通過儀礼『さよなら銀河鉄道999』

(C)松本零士/零時社・東映アニメーション


★鉄郎が経験する二つの出会い★

『さよなら銀河鉄道999』で鉄郎は、二つの重要な出会いを経験する。
ひとつは、ラーメタル星でのミャウダーという若者との出会い。
ラーメタルでレジスタンス活動をするミャウダーは、鉄郎と深い友情を結ぶことになる。
鉄郎にとってミャウダーははじめての同年代の仲間で、同じ目線を共有できる貴重な友人。
対等な立場で肩を組むことができる、かけがえのない “同志” だ。
だが、その出会いの先には、ある悲劇が待っている。
そこで鉄郎が知る悲しみは、幼い頃の母親との別離とはまた異質の、深い喪失感と絶望感、そして抑えようのない怒り。

もうひとつの出会いは、黒騎士ファウストとの対決だ。
プロメシュームの側近として、鉄郎の前に立ちはだかる黒騎士ファウスト。
彼との対決は、鉄郎にとって決して避けることのできない “運命” である。
黒騎士ファウストが背負う過去、彼が鉄郎と戦う理由、そして対決の先に待つ結末……そこには、それぞれの信念に従い生きる人々の思いが複雑に交錯している。
黒騎士と鉄郎の戦いがなぜ “運命” なのか。
その “真実” には、この旅が鉄郎にとっての “通過儀礼” であることの意味も隠されているので、ぜひ本編を観て確かめてほしい。


ラストシーンは寂しさの中に前向きな感動が感じられた前作とは対照的で、切なさがストレートに胸に刺さってくる。
その切なさは、鉄郎の少年時代が幕を閉じようとしている瞬間の切なさだろう。
映画を締め括るエンディングテーマ『SAYONARA』は、前作の主題歌(ゴダイゴ『銀河鉄道999』)の存在感のおかげで印象が薄れがちだが、実はアニメ主題歌史に残る隠れた名曲だ。
シンプルな言葉で綴られたその歌詞はおそらく、大人になっていく鉄郎を見つめる、メーテルの心情を表現している。
全編英語の歌詞だが、その邦訳は字幕で流れるので、ぜひしっかりと噛みしめてほしい。
そして「さよなら」という言葉の意味に、思いを馳せてみてほしい。

(C)松本零士/零時社・東映アニメーション

アニメージュプラス編集部

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