• 『雨を告げる漂流団地』監修者が涙した石田祐康監督こだわりの「団地愛」
  • 『雨を告げる漂流団地』監修者が涙した石田祐康監督こだわりの「団地愛」
2022.09.19

『雨を告げる漂流団地』監修者が涙した石田祐康監督こだわりの「団地愛」

(C)コロリド・ツインエンジンパートナーズ


――照井さんのお気に入りシーンは?

照井 OPシーンで、団地が昔の姿に戻っていくところです。ああ、まさにあの頃のひばりが丘団地ではないかと、冒頭からいきなり泣かせにきたのでびっくりしました(笑)。建て替えが決まり、誰もいなくなってしまった団地もほんのすこし前まではたくさんの人が住んでいて、一つひとつの窓の数だけ暮らしがあったわけです。窓の中では、いろいろな家族がそれぞれのドラマを繰り広げていたことでしょう。そんな団地の窓に思いを馳せてみると、ただの四角い箱に見えていた団地が、なんだかとても素敵なものに見えてくるはずです。

――照井さんが一番魅了された団地について教えてください。

照井 やはり私が住んでいる神代団地(東京都調布市・狛江市)ですね。ひばりが丘団地は建替えとなりましたが、神代団地は建替えではなく、住戸リノベーションなど改修をしながら存続していくこととなりました。いまでも団地にはたくさんの子どもたちがいて、建替え前の「鴨の宮団地」の雰囲気を感じることができます。広場で遊ぶ少年少女たちは、航祐や夏芽の姿と重なります。団地盆踊り、餅つき大会、コンサートなどたくさん行事があり、昔ながらの団地の温かみが残っていてとても楽しい団地です。

――そもそも照井さんは、団地のどんなところに魅力を感じていますか。

照井 団地の魅力は、たくさんの人が集まって暮らすことの素敵さを教えてくれることです。階段室で交わされる挨拶。広場で出会う友達。団地はみんなとゆるくつながれる居心地のいい場所です。ひばりが丘団地の入居が始まった翌年、日本住宅公団(現UR都市機構)の職員が、ある冊子の中で団地についてこう記しています。「私たちのまちを美しい国土にふさわしい新しい日本人のふるさとにすること、それを私たちは念頭にしているのです」と。それから60年以上経って、団地は本当に人々のふるさとになりました。たくさんの同じ形の箱が並んでいるようですが、みんなの心のふるさとなんです。

――石田監督の団地と映画に対する熱い想いについて、どのような印象をお持ちになりましたか。

照井 石田監督は、本当に研究熱心で驚かされるばかりでした。私がお渡ししたひばりが丘団地の2000枚近い写真を数日でチェックし、本人は一度も行ったことがないはずなのに撮影箇所を地図上に落としていたのです。私の家で、過去の航空写真にびっしりメモが入った紙をテーブルに並べる姿は、まるで『ペンギン・ハイウェイ』のアオヤマ君のようでした。

――最後に、読者に向けてメッセージをいただけますか。

照井 すでに映画をご覧になった方は、航祐と夏芽たちの姿を思い出しながら近所の団地を歩いてみてください。窓やベランダから垣間見える暮らしに少しだけ思いを馳せてみましょう。もしかしたら、どこかに “安じい” がいるかもしれません。そうして団地を歩いてきた後、もう一度本作を観てみてください。なぜか冒頭から涙が止まらなくなりますよ!

絶賛発売中の「スタジオコロリド公式ファンブック『雨を告げる漂流団地』」では、照井啓太氏のインタビューに加えて、豪華キャスト&スタッフが、本作の魅力を多面的に紹介。さらに設定画、美術ボード、初期スケッチ、原画など貴重なビジュアル素材をふんだんに掲載されている。

照井啓太(てるい・けいた)
高校生の頃から団地にハマり、現在は団地ファンサイト「公団ウォーカー」を運営。東京都小平市にあったNTT花小金井東社宅で生まれ育ち、現在は神代団地に居住。2018年に「日本懐かし団地大全」(辰巳出版)を上梓。

>>>『雨を告げる漂流団地』団地愛にあふれた場面カットを見る(写真12点)

(C)コロリド・ツインエンジンパートナーズ

アニメージュプラス編集部

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