• 『時空の旅人』真崎守×萩尾望都の名作が誘う80年代へのタイムスリップ
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2022.11.12

『時空の旅人』真崎守×萩尾望都の名作が誘う80年代へのタイムスリップ

(C)1986角川映画


刻み込まれた〈時代の空気〉

優れた作品は時代を超えるーーというのはひとつの真実だろう。だが同時に、優れた作品には、作られた〈その時代の空気〉を色濃く反映し後の世に生々しく、力強く伝えるという側面もあるのではないだろうか。
公開から35年以上を経た現在に改めて観る『時空の旅人』は、まさに1980年代の日本の空気を伝える作品としての楽しみ方ができる作品として、新たな価値を獲得しているように思える。

それは、ストーリーの内容や作中で描かれる風景、風俗という意味ではない。タイムスリップを描くため、現代――つまり当時の風景はほとんど登場しないのだ。しかし、それでも本作からは確かに〈あの時代の空気〉が濃厚に漂ってくる。

例えば、キャラクターたちの描写から感じられる、絶妙な〈軽さ〉。ストーリー全体はシリアスだが、登場人物の会話や行動は時にコミカルで、今の感覚では「軽薄」とも感じられる部分がある。だが、それこそが80年代当時の日本の若者のムードを反映したものと言える。
あるいは、作中で描かれる〈未来観〉。タイムトラベルが実現しているほどに進歩しているが、決して理想郷ではない時代――ハイテクとディストピアが同居する未来世界やガジェットは、80年代的視点・様式美によってビジュアライズされている。

さらに言うなら、まだデジタルやCGが導入される前の、セルアニメーションが生み出す独特のタッチ。 “古い” という言葉で乱暴には片づけられない、その時代ならではの映像センスやスタイルを感じられるはずだ。

それほどまでに、この作品に刻印された時代の空気は濃厚だ。当時を知る人ならきっと “懐かしい” という思いと共に、当時を知らない世代には新鮮な思いで「1986年の感覚」を味わうことができるのではないだろうか。
それはきっと、本作に集ったスタッフたちが生み出した映像や音楽がしっかり当時の時代と寄り添ったことから、結果として「時代を超える魅力」を獲得していたからではないだろうか。

タイムスリップを描いたアニメ作品で、80年代へと滑り込む。そんな目眩のような感覚をぜひ、今回の放送で楽しんでほしい。

(C)1986角川映画

アニメージュプラス編集部

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