• 『推し武道』『壁こじ』実写化記念!平尾アウリ&ミナモトカズキ対談
  • 『推し武道』『壁こじ』実写化記念!平尾アウリ&ミナモトカズキ対談
2022.11.22

『推し武道』『壁こじ』実写化記念!平尾アウリ&ミナモトカズキ対談

『推し武道』『壁こじ』実写化記念!平尾アウリ&ミナモトカズキ対談



◆ドラマオリジナル部分について◆

――今回原作にはない、ドラマのオリジナル要素があります。例えば『推し武道』だとえりぴよが書いた短冊が舞菜の手元に届くとか。『壁こじ』は結構あって、まだ描いてないところまで作られているということですが、そのことについてはどうですか。

平尾 短冊のところは悩みました。シナリオで、第1話冒頭のライブシーンが七夕のイベントになっていて、そこも原作とは違うのですが、撮影のタイミングの都合でどうしても桜が難しかったため七夕になったようです。そこを七夕にするなら短冊という要素をちゃんと使ってあげたいよねと、制作陣の中でアイデアが出たようです。

ミナモト なるほど。

平尾 原作では短冊のシーンはあくまでもギャグとして表現していて、スタッフの対応を気にする読者さんはあまりいらっしゃらなかったと思います。ただアニメ化の際にその部分を気にされる声が寄せられて…漫画と映像では受けとめられ方が変わってくるのだな…と感じました。

ミナモト 漫画と映像だと同じシーンでも印象が大きく変わることはよくありますよね…。

平尾 それを踏まえて、ドラマではスタッフがきちんと回収する流れにして、短冊に意味をもたせようということになったようです。ですので漫画・アニメ・ドラマそれぞれの表現があって、どれが良いということではなく、すべて正解だと私は思っています!

ミナモト たしかにそう思います!

――ドラマの第1話と第2話では、舞菜の心の声が出ていないので、気持ちが全くわからない形で描かれています。第3話でやっと舞菜の気持ちが表現されて、両思いだったということがわかるんです。原作だと最初からすれ違っているのを見せていますが、そのあたりの原作と違う表現方法はいかがでしょうか。

平尾 気づいてなかったです! 私、原作知っているから。

ミナモト (笑)。確かに気になっていました。
(C)平尾アウリ・徳間書店/「推しが武道館いってくれたら死ぬ」製作委員会・ABC
――第1話では、舞菜はひと言しか発してないんです。

平尾 全然気づかなかった。ありがとうございます。

ミナモト 自然に観られていたということですね。

平尾 そうですね。顔が可愛いので全然気にならなかった。舞菜の表情に複雑な想いが見えていたし、演技が上手だったので、気づかせなかったんでしょう。

――『壁こじ』のオリジナル要素はいかがでしょうか。

ミナモト 『推し武道』と違うのが、『壁こじ』って実写化が決まった時点でまだ4巻までしかなかったので、オリジナル要素がないと厳しかったと思います。キャラクターさえ崩れていなければ、オリジナルは大歓迎です。今回オリジナル要素がめちゃめちゃ良かったんですよ。原作が負けないようにしなきゃって、逆にすごくプレッシャーになりました。自分が勝負なのはこれからかなと。

――オリジナル要素はシナリオをご覧になったときに初めて知るんですか。

ミナモト さっきも出た2時間の会議のときに、今後の展開とか、キャラクターの裏設定は相当聞かれて。すごく全部素直にしゃべっちゃったので。それを元に構築してくれたんだなと思いました。あの2時間の会議にすごく意味があったんだと思います。

――会議でミナモト先生から引き出された要素だったんですね。

ミナモト だからオリジナルの部分が原作者の想いとズレることがなかったのかなと思いました。
C)ミナモトカズキ・徳間書店/2022「壁こじ」製作委員会
C)ミナモトカズキ・徳間書店/2022「壁こじ」製作委員会
――映像化するにあたって譲れないところはありましたか。

平尾 ChamJamメンバーの髪は地毛でお願いしますと、それだけはお願いしました。コスプレっぽく見えないように。

――なるほど。ミナモト先生は譲れなかったところはどうですか。

ミナモト ドラマ化が決まったときに、どうしても心配だったのが、コミックキングダムのシーンで、そこだけは今思い返すと結構口うるさく言っちゃったかなって思います。譲れないというか、こういうイベントをよく調べていただいていましたが、現場に行っている人間じゃないとわからないことって絶対あると思うので、始まる前にちゃんと詰めておいたほうがいいのかなと思ったんです。
C)ミナモトカズキ・徳間書店/2022「壁こじ」製作委員会
――撮影前のシナリオ段階でディスカッションしたんですか。

ミナモト そうですね。シナリオに関しては、自分からのバックが多かったと思います。やっぱりBLとか腐女子とかオタク的なものは、表現の仕方を間違えるとその界隈の人をバカにした感じになっちゃう恐れもあるので。それだけは絶対にあってはならないことだったので。

――BLや百合と言われる要素がある作品が実写ドラマ化されて放送される。こういった現象はどういう風に捉えていますか。

ミナモト 『推し武道』という作品が先にあってくれたのがすごく心強かったです。『推し武道』も『壁こじ』も、百合とBLとはいっても、いわゆるBLや百合をド直球でやっている作品とは多分違うと思うんです。メインのテーマって意外と別のところにあるんですよ。すみません、勝手な解釈でしゃべっちゃっていますが。

平尾 いえ。お願いします。

ミナモト ただのファンなので(笑)。あくまでも別のテーマの世界の中に、たまたま主人公が男の子を好きだったとか、たまたまアイドルの子で女の子が好きだったっていう、ただそれだけのことを描いている作品なんです。だから逆にめちゃめちゃわかりやすいBLとか百合じゃない作品まで、実写化されるようになったところに、すごく希望を感じますね。

平尾 確かにそうですね。今、ドラマでBL作品を放送している枠ってあるじゃないですか。今まではそこだけな感じだったから、普通にやってもらえるのはありがたいですね。

――『推し武道』を買いに本屋さんに行ったら見つからないんですよ。店員さんに聞いて連れて行かれたのが百合のコーナーで、そうなんだって思って。全然そんな意識がなかったのでびっくりしました。ミナモト先生がおっしゃったように、ストーリーの中心は別にあるので、全然意識してなかったんですよね。

平尾 そうですね。私もそんな意識はしていないというか、受け取り手次第だから本屋さん次第って感じですね。ただ、くくりたくないんです。「百合です」というくくり方をしたら、百合好きな人しか買ってくれないから。百合が描きたいわけではなく、関係性として描きたいだけなんですよね。たまたま女同士な感じになっているだけなので。百合と思ってもらってもそれでいいし、どちらでもいいと思っていますが。

ミナモト 自分もわりと同じ感覚なのでわかるなって思いました。カテゴリーは読み手さんが決めてくれたらいいかなって感じですよね。

平尾 そうですね。

――作品って自分から離れたらっていうか、発表したらあとは読み手さんに任せるという感覚でしょうか。

ミナモト そうですね。『壁こじ』は主人公が完全にゲイのキャラクターなので、連載当初からセクシュアリティ描写は入れています。もちろんBLとして楽しんでもらえても嬉しいんですが、ただ逆にBLを本気で求めている人からしたら、多分メインの主軸にそのお話がないから、下手したら裏切られたって思われちゃうかもしれないですね。確かにカテゴリーとしてどうやってアピールすればいいのか、描いている側すらよくわからなかったので。そういう意味では本当に「任せます」っていう感じですね。

平尾 確かに。百合を求められ過ぎるのも。

ミナモト そうですよね。そこばっかり描かなきゃいけなくなっちゃうから。だから『COMICリュウ』で『壁こじ』をやるときに、『推し武道』があったのはすごく心強かったです。いい意味でジャンル不明なところが。

――本当にこの2作品は百合とかBLでくくるともったいない作品ですよね。ドラマが面白い作品なので、カテゴリー概念で見られるともったいない。あまりジャンルが細分化されるのもどうかと思います。

平尾 私も思っています。

アニメージュプラス編集部

RECOMMENDEDおすすめの記事

RELATED関連する記事

RANKING

人気記事