――エンディングテーマの「まだ遠くにいる」では、歌唱だけでなく作詞も手掛けられていますが、歌詞に込めた思いなどをお聞かせください。私は、小説を全部読んでから歌詞を書きましたが、「まだ遠くにいる」がエンディングテーマとして流れるのは、物語の中盤までなので、ネタバレするわけにもいかず(笑)。でも、どんどん灯子たちの冒険が続いていくという物語が紡がれていく中でのエンディングテーマということで、作品が持つスピード感や勢いみたいなものを止めずに聞くことのできる、物語に寄り添った曲にしたいなと思いました。
そして、テーマもメッセージもスケールが大きい作品なので、ちょっと普通の曲では似合わないな、というのがあって、変わった展開だったり、ちょっと派手なアレンジだったりというものを作品のイメージに合わせて作っていったら、こんな難しい曲になっちゃったっていう感じです。
歌詞に関しては、私自身が小説を読んで『原作者の日向理恵子さんは、このような思いがあったのかな』と想像しながら書いてみました。これまでも人間の歴史の中にはひどい争いがあって、そのまっただ中で青春時代を過ごしてきた人たちは必ずいて、その時ってどうだったのかなとか想像した時に、やっぱり誰だって生まれる時代は選べないわけだけど、それでも生まれてきたからには、与えられた命を懸命に輝かせて生きていたのだろうなあと思ったんです。
生まれたら、もう否応なく、その場所で咲くしかないっていうことは酷だけど、でもそれは、誰にでも与えられている、命が持ってる救いだということを込められたらいいな、と思いました。
――「まだ遠くにいる」というタイトルに込められた思いをお聞かせください。自由に解釈していただけるといいな、という感じのタイトルなんですけど、言い切らないというか、何のこと言ってるのかなっていう疑問を持つようなものにしたかったんです。何かの気配だけがあって、それが良いものなのか悪いものなのかもわからない。だけど確実に近づいてきてる、そういうイメージですかね。
――明楽役を演じると決まった際の率直なご感想をお聞かせください。音響監督の若林さんから、私に演じてもらいたいキャラクターがある、と聞かされた時は『私が演じられる役、あったかな…』と思いました。登場人物の年齢層も若いですし、最近、私にお話が来るキャラクターって悪役が多いので(笑)。
明楽を演じさせていただけるとわかったときは、とっても嬉しかったです。先ほどもお伝えしましたが、明楽は、原作小説の段階から好きなキャラクターでしたし、とっても素敵な役だと知ってたので、ありがたいなあと思いました。
――坂本さんが思う『火狩りの王』の魅力をお聞かせください。原作小説を読んでいると、子供から大人まで楽しめる物語だと思います。そして、最終戦争後という近未来が舞台の話なんですけれど、妙にリアリティがあって、今私たちが生きている現代と陸続きというか、灯子や煌四、そして明楽たちが体験するできごとが他人事のように思えないんですよね。
登場人物たちが最後どうなるのか? こんなに一生懸命生きている人たちが報われなかったら嘘だろうって思いながら。
でもそうかもしれない。そのぐらい残酷かもしれないっていう、期待と不安で、とにかく一度触れたら最期までもう共にしていただくしかないという作品。
――『火狩りの王』の放送を待ち望んでる皆さんにメッセージをお願いします。私が最初、『火狩りの王』という作品がアニメ化されます、と聞いた際に最初に入ってきた情報が『あの押井守さんが大変惚れ込んでいる作品なんです』というお話だったので、『もう、それは間違いない!』という気持ちになったことを覚えています。きっと押井さんが『火狩りの王』をアニメにすることで描きたかったものがあって、小説から飛び出してきた、躍動感を持ったキャラクターたちが私たちに、その思いを伝えてくれるんだろうなと思うと、私も楽しみです。
小説の世界観をそのままに、さらにスピード感を味わえるアニメになっていますので、一度小説を読んだ方にも、ぜひ映像でも楽しんでほしいなあと思います。
>>>坂本真綾さん写真や作品KVを見る(写真4点)(C)日向理恵子・ほるぷ出版/WOWOW