『シン・仮面ライダー』で流れる懐かしの名曲に秘められた「封印」の過去

しかし、1984年11月に発売された初の仮面ライダーＢＧＭ集となるＬＰレコード『テレビオリジナルＢＧＭコレクション 仮面ライダー』で、藤岡バージョンはまさかの再レコード化を果たすこととなる。
▲藤岡弘版主題歌の収録が復活したLPレコード「テレビオリジナルBGMコレクション 仮面ライダー」（1984）のジャケット（画像提供：高島幹雄／現在廃盤）。

そのきっかけは、まったく偶然によるものだった。当時ＬＰの制作に関係していたスタッフが、発売元の日本コロムビアにあるテープ倉庫で作業をしている際に、たまたま「ＮＧ」と書かれた箱を見つけたのだという。

これはレコード収録に対する「使用ＮＧ」という意味と推察するが、何が入っているのかと箱を開けてみると、そこに藤岡版のマスターテープが入っていたのだ。
藤浩一版がスタンダードとなったことで以後使用することはない、という判断だったのかもしれないが、これもまた「本物」の主題歌であることは間違いない。かくして主題歌歌手の交代から13年の時を経て、藤岡弘、の歌唱は奇跡の復活を遂げることとなったのだ。

2000年代以降に発売されている仮面ライダーシリーズの歌の数々を集大成するＣＤでは、藤岡版「レッツゴー!! ライダーキック」は藤版とともに収録され、現在では当たり前のように聴けるようになっている。
しかし、1984年の段階で、もしマスターテープの箱が発見されないまま廃棄されていたとしたら……藤岡版は本当にこの世から消えて「幻の音源」となっていたのかもしれないのだ。

2021年に公開された『シン・仮面ライダー』プロモーション映像Ａは、テレビシリーズ『仮面ライダー』の第1話から第13話までのオープニング映像を忠実に再現したものだ。バックに流れる主題歌「レッツゴー!! ライダーキック」では、当時のカラオケを使って主演の池松壮亮に歌わせている。これはもちろん、藤岡版へのオマージュだろう。

さらに、３月28日にMBSで放送されたシン・仮面ライダー公開記念「特別放送　映画『シン・仮面ライダー』幕前／第１幕 クモオーグ編」（5月7日までPrime Videoにて公開中）は、公開中の映画からクモオーグのエピソードを抜き出し、中間部のアイキャッチなどを追加してTVシリーズ第1話を踏襲したようなフォーマットで作られた。このオープニングにプロモーション映像Ａを使用したことで、「レッツゴー!! ライダーキック」はまたしても『仮面ライダー』の主題歌として返り咲くこととなった。

こういうこだわりからも、庵野秀明監督の仮面ライダー愛を十分に感じることができるはずだ。ライダーソングの原点である「レッツゴー!! ライダーキック」は、誕生から半世紀の歳月を超えてなお、我々の魂を揺さぶり続けるのだ。

映画『シン・仮面ライダー』
絶賛公開中

望まぬ力を背負わされ、人でなくなった男。与えられた幸福論に、疑問を抱いた女。
SHOCKERの手によって高い殺傷能力を持つオーグメントと化した本郷猛（池松壮亮）は、組織から生まれるも反旗を翻した緑川ルリ子（浜辺美波）の導きで脱走。迫りくる刺客たちとの壮絶な戦いに巻き込まれていく。
正義とは？　悪とは？　暴力の応酬に、終わりは来るのか。
力を得てもなお、「人」であろうとする本郷。
自由を得て、「心」を取り戻したルリ子。
運命を狂わされたふたりが選ぶ道は。

＜キャスト＞
池松壮亮　　浜辺美波　　柄本佑
西野七瀬　　本郷奏多　　塚本晋也　　手塚とおる　　松尾スズキ
仲村トオル　　安田顕　　市川実日子　　松坂桃李　　大森南朋
竹野内豊　　斎藤工　　森山未來

＜スタッフ＞
原作：石ノ森章太郎
脚本・監督：庵野秀明

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“SHOCKER公式アプリ「SHOCKER」fromシン・仮面ライダー”
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本作に登場する “秘密結社SHOCKER” が運用するアプリ。ダウンロードしたファンがSHOCKERの協力者・ないしは構成員として、“SHOCKER” の最新情報やアプリだけの限定コンテンツを楽しむことができる無料アプリとなっている。

（Ｃ）石森プロ・東映/2023「シン・仮面ライダー」製作委員会
（Ｃ）石森プロ・東映