• 『MEMORIES』大友克洋が若き才能と組んで挑んだ新たな映像表現の地平【日曜アニメ劇場】
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2023.08.18

『MEMORIES』大友克洋が若き才能と組んで挑んだ新たな映像表現の地平【日曜アニメ劇場】

(C)1995マッシュルーム/メモリーズ製作委員会


●Episode.1「彼女の想いで」●

開幕を飾るEpisode.1「彼女の想いで」は、21世紀末の宇宙空間を舞台にしたゴシック&サイコホラー的ストーリー。宇宙の墓場・サルガッソー海域からの救難信号を受けて救出に向かった解体業者が遭遇するミステリアスな恐怖を、デジタルと手描きを融合した緻密なアニメーション映像で表現している。
監督はアニメーターとして『AKIRA』などに参加して頭角を現し、ケン・イシイのMV『EXTRA』(1995年)や後の『アニマトリック』「Beyond」(2003年)などで世界的に評価される森本晃司。脚本に今 敏(『千年女優』、『東京ゴッドファーザーズ』監督)、音楽を菅野よう子が担当するなど、やがてアニメ界を代表することになる才能が参加している点も注目に値する。

廃墟と化した巨大な宇宙船の中に広がる、壮麗なオペラ劇場。天才オペラ歌手の “思い出” という華麗な幻想の中に取り込まれていく甘美と恐怖。怖れつつ惹かれてしまう、まさに「ゴシックホラー」の悦びを堪能させてくれる作品だ。

●Episode.2「最臭兵器」●

続くEpisode.2「最臭兵器」は現代日本を舞台に、軍事開発に狂奔する人間の愚行を戯画的に描いたスラップスティックコメディ。
監督は後に『WOLF’S RAIN』(2003年)や『DARKER THAN BLACK』シリーズ(2007年〜)など個性的な作品を生み出すことになる岡村天斎で、今作が初監督作だ。

製薬会社の研究所員・田中信男が誤って服用してしまった薬品は、極秘に進められていた細菌戦用兵器研究の産物で、服用した人間の体から発せられたガスの臭いを嗅いだ生物は一瞬にして意識不明に陥るという、驚愕の代物だった……。

本作の大きな見どころは、手描き独特の “味” を突き詰めたハイクオリティな作画の力。
ストーリーの舞台である冬の甲府盆地の風景が写実的に描写され、大友が原案を手掛けているキャラクターの絵柄も基本的にはリアルタッチ。ストーリー後半に登場してくる現用兵器の数々やクライマックスに登場する架空のメカニックも、ディテールにこだわったリアルな描写が為されているが、一方でキャラクターの動きや表情からは、アニメーション特有のデフォルメされたコミカルさも漂ってくる。
リアルな描写の中にコミカルなドタバタ劇のテイストが巧みに混ぜ合わされることで、スラップスティックな風刺劇としての馬鹿馬鹿しさがより大きく際立ち、それがこのエピソードの大きな魅力となっていると言えるだろう。


(C)1995マッシュルーム/メモリーズ製作委員会

アニメージュプラス編集部

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