• 『MEMORIES』大友克洋が若き才能と組んで挑んだ新たな映像表現の地平【日曜アニメ劇場】
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2023.08.18

『MEMORIES』大友克洋が若き才能と組んで挑んだ新たな映像表現の地平【日曜アニメ劇場】

(C)1995マッシュルーム/メモリーズ製作委員会


●Episode.3「大砲の街」●

大友自身が監督した「大砲の街」は、3つのエピソードの中でもっとも挑戦的・実験的と表現すべき1本だ。

舞台は、時代も場所もわからぬ、架空の街。その街は今、他国と交戦中。街全体が大砲で重装備された移動都市で、市民の生活の中心に「大砲」がある。
そんな街で暮らす少年と、その父と母の日常ーー。
ファンタジックだがどこか不吉で不気味な空気感が漂う異色の世界観が、まずは大きな魅力と言えるだろう。

このエピソードは22分と他の2エピソードより尺は短いが、その22分間の全編をワンシーン・ワンカットで処理するという驚異的な手法が特徴であり、公開当時もアニメーションで類例のない画期的な試みとして大きな話題となった。
実写映画のワンカット撮影を思わせるアイデアだが、このエピソードでは、カメラの存在を意識させないというアニメーションの特徴が活かされ、“視線”が誘導される感覚がより直接的に感じられる。
その結果として生み出された、まるで騙し絵を見ているような、あるいは “動く絵本” のページが勝手にめくられていくような独特の幻惑感をぜひ、堪能してほしい。

短編漫画の名手としても知られている大友だが、アニメ監督デビュー作がオムニバス作品『迷宮物語』(1986年)の1エピソード「工事中止命令」であり、また後のオムニバス作品『SHORT PIECE』(2013年)には『武器よさらば』(原作)、『火要鎮』(脚本・監督)で参加するなど、短編アニメの仕事も見逃すことはできない。
類稀なるアニメ界の才能と生み出した、濃厚な大友ワールドのフルコースをこの機会にぜひ堪能してもらいたい。

>>>3つの珠玉エピソードに震える『MEMORIES』場面カットを見る(写真11点)

MEMORIES
★8月20日(日)19時、BS12トゥエルビ〈日曜アニメ劇場〉にて放送

〈STAFF〉
製作総指揮・総監督:大友克洋
製作:山科誠、渡辺繫、八木ケ谷昭次、宮原照夫
企画:大友克洋、鵜之沢伸
プロデューサー:杉田敦、鮫島文雄、水尾芳正、田中栄子、井上博明
製作:バンダイビジュアル株式会社、松竹株式会社、株式会社講談社
アニメーション制作:マッドハウス、スタジオ4℃

【Episode.1「彼女の想いで」】
〈STORY〉
2092年。ハインツ、ミゲル、イワノフ、青島の4人は、自前の宇宙船を使い、宇宙空間に浮遊する難破船、廃棄衛星といった「ゴミ」の回収、解体作業を請け負って金を稼ぐ独立業者だ。ひと仕事終えた帰途、宇宙の墓場と呼ばれるサルガッソー宙域から送られてくる救難信号を受信、発信源に急行した彼らが遭遇したのは、巨大な薔薇の形をした旧型宇宙船だった。中に侵入したハインツとイワノフは、いきなり眼前に現れた壮麗なオペラ劇場に驚愕する。ロボット以外に動くものの姿などない船内の各部屋には、21世紀初頭の天才ソプラノ歌手、エリザベス・フリーデル(エヴァ)の残した品々が数十年間、誰の手も触れぬまま放置されているだけだった。なおも探索を続けるふたりは、やがて摩訶不思議なあやかしの世界に落ちこんでいく。それは、不幸な運命をたどったエヴァの情念が作りだした「幸せな想いで」の幻想なのだ……。

<STAFF>
原作:大友克洋 脚本:今 敏 監督:森本晃司 キャラクターデザイン・作画監督:井上俊之美術:池畑祐治、小関睦夫、山川晃 撮影監督:枝光弘明 音楽:菅野よう子

<CAST>
ハインツ:磯部勉 ミゲル:山寺宏一 エヴァ:高島雅羅 イワノフ:飯塚昭三 青島:千葉繁 エミリィ:長谷川亜美 アンナ:沢海陽子 ロボット:柊美冬 A氏:平野正人 声:坂口哲夫、大場真人

【Episode.2「最臭兵器」】
〈STORY〉
冬の甲府盆地。西橋製薬の研究所員、田中信男は風邪薬だと錯覚して、ある新薬サンプルを服用してしまう。実は、そのサンプルは、政府の依頼で極秘に進めていた細菌戦用兵器研究の産物であり、服用した人間の体から、その臭いをかいだ生物を一瞬にして意識不明にしてしまうガスを発生させる驚異の薬品だった。仮眠をとった田中が目覚めた時、すでに彼の体から発生したガスは甲府盆地を覆いつくしており、研究所はおろか盆地内の人間、鳥、獣は仮死、植物はすべて、桜もひまわりもいっしょくたに花を咲かせていた。自分が「歩くリーサル・ウエポン(最終兵器)」と化したことをまったく知らない田中は、東京の本社へ向かう。自衛隊は、狙撃兵、戦車、ミサイル、戦闘機を総動員して田中を攻撃するが、ガスは機械をも狂わせてしまい、彼の前進を止められない。ついに、彼を生け捕りにすべく米軍が最終兵器を投入するが……。
〈STAFF〉
原作・脚本・キャラクター原案:大友克洋 監督:岡村天斎 キャラクターデザイン・作画監督:川崎博嗣 美術監督:串田達也 撮影監督:川口仁 監修:川尻善昭 音楽:三宅純

〈CAST〉
田中信男:堀秀幸 韮崎:羽佐間道夫 本部長:大塚周夫 鎌田:阪脩 大前田:緒方賢一 米軍将校:大塚明夫 ほか

【Episode.3「大砲の街」】
〈STORY〉
少年が住んでいるのは、無数の大砲で重装備した移動都市だ。市内各所に、超巨大な大砲を据えた砲台があり、少年の父親は17番砲台の装填手。母親は砲弾製造工場で働いている。「撃てや撃て力の限り街のため」などという標語がテレビから流れるこの街は他国と交戦中で、市民生活すべての中心は「大砲」である。学校の授業も大砲のためにあり、少年が教わる数学のテーマは、いかに射撃精度を上げるかなどだったりする。砲台は連日、轟音を街中に響きわたらせる。少年の父親のような大勢の装填手たちが汗や煤にまみれて装填した砲弾を、着飾った砲撃手が儀式化された動作で遠く離れた敵に向けて発射するのだ。こちらの砲撃が挙げた戦果は毎夜テレビで発表される。そうした、いつもと変わらぬ1日を終えた少年は将来、重労働だが地位は低い装填手ではなく、花形職種の砲撃手になりたいと願いながら眠りにつくのだった……。

〈STAFF〉
原作・脚本・監督・美術監督・キャラクター原案:大友克洋 キャラクターデザイン・作画監督:小原秀一 技術設計:片渕須直 撮影監督:枝光弘明 編集:瀬山武司 音響監督:藤野貞義 音楽:長嶌寛幸

〈CAST〉
少年:林 勇 父親:キートン山田 母親:山本圭子 先生:仲木隆司 指揮官:中村秀利
給弾長:福田信昭 旋回手:江川央生 俯仰手:佐藤正治 ほか

(C)1995マッシュルーム/メモリーズ製作委員会

アニメージュプラス編集部

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