もうひとつは今監督が手がけた唯一のテレビシリーズ・短編アニメの絵コンテを収録した書籍「今 敏絵コンテ集 妄想代理人 オハヨウ」の登場だ。復刊ドットコムが刊行してきた「今 敏絵コンテ集」の最新にして最終巻となる、まさにファン待望の一冊だ。
『妄想代理人』は2004年にWOWOWでスクランブル放送された、今が原作&総監督をつとめた唯一のテレビシリーズ。神出鬼没の謎の通り魔「少年バット」が次々に繰り広げていく犯罪、それに並行して多くの人々がアイデンティティを失い現実世界の根幹が崩れていくという物語展開は、ネット情報とSNSに翻弄され現実感が希薄になっている現代にこそ再見すべき内容となっている。
全13話のうち、今監督(別名義を含む)が手がけた第1話「少年バット参上!」、第2話「金の靴」、第9話「ETC」の一部、第13話「最終回。」が収録されている。
▲第1話「少年バット参上!」絵コンテより
そして『オハヨウ』はNHKの2007年から不定期放送された番組、15人のクリエイターによる短編アニメ集「アニ*クリ15」の中で公開された、1分弱の短編アニメ。実はこの作品、『パーフェクトブルー』の主人公・未麻の日常の一コマという裏設定があり、今監督最後の監督作という点でも注目に値する一作だ。
今監督ならではの精緻なタッチでまとめられた絵コンテは、本編を観ていなくてもマンガを読むようにスイスイと読み進めることができることに驚かされるはず。ディープなアニメファンならずとも、ぜひ手に取ってもらいたい。
再上映と書籍という、二つの形で再びスポットを浴びる今 敏の才能。そのすごさを再確認するのか、それとも新たな発見をするのか。この絶好の機会を見逃す手はない。
>>>『パーフェクトブルー』キービジュアルと「今 敏絵コンテ集」ラインナップを見る(写真10点))(C)1997MADHOUSE
(C)今 敏/株式会社マッドハウス/「妄想代理人」製作委員会
今 京子(KON’STONE)