◆田口監督=『ウルトラマンブレーザー』◆――ヤスノブは劇場映画だと珍しく、アースガロンに乗り込まず白兵戦で活躍していました。梶原 そうですね。映画で初めてくらい?
田口 あまり外へ出ていないもんね。
梶原 憧れだった立体機……。
田口 それじゃない、ジェットパック(笑)。
梶原 (笑)。第1話を観た時、僕もワイヤーやれるんだと思ったら、吊られずに立って横から撮られて。
搗宮 ヤスノブだけ吊られなかった。
梶原 そう、エミは吊られていたけど、僕はエミを肩車していたんです。
田口 肩車した状態だと、二人とも吊ったら危ないから。
梶原 しかも、ヘルメットした状態だから、首にダメージが……。
搗宮 痛いって言ってたね。
――ある意味、フィジカルが活きた場面というか。梶原 そうそう。「筋肉が鍛えられてる~!」って思いながら撮っていました。
搗宮 ポジティブ(笑)。
――アンリは劇場映画序盤のタガヌラー、ズグガン(幼体)相手の立ち回りが印象的でした。内藤 隊長、エミちゃんと三人のワンカット長回しは本編だとあっという間なんですが、結構大変でした。火薬を使っているから何回もできないし、歩幅とかちょっとしたことでもズレてしまうと撮り直しになるので。
搗宮 緊張したー!
蕨野 撮影に時間かかったよね。躓く位狭くて。
内藤 そうですね。段差がたくさんあって足元が悪いから、スタッフさんで大コケしちゃった人がいたんですけど、何とかチームワークで乗り切って。本編を観たら怪獣たちの合成がぴったりハマっていて、ワクワクしました! とても素晴らしい映像でしたね。
田口 ありがとうございます。あのシーンは怪獣たちがわらわら出てきているんですが、現場ではそれぞれ一匹ずつしかいないんです。現場では空撃ちというか、誰もいないところに撃っていて。どれが本物を相手にしていてどれが違うのか、わからなくなるくらい合成を頑張ってもらいました。それから、あの日一番大変だったのは、実はゲント隊長(蕨野さん)で。
内藤 最終話と映画の撮影が被っているスケジュールだったんです。とても大変そうでした。
搗宮 声をかけられなかった。
田口 最終回のブレーザーに話しかけるシーンと同じ日の撮影で、そのシーンを撮る前に映画の銃撃戦の段取りをしていたんですよ。作る側としては、本当に申し訳ないとしか言いようがないです。
内藤 隊長(蕨野さん)的にはやっぱり、朝イチで最終回を撮ったほうがよかった?
蕨野 でも、スケジュール的に劇場版の段取りを先にやっておかないといけなかった。その事情はわかっていたから、あとは俺の問題。最終話の撮影を迎える時にちゃんと自分のモチベーションを保っていられるか、それに俺のウルトラ人生の全てがかかっていた。俺は疲弊した状態だったんだけど、近くで落ちている花びら掴んで写真を撮っている人たちがいるし。
搗宮 誰だろうね(笑)!
内藤 誰だろうねぇ(笑)。でも、お花が綺麗だったから。
搗宮 綺麗だった!
蕨野 とか言って、写真をシャカシャカと……「君たち最終回だってわかってる?」「ちょ~~っとあっちに行っててくれないかな」と思いましたね。
一同 (笑)
――隊長と隊員たちの間で温度差が(笑)。内藤 私たちが挨拶しても返事がないくらい集中されていて、どうしたんだろうと思ったら「あぁ、最終話だ」と気づいて。
搗宮 空気読んでいたつもりだったよね。
内藤 つもりだった。
田口 二人は銃を撃ちに来ていたから。
内藤 もう血気盛んな(笑)。
搗宮 すごい緊張感で、空気を読んで近くにいない方がいいと思ってお花を触っていました。
蕨野 なら視界に入るなよ! もう全部見えてたから(笑)!!
搗宮 本当に? すみませんでした。
内藤 失礼しました……。
蕨野 最終回に集中したいのに、撮った写真を俺に送ってくるんですよ。「マジか……」「写真は欲しく…ない、かな」と(笑)。そんなこともありました。
田口 とても花が綺麗で、本当は別の方向にカメラを向けたかったのに、花が映ると場面に合わないからどうしようってなったんだよね。しょうがないから、壁に向けて最終回のシーンは撮ったんだけど。
蕨野 あのシーンのブレーザーの「俺も行く」、あれ僕から田口さんに言ってほしいとお願いしたんです。
田口 ああ、現場の声当てをね。
蕨野 それには理由があって。俺はこの作品を作った田口さんこそ『ウルトラマンブレーザー』だと思っているから、ぜひとも「俺も行く」というセリフは、田口さんに現場で言っていただきたかった。
搗宮 聞いていて泣きそうになります、その話。
田口 言われてみたら「そうだね」と納得したんです。本編(ドラマパート)ではブレーザーの声を当てている(岩田)栄慶くん相手に今まで芝居をしていたわけではなく、ずっと現場で一緒にいたのは僕たちだから、「じゃあ、やります」と。
蕨野 『ウルトラマンブレーザー』という作品や円谷プロさん、田口さんのために俺は全力でやると、田口さんにお昼のお弁当を食べながら話をしていたんです。世に出す以上、リアクションはお客さんに投げてみないとわからないですが、絶対に『ウルトラマンブレーザー』を成功させたい。“ウルトラマン”というものを絶やさない。『ウルトラマンブレーザー』という作品をいろいろな方に知ってもらうために、俺は全力を出しますと。だから、最後も田口さんで締めたかった。そうじゃないと俺は無理だ、できないと。だから、あのシーンを演じることができたのは俺だけの力じゃないんです。
(C)円谷プロ (C)ウルトラマンブレーザー特別編製作委員会