• 宮野真守演じる敵役は不二子が「大人にした」――脚本・高橋悠也『峰不二子の嘘』制作秘話
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2019.06.21

宮野真守演じる敵役は不二子が「大人にした」――脚本・高橋悠也『峰不二子の嘘』制作秘話

原作:モンキー・パンチ (C)TMS

小池健監督・演出・キャラクターデザイン、高橋悠也脚本、クリエイティブ・アドバイザーの石井克人、音楽のジェイムス下地という布陣で作られてきた『LUPIN THE ⅢRD』シリーズ最新作、『LUPIN THE ⅢRD 峰不二子の嘘』が限定公開された。

このシリーズは『次元大介の墓標』(2014)、『血煙の石川五ェ門』(2017)と続き今回で3本目。『墓標』では次元を狙うヤエル奥崎という殺し屋が強敵として現れ、『血煙』では強敵・ホークが五ェ門と戦い、本作ではビンカムが峰不二子の前に立ちはだかる。終始ドキドキさせられる作品制作の秘密を、脚本を手掛けた高橋悠也さんに公開前に伺った。前・後編で掲載したものから一部抜粋して紹介する。

——監督の小池健さん、クリエイティブ・アドバイザーの石井克人さん、脚本の高橋悠也さんのお三方でどういう風に脚本を作っていくんでしょうか。

高橋 まず最初に石井さんがコンセプトとして敵キャラのイラストとか、こんな攻撃をしてくるとか、こんな食べ物が好きとか、そういうメモ的なものを毎回書かれるんです。それは文字情報だけじゃなくて絵も描いてあって。このキャラクターは次元や五ェ門や不二子となぜ戦うんだろうと。

これは『墓標』の時からずっとそうなんですけど、戦う理由や背景部分はこっち側で肉付けして物語に仕立て上げるっていうことをやってきました。基本的に話のとっかかりは石井さんのメモから始まってます。だから『不二子の嘘』のビンカムも実際出来上がったものはイケメンっぽく仕上がってるんですけど、石井さんが描かれてたのはもっと髪の毛が長髪で目がギョロッとしてて体型ももっと細長くて爪も長くて、ちょっと人とは思えないような細いゾンビみたいなビジュアルでした。それを『LUPIN THE ⅢRD』のフォーマットに小池監督がデザインで落とし込んで、僕がストーリーを作るっていう感じです。

——ビンカムを作って行く上での具体的な肉付けの仕方を教えてください。

高橋 ビンカムは不二子の色気が通じない敵キャラクターとして設定して、人造人間のようでいて、女を知らない、まだ性に目覚めてない、ある意味ジーンとは両極でいて合わせ鏡のような、男が不二子と出会うことで性に目覚めミスを犯してしまうというか、未成年の子どもが大人になっていく過程で不二子が大人にしてやったみたいな(笑)。どっか男の願望がそこに詰まっているような、ちょっとビンカムのキャラの中に自分を置いてみる、そういうのを合わせたキャラクター造形だったかも知れないです。

『墓標』から今回まで続いたシリーズには僕の中で裏テーマがあって。『墓標』では「風」をテーマにラストの対決シーンの風がやんだときが合図だっていうのが象徴的に描かれていて、『血煙』では「水」をテーマに雨の中鹿威しがカコーンと鳴ったらヤクザと斬り合うというのがあって、今回の不二子は何だろうな、と。

毎回そんなことができたらいいなと思ってやっていて、不二子では「砂」をテーマにしました。ビンカムの呪いの言葉という能力を砂の世界観にかけて。だからラストシーンは、乾いている男の心に潤いを与えるじゃないですけど、何かそういうものを表現できたらいいなと。あと作品の世界観として、砂に満ちた荒野っていう雰囲気も含めて考えていった部分はあります。

——原作のモンキー・パンチ先生のハードボイルドさやコメディな感じ、ルパンと次元、仲間同士の関係がドライでカッコイイ感じがたまりません。

高橋 それは本当に、ルパンってそうであってほしいなっていうところがあって。

第2シリーズから始まるファミリー向けルパン(『ルパン三世』1977-1980年放送)もね、国民に愛されている非常に魅力的な関係性だと思うんですけど、もう一個ダークでビジネスパートナーなヒリヒリしている関係性っていうのもあって。彼らは決していわゆるヒーローではなく、ヒーローでもあるんですがワルっていうか、人を救うために生きてる人たちじゃないっていうところを表現したい。それはルパン三世のね、ピカレスクロマンといわれる魅力の一つでもあると思うんで。

コメディでも、ちょっとブラックジョークに近いシニカルな口調っていうか、それは僕がシナリオを書く上で出来ることとして拘ってやっている事かもしれないですね。小池監督が小道具とか効果音とか含めて、すごい拘って作られる方っていうのがわかったので、あんまりファンタジックなものになりすぎないようにしていくっていうことも意識しつつ、ただそれだけだと面白くないので、リアリズムという制約の中で出来る最大限のファンタジーというか、そこは意識して頑張ってみたつもりです。

——今回も煙草を吸うシーンが魅力的ですが、アダルトルパンを意識されて入れられてるんでしょうか。

高橋 ルパンは何ルパンだろうと煙草を吸ってて欲しいなって僕は思っていて、そこはアダルト、ファミリー関係なくだと思うんです。

『墓標』のときに、当時僕も煙草を吸ってて、煙草がうまいっていう感じ、仕事を終えた後の煙草が美味しいっていうのは僕自身が感じてた事なので、『墓標』でそんな表現を入れたとき、何かそこがバチッとハマったんです。やっぱり、いざって時に吸ってて欲しいなっていうのがあって。

今回もラスト、ルパンから煙草をもらって吸うみたいな、あそこは何かねぇ。ああいうの、無くても出来るシーンをやることによって生まれる化学反応というか、ルパンらしさというか、そういうのに煙草は不可欠な気がしてますけどね。

お酒とか煙草とかそういうね。彼らは泥棒であり、欲に生きる男たち、男女たちじゃないですか。その象徴でもあるかも知れないですよね。だから彼らが節約してたら何かダサい(笑)。そういう無駄なものに浪漫と金を掛けるからこそっていう、ああいう職業で生きてるならばっていうね。



■高橋悠也(たかはし・ゆうや) Profile

脚本家。1978年生まれ。TV ドラマ「相棒」シリーズ(テレビ朝日)、「仮面ライダーエグゼイド」(2016)など話題作を担当。劇団UNIBIRDを主宰し、その舞台作品全ての脚本・演出を担当。「LUPIN THE IIIRD 次元大介の墓標」(2014)「LUPIN THE IIIRD 血煙の石川五ェ門」(2017)では脚本、「ルパン三世 PART4」 (2015)でもシリーズ構成と脚本を担当した。

文/村北恵子