『機動戦士ガンダム』40周年記念作品として制作され、遂に全国公開となったガンダムシリーズ最新作『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』。プロデューサー・小形尚弘氏のインタビュー後編は、現在だからこそのモビルスーツによる戦闘シーンのこだわり、映像の重厚さを担ったキャラクターを演じたキャスト陣のキャスティングなど、映像の仕上がりに関わるポイントについてうかがった。
▲小形尚弘プロデューサー
――メカデザインは、カトキハジメさんや山根公利さんといった、ガンダムシリーズでお馴染みの方が担当されています。小形 登場するモビルスーツには小説のデザインが存在しているので、それを料理する作業はやはりカトキさんが一番上手いと思い、力をお借りしました。あとは、村瀬さんとの相性が良く、方向性を理解してくれる方を集めたという感じです。
デザインの方向性としては、ペーネロペーが正当なガンダムの系譜の機体で、Ξガンダムはそれに対抗する存在のような見え方になってほしいという方針のもと、調整していきました。
――『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』における、ガンダム試作1号機と試作2号機の関係性に近いということですね。小形 そうです。なので、Ξガンダムはハッキリと異形さがわかるシルエットにしてもらっています。カラーリングに関しても、ゲーム版で描かれたものではなく、小説の雰囲気に寄せて白を基調としたものにしました。
――モビルスーツの表現に関しても、新しい試みを取り入れているのでしょうか。小形 ダバオ市街の空襲で公園を逃げ回るシチュエーション以外のモビルスーツ描写は、基本的に3Dをベースにしています。うちのスタッフは手描きでの見せ方が得意なんですが、ペーネロペーとΞガンダムがミノフスキー・フライトで重力下でも自由に飛び回る設定であること、また村瀬さんが3Dだからこそできるライティングを狙いたいという判断もありました。背景もカメラマップ(2Dの画像素材を使い、立体的な奥行きと動きを感じさせる映像へ変換する)という技法を使うことで、実写的なカメラワークが実現します。
▲3DCGをメインに描かれたクライマックスのMSバトル。
――では、今作で最も注目してほしいシーンはどこですか?小形 やはり空襲シーンですね。今回最大の見せ場だと思っていますし、だからこそこれをどう作るかが一番のポイントでした。村瀬さんだからこそのフィルムになっていることがよくわかる場面に仕上がっています。
キャラクターとメカを絡ませての地上での戦闘描写は、煩雑な作業が重なるので本来ならばまずやれなくて、少なくともTVシリーズでは絶対にできないです。しかし今回は、上空から降りてくるメカと地上の人の動きがしっかりとリンクした空間的な演出がうまく表現できたと思います。
――特にあの場面は、ドルビーアトモスによる立体音響が効果的でした。小形 本作のドルビーシネマ体験の印象は、クリストファー・ノーランの作品をIMAXで観た時の感覚に近いかもしれませんね。村瀬さん自身、ノーラン作品や『007』シリーズなどのハリウッド作品にインスパイアを受けているところが多いと思います。
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