• 『閃光のハサウェイ』が目指した「戦場」と「日常」のリアルサウンド
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2021.06.15

『閃光のハサウェイ』が目指した「戦場」と「日常」のリアルサウンド

モビルスーツの音ひとつにもこだわりが光る1作だ (C)創通・サンライズ

『機動戦士ガンダム』40周年作品として制作され、現在公開中のガンダムシリーズ最新作『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』。本作の音響演出を担当した笠松広司さんのインタビュー後編は、いよいよ実作業の話へ突入。「2021年のモビルスーツの音」に込められた意図、そしてドルビーアトモスを前提として作られた作品の音響空間などについて話を伺った。
▲音響演出を担当した笠松広司さん。

――音作りで難しかった部分は、やはりモビルスーツの戦闘シーンということになりますか?

笠松 そうですね。映像が完全に完成してから音の仕込みをするのは、作業の手順としては要領が悪くて時間もかかってしまうんです。そこで、こちらはコンテの段階から情報を読み取って、事前にすべて準備してから実作業に入っているんですが、今回はその事前準備に忙殺されました。先ほども言いましたが、『機動戦士ガンダム』のモビルスーツの音をどうやったら出せるのか、という部分が大変でした。しかも極力同じ音の使い回しをせず、機体ごとに違う音が聞こえる……そうしたニュアンスを保ちたかったので、1個音ができればOKとはいかず、相当時間がかかっていますね。

――なるほど、「ペーネロペーの音は特徴付けたい」と村瀬監督が仰っていた、という話もありましたし……。

笠松 はい、あとΞガンダムに関しても主人公機ということで、その他諸々と同じというわけにはいかないですから。当初はそのメイン2機をしっかりやれば、あとは……という感じでいけるかと思っていたんですが、上がってきた画を観るとなかなかそうはいかなくて(苦笑)。

――確かに、音を聞いただけで各モビルスーツの個性が感じられました。

笠松 音が違って聴こえたということであれば、こちらの演出が結果的に上手くいったということだと思います。

――中でも、ペーネロペーの異質な音は決まるまでには相当時間がかったのでは?

笠松 かなりのトライ&エラーを繰り返しました。村瀬さんからは「ペーネロペーは試作機みたいな部分があって、動きも含めていろんな部分がピーキーなので、音もそれに合わせたものにしたい」と説明を受けました。前編でもお話しましたが、モビルスーツの音は絶対に工業製品にしてはいけないと思っていたので、それを踏まえていかにペーネロペーらしくするかにこだわった、という感じです。Ξガンダムは「試作機のピーキーな部分が無くなって、もうちょっと扱い易くなっている」ということだったので、量産機より特別な感じがある方向で音を作りました。

――『閃光のハサウェイ』は、ドルビーアトモスの立体音響に対応した作品として制作されましたが、当初からそれを前提とした音作りをされていたのですか?

笠松 新型コロナウイルスの影響によって作業を中断しなくてはならない状況がありまして、再開したタイミングで「ドルビーアトモスでの上映が決定しました」という知らせを受けて、それに対応した形で進めました。通常の5.1chの音響と比較しても細かいエンジニアリングに関してやれることの手数は断然多いので、「アトモスだからこんな風にしました」というところはたくさんありますが、サウンドデザイナー的な感覚からすると、そこまで大きな差はないと思います。

――試写で体感しましたが、アトモスの特徴である立体感のある音響空間に包まれる感覚や効果が良く出ていたように思います。

笠松 そうですね、例えば劇中の市街戦のシーンですが、モビルスーツが地上に降りてきてハサウェイたちの近くで戦うシーンの音的なリアルは、アトモスだからこその臨場感が出せていると思います。従来の5.1chや7.1chの音響では、あのような立体感は出せなかったですね。
▲市街地で展開するMS戦を迫力のサウンドがサポートする。

(C)創通・サンライズ

アニメージュプラス編集部