• 【『映画大好きポンポさん』SP】富澤祐介が語る平尾隆之監督と『ポンポさん』
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2021.06.14

【『映画大好きポンポさん』SP】富澤祐介が語る平尾隆之監督と『ポンポさん』

(C)2020 杉谷庄吾【人間プラモ】/KADOKAWA/映画大好きポンポさん製作委員会


演出家・平尾隆之の特徴

——そんな平尾監督と富澤さんの出会いは、富澤さんが手掛けたゲーム『GOD EATER』ですが、どんな経緯で平尾監督とお仕事をすることになったのでしょう。

富澤 『GOD EATER』を2010年にオリジナルのゲームとして立ち上げるにあたって、何かしらアニメ的なフィーチャーをぜひしたいという話が出まして。その際に、うち(バンダイナムコゲームス/現・バンダイナムコエンターテインメント)のプロデューサーにufotableさんを紹介してもらい、当時ufotable所属だった平尾さんと出会いました。ゲーム発売前ですから、おそらく2008年頃だったと思います。ちょうど『劇場版「空の境界」第五章 矛盾螺旋』公開直後だったと記憶していますが、『GOD EATER』について説明をしたとき「こういう厨ニ的なものは、もう世の中に必要ないと思うんです」的なことを、淡々と言われたのを覚えています(笑)。ですから第一印象としては、その頃の平尾さんはナイフのように尖っていた気がしますね。両儀式(『空の境界』の主人公)と向き合ってきたせいかもしれませんが(笑)。とはいえ、作品に興味は持っていただけて、まずはゲーム内のOPアニメーションと、配信専用の12分ほどのPRショートアニメーションをお願いすることになりました。自分自身がアニメーション制作に関わるのがはじめてだったこともあり、平尾さんやufotableの近藤光プロデューサーに交互に叱られながら(笑)、一連の制作フローを体験する機会をいただいて。最初から平尾さんと、かなり濃密な時間を過ごさせていただきました。

*『GOD EATER』シリーズ=人類が衰退した地球を舞台に、特殊な武器〈神機〉を使ってモンスター〈アラガミ〉と戦うアクションゲーム。椎名は本シリーズの音楽を担当し、平尾監督はPVやOP&EDアニメーション等を制作している。後述のアニメ『GOD EATER』は本作の世界感をベースにしたオリジナルストーリーを描く、平尾監督のTVシリーズ。

——実際にお仕事をご一緒した経験も含めて、平尾さんの人となりや、アニメクリエイターとしての特徴などについては、どう感じていらっしゃいますか。

富澤 お会いする前から『劇場版「空の境界」』シリーズは公開済みのものはすべて観ていましたが、やはり中でも公開されたばかりの、平尾さんが担当した第五章は印象的でした。言葉では表現しにくい “こだわり” というか、他とは異質なものを感じたので。そして『GOD EATER』でご一緒した後に『桜の温度』というショートフィルムを観たときは、自分では「厨ニ的なものはもう必要ない」と言っていたわりに、そのど真ん中にいる人じゃないかな、と思いました(笑)。『桜の温度』は平尾さんの私小説のような作品ではないかと、僕は勝手に思っています。どこか青臭い精神性と詩情みたいなものを隠し持っている人かもしれないと思って、僕自身、そこにシンパシーを感じました。その上で、演出手法の面では、既存のアニメーション演出にとどまらず、アニメーション外の映像表現や、何か新しい方法論に、つねにチャレンジしたいと考えている人だと思います。『GOD EATER』でも、ゲームの新作を作るたびにOPなどのムービーを作っていただきましたが、そのたびに我々を驚かすような実験的な画作りを提案してくれて。とにかく自分たちが持ち合わせていないセンスを、ゲームの入り口であるOPムービーに盛り込んでもらえるのが毎回、楽しみでした。「今回、平尾さんは何をやってくるんだろう」と。また、短いOPに膨大なの情報量を入れ込んであるので、平尾さんが演出した映像は何度観ても発見や驚きがあるんです。ゲームOPはファンに何度も観てもらって、いろいろ想像していただくことをひとつの目的にしていたので、それもありがたかったなと思います。

*劇場版「空の境界」シリーズ=奈須きのこ作の長編伝奇小説を劇場版アニメ化したシリーズ。平尾監督はその第5章「矛盾螺旋」を監督、独特の映像世界を展開して注目を集めた。

*桜の温度=2011年に公開された、平尾監督の短編映画。平尾監督の故郷でもある香川県の田舎町を舞台に、高校生の男女3人の複雑な感情のドラマを、独特の詩情あふれる映像で描く。現在、徳島市のufotable CINEMAで毎朝1回、上映されている。

——おっしゃるとおり平尾監督の作品はどれも、他の作品とはどこか違う映像の雰囲気を感じさせるところが特徴ですね。

富澤 そうですね、僕もいまだにそれを言葉で説明するのは難しいですが……。やはりアニメ以外の映像の方法論をアニメに持ち込むことによる化学反応みたいなものが、つねにあると思うんですよ。実写的な発想も、実写をそのまま真似するのではなくアニメに1回落とし込んで、新しい表現としてチャレンジする。結果、観たことのない映像になる。平尾さんご自身が、それをどのくらい計算されているのかはわからないですが、提案される我々としては、平尾さんの毎度のアイデアにはいい意味でのらざるを得ない。間違いなく新しいものになるという確信を持ちつつ、ワクワクしながらご一緒しているようなところがありますね。

(C)2020 杉谷庄吾【人間プラモ】/KADOKAWA/映画大好きポンポさん製作委員会

アニメージュプラス編集部