◆劇中歌アレンジのコンセプト◆——今回は劇中歌『ずっと ChamJam』のアレンジも担当されています。コンセプトを教えてください。日向 今回は劇中歌も劇伴も共通のコンセプトで、生身の人間っぽさを感じるサウンドを目指しました。そのために使う楽器を厳選して、ひとつひとつの楽器の表情の変化をより見えやすくすることで、息遣いが感じられるようなサウンドにしたい、というのが今回のコンセプトですね。
ヒザシさんやFuntaさんが制作されたアニメの原曲のイメージは大事にしたいと思ったので、ドラマ版のサウンドとアレンジの落とし所をすごく慎重に探っていきました。
——ちょっと乱暴ないい方かもしれませんが、アニメ版のときがアルバムバージョンで、今回がライブバージョンっていう印象がありました。寺田 「ChamJamが実際に歌って踊って汗をかいている感じ」というイメージはこちらからもお伝えしていたので、そういうライブ的な雰囲気はまさに出したかったところです。今回は強い疾走感もあって良いですよね。
日向 ドラムの要素が大きいと思います。
——ドラムの音数が前より多いような気もしました。日向 音数自体は実はそんなに変わっていないです。基本的には原曲そのままをリスペクトさせていただいていて、途中に入るフィルや、ミュージシャンの方々がプレイする中で、その場で生まれるグルーヴ感やライブ感は、実際にレコーディングして初めてできたものなので、ドラマ版のバージョンとして、新たに付け加えられたところだと思います。
寺田 楽器のレコーディング前に、本編映像も少し形になっていたんですよ。そこで、この映像の雰囲気ならこういう感じの収録がいいかも、と話し合うことも出来たので、そこも大きかったですね。
あとは日向さんにはアニメのときに『ずっと ChamJam』の劇伴アレンジは何曲か作っていただきました。だから『ずっと ChamJam』のアレンジということで言うと、これが初めてではないんです。そのときは基本しっとり寄りのアレンジでしたが。
日向 はい。心情寄りの曲が多かったです。
寺田 今回は真逆のアレンジでしたが、実写の雰囲気に合っていてとても良かったです。あとは今回、色々な都合の中で、2番まである長い音源は制作していないんですよ。1番のみか、もしくは1番+間奏+ラスサビのワンハーフなんです。ただ、実際の出来上がりを聞いてみると、個人的にはこのワンハーフの尺がすごく気持ちよくて。疾走感もあって、何度も繰り返し聞きたくなる感じ。この勢いがキャストの皆さんのダンスパフォーマンスとも合っている気がしていて、気に入っています。
——いわゆるテレビサイズと言われるものですよね。寺田 はい。ただ『ずっと ChamJam』はそもそも1番が長くて、今回のテレビサイズ的な尺でも2分半ほどあるんです。
日向 そうですね。自己紹介やコールもありますから。
寺田 1番のみでも聞き応えがあると思います。
——もうひとつの劇中歌『Fall in Love』も日向さんがアレンジされています。『ずっと ChamJam』とはまた別物だと思いますが、こちらのコンセプトはどういった感じでしょう。日向 『ずっと ChamJam』も『Fall in Love』も基本的には楽器の厳選ということで、ドラム、ベース、ギター、キーボードの基本的なバンド編成で作っています。ただ2曲で少し違うところが、キーボードの使い方です。『ずっと ChamJam』に関しては基本的にはずっとシンセサウンド、もしキーボードの人がいるとしたら、その人にはシンセサウンドを出す担当をしてもらうというイメージで作っています。原曲のアレンジも、ChamJamの自己紹介部分で一人ずつパートごとにアレンジが少しずつ変わっているんです。シンセの音色がちょっとずつ変わる原曲からインスピレーションをいただいて、アレンジを構成していきました。
『Fall in Love』に関しては、『ずっとChamJam』との違いを出したいということもあったので、キーボードはシンセサウンドではなくてピアノの音色に固定して、あえてプレイで見せていくスタイルにしました。
寺田 今回の『Fall in Love』のピアノ、めちゃめちゃ好きです。
日向 ありがとうございます。生ピアノではなく、キーボードのあえて上の方がキラキラするようなブライトなピアノの音を使っています。
——ギターの音も違うように聞こえます。日向 実はギターも原曲の音色を参考にさせていただいています。ドラマ版のアレンジを作っていく上で、ギターの音色を土台として、そこからイメージする形で、サウンド面は固めていきました。
2曲とも最初はギターのソロから始まるのですが、そのギターの音色も原曲のサウンドをリスペクトしながら、ミュージシャンの方に音色を作っていただきました。
——より尖ったように聞こえたのは全体のアレンジの効果でしょうか。日向 そうですね、ミュージシャンの方が原曲のギターの音色を聞いてそこから作ってくださった音、という違いと、あとはエンジニアさんもバンドサウンドという土台が綺麗にまとまるようにミックスして音色調整してくださったので、そういった違いはあるかなと思っています。
(C)平尾アウリ・徳間書店/「推しが武道館いってくれたら死ぬ」製作委員会・ABC