• 【ClariS】の『淋しい熱帯魚』は、Winkを敬愛した表現力の結晶だ
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2023.06.21

【ClariS】の『淋しい熱帯魚』は、Winkを敬愛した表現力の結晶だ

【ClariS】の『淋しい熱帯魚』は、Winkを敬愛した表現力の結晶だ

2人組ユニットのClariSが、Winkの1989年のヒット曲『淋しい熱帯魚』のカバーを収録したコンセプトEP『淋しい熱帯魚』をリリース。同曲は5月に開催されたライブ「ClariS SPRING LIVE 2023 ~Neo Sparkle~」の最終公演で初披露されたもの。80年代の音楽番組を完全再現、Winkの衣装やメイク、振り付けや表情をオマージュしたミュージックビデオは、ClariSファンだけでなく当時のWinkファンや昭和レトロ愛好家の間でも話題になった。インタビュー前半は、ClariSの結成当初のコンセプトが「21世紀のWink」だったことや、『淋しい熱帯魚』をカバーするにあたっての苦労など話を聞いた。(前編/全2回)

■実は、Winkの昔の映像をたくさん観て研究したりしていた

――今回のコンセプトEP『淋しい熱帯魚』は、楽曲だけでなくMVの世界観も含めて、80年代〜90年代初等の時代感を丸ごと表現している印象です。

クララ:はい。楽曲もそうですけどスタイリングだったり、Winkさんへのリスペクトを込めて、いろんな部分でオマ―ジュさせていただきました。当時の音楽番組やWinkさんの音楽に馴染みがない方は、「当時ってこんな感じだったんだな」って楽しんでいただけたら嬉しいですし、リアルタイムで観て来た年代の方でも、懐かしく思っていただける部分がたくさん詰まった1枚に仕上がっています。

カレン:私たちもリアルタイムで観ていたわけではないのですが、懐かしいものを取り上げたテレビ番組などで『ザ・ベストテン』や『夜のヒットスタジオ』などの当時の映像を目にしたことはあって。それを私たちのMVの中で、セットとして再現していただいて、とても新鮮な気持ちでした。MVの画面サイズや画質も当時と同じに合わせてあって、本当に力を入れて作り込まれたものになっています。

――ライブのMCでも言っていましたが、ClariS結成当時のコンセプトが「21世紀のWink」だったそうですね。

クララ:そうなんです。ちょっと無機質であまり笑顔の無いお人形さんのような、Winkのお二人の雰囲気で、活動ができたらステキだよねというお話があって。その時はWinkさんが音楽番組で歌っていらっしゃる昔の映像をたくさん観て研究したりしていたのですが、まさか10年以上経ったこのタイミングでカバ―させていただけるとは夢にも思いませんでした。今回リスペクトの気持ちを込めて、カバ―させてもらっているのですが、そこに私たちのClariSらしさも違和感なくプラスされていて、カバ―でありながらオリジナル楽曲のような気持ちもあり、きっと当時たくさん研究したからこそ、自分たちの身に染みついていたんだなと感じています。

――でもClariSさんがデビュ―した当時、コンセプトが「21世紀のWink」だったと聞いたことがなかったです。

クララ:どこかでチラッと話したことがあるかどうかくらいで、キャッチコピ―のように全面には出してなかったんです。だから「21世紀のWink」というコンセプトは、今回ほぼ初めて公表したようなもので、当時からのファンの方でも驚かれている方がほとんどです。

カレン:実は私が加入した時に、参考資料として『淋しい熱帯魚』などWinkさんの映像をたくさん見せてもらったことを覚えています。その時に私が聞いたのは「レトロフュ―チャ―」という言葉で、「21世紀のWink」的な良さを残しつつ新しいものを展開して行くというコンセプトでした。ただそれは内―だけで共有していた、密かなコンセプトとしてあったくらいの感じだったので、今こうして二人で『淋しい熱帯魚』を実際に歌うことになるとは、全く思っていなかったです。

■Winkの無表情は、ただの無表情ではない

――Winkの映像をたくさん観たりして研究したとお話されていましたが、その上で感じたWinkの魅力ってどんなところですか?

カレン:例えば表情ですが、一般的にWinkさんと言えば無表情で歌うというイメ―ジがあると思いますけど、あれはただの無表情ではないと思ったんです。あの無表情には、彼女たちなりの歌詞の解釈が込められていたり、本当にいろいろなものを消化して自分たちの中に落とし込んだ結果としての無表情なんだということが、知れば知るほど分かりました。『淋しい熱帯魚』の歌詞の内容も当時のWinkのお二人にとっては、とても大人びた恋愛観の歌詞だったと思いますが、それを踏まえた上で表現されたのがWinKのパフォ―マンスなのかなと。もしデビュ―当時の私たちが、カバ―しようとしたとしても、きっと表現し切れなかったんじゃないかと思いますね。聴くだけなら「いい歌だな」だけで済むけど、実際に歌って踊ってパフォ―マンスすると、Winkさんの楽曲を表現することの難しさをすごく感じて、そこで改めてWinkさんのすごさを感じましたし、リスペクトの気持ちがより深まりました。

――どういうところが難しかったですか?

カレン:歌詞で言うと、私の中ではすごく広い海の中で、自分が住んでいる界隈はすごく狭くて、そこに捕らわれて抜け出せず、動けなくなっている様子を感じました。また、弄ばれているじゃないけど、自分の気持ちが軽視されている感じとか、私は直接経験したことがないけど、ドラマや本の中では知っている辛さがあるなって。それに〈Heart on wave〉とか〈I can't〉とか英語が出て来るから、その部分は軽く聴こえてしまうと思うのですが、作詞を手がけた及川眠子さんがその英語の歌詞に込めた思いは、きっとすごく深くて重いものなのだろうと思いました。だからこそ、それをどう歌ったらきちんと伝わるのか、すごく考えてレコ―ディングしましたし、パフォ―マンス中の表情も意識しました。

――歌詞をどう解釈して、どう表現するかで苦労したと。

カレン:そうですね。ClariSの曲は前向きなものが多く、『淋しい熱帯魚』のように最終的に思いが叶わず、切ないまま終わる曲はほとんど無いので、その部分はすごく新鮮でした。でも、もどかしいまま、不完全燃焼のまま終わるという時に、どういう顔をすればいいか分からなくて、それはとても難しかったです。

クララ:切ない歌詞だからと言って切なく歌うのでは、楽曲の雰囲気や当時のWinkさんの表現ともマッチしないので、絶妙なラインを探ったと言うか。感情を込めながら抑揚を付けて歌うのではなく、ちょっとした冷たさだったりちょっと無機質な歌い方をすることで、バランスを取って。その塩梅がすごく難しかったですね。

――ダンスミュ―ジックのノリいいサウンドと、歌詞の切ない内容とのギャップですね。

クララ:そうなんです。私自身は、どんどん切なく歌いたくなってしまうタイプなので、そこをグッと堪えながら、でも箇所ごとに引っかかりがあると言うか、皆さんに切なさを感じていただけるような表現もしていて。これまでのClariSの楽曲と、Winkさんの楽曲を聴き込んで自分たちなりに解釈して歌った『淋しい熱帯魚』を聴き比べて、違いを感じてもらえたらいいなと思います。

■MVは駅を貸し切って実際の電車を動かして撮影

――ClariSとして、新しい歌の表現になっていると。MVでは、Winkさんをリスペクトした衣装と振り付けで、表情も大切にしていますね。

カレン:ただ当時のWinkさんは、決して意識して無表情だったわけではなくて、その時のお二人の感情が表情に表れていると感じました。例えばMVには、電車から降りて来てホ―ムで歌うシ―ンがあるのですが、その時の無表情の中には、電車が遅れてスタッフを待たせてしまったことに対する申し訳なさを含ませてほしいなど、すごく細かい演出があって。「遅れて申し訳なさを感じている表情」なんてしたことがなくて。それで、お互いに「こういう顔かな?」って言いながら表情をチェックし合って、探り探りで撮影しました。

クララ:実際の駅を貸し切って、本物の電車を動かしてもらって撮影したんです。すごく貴重な経験でした。駅のホ―ムで歌うことなんて、この先もう二度と無いと思います。

――MVでは、Winkのソバ―ジュヘアなどのヘアメイクも再現されています。

カレン:ソバ―ジュヘアもやったことがなかったから、似合うのかどうか分からなくて、ちょっとソワソワしたんですけど、いざやってみたらお互い「いい感じじゃない?」って(笑)。そういったビジュアルの作り込みもあって、気持ちもすごく入り込めました。

クララ:眉毛もちょっとしっかりめに書いたり。そこはヘアメイクさんが、すごく研究してくださって。その成果がMVやジャケットに残せてすごく嬉しいです。

【後編】【インタビュ―】ClariS『はいからさんが通る』のMVで伏線回収!

ライター:榑林史章、編集:アニメージュプラス

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