• 新海誠『すずめの戸締まり』に続く次回作で「アニメーションの可能性を広げる」
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2023.10.18

新海誠『すずめの戸締まり』に続く次回作で「アニメーションの可能性を広げる」

『すずめの戸締まり』 (C)2022「すずめの戸締まり」製作委員会


◆次回作に向けて◆

ーー今回のパッケージには特典として舞台挨拶やイベントの映像も収録されています。そうした場で新海監督ご自身が場を回している様子が印象的です

新海 そういう印象をお受けになるかもしれないですね。出しゃばって見えていたらすみません(笑)。

ーー共演している登壇者に監督から話題を振ったり、観客と積極的に対話をなさったり。それは自然にやられているのでしょうか。

新海 「伝える」ことまで含めて自分の仕事だと思うので、ある程度は意識をしています。特に舞台挨拶だと、お客さんが何を求めているだろうと考えると、監督の話を聞きたいと思ってくれる人もいるだろうし、役者の話を聞きたいと思っている人もいると思いますが、司会者の話を一番に聞きたいと思って来ている人はいないと思うんです。もちろん司会者に立っていただかないと場を回すのは難しいですが、舞台挨拶のチケットを取るのはなかなかに大変ですし、苦労して来てくれたお客さんの満足度をちょっとでもあげたい。そうなると、スタッフや出演者など全員のことを知っているのは監督なので、僕がハブになって話をつないだほうがいいだろうなと、そこは意識的にやっています。

ーー今回うかがった作品を作る姿勢も、今のお話もそうですが、新海監督はサービス意識が強いのかなと、あらためて気付かされた気がします。

新海 サービス意識か……あるのかもしれないけれど、どうなんでしょう?(笑) 今、まさに新作の企画を始めている時期ですが、アニメーションを作りたいと強く思ってはいるけれど、アイデアは本当にない人間なんだなと痛感しているところなんです。たとえばこの前、公開中の『アリスとテレスのまぼろし工場』の岡田麿里さんとやりとりをしていて感じたのが、岡田さんはどんどんアイデアが湧き出てくるという本当に発想の豊かな方なんですが、それに対して僕はとにかく何も思い付かなくて(笑)。思い付かない中でギリギリ、やりたいトーンのようなものや扱いたい題材などを見つけてきて、だけどそれを語るためのプロットやキャラクターを考えるのにも非常に苦労して、何カ月もかけないとアイデアが出てこない。だから、やっぱり自分にはアニメーションは向いてないんじゃないかと今、凄く思っているところです(笑)。

――そうなんですか?

新海 「新しいアイデアがなかなか出てこない」「向いていない」という自覚があるからこそ、せめてサービスをしよう、せめて舞台挨拶ではお客さんに少しでも楽しんでもらおうと、自分の足りない部分を埋めようとしているのかもしれません。次から次へといい作品を生み出せていたらそれで満足するのかもしれないですが、自分はそうでもないので、1本、1本を大事にしようと思っているのかもしれないです。

ーー次回作の話はまだ気が早いとは思いますが、すでにいろいろ考えてはいらっしゃるわけですね。

新海 そうですね、まさに悩んでいる最中なので具体的なことはまだ何も言えないですが……ただ、やはりアニメーションを作りたい。そしてできれば、アニメーションの可能性を広げたいーーというと少し大げさですが。アニメーションの可能性を広げるような作品は他にもたくさんありますし、たとえばCG、人形アニメなど手法的な部分でも可能性はいろいろありますが、僕自身は観客の受け取り方、マーケットの広がり方なども含めて、アニメーションはもう少し広い場所までいけるんじゃないかと感じていて、その可能性を次の作品でも探っていければ、と。革新的なアニメーションを作りたいというより、「こういう題材をこういう風に作れば、今まで届かなかった場所まで届くんじゃないか」と、観客を広げていくアニメーション作りをもう少し続けていきたいなと思います。

ーーでは最後にあらためて、『すずめの戸締まり』パッケージ発売にあたってのメッセージをお願いします。

新海 インタビュー冒頭で「パッケージ発売は自分にとってそれほど特別ではない」みたいなお話をしちゃいましたが(笑)、パッケージ発売と同時に配信も始まりました。配信やパッケージはタイミングや物理的に映画館に行くことができなかった方に作品を観ていただける大事な機会です。

アニメージュプラス読者で「『すずめの戸締まり』は観ていないけどちょっと興味はあったんだよ」という方がもしいたら、手に取りやすくなったのでぜひ観ていただければ、もしかしたら他のアニメーションとは違う面白さを感じていただけるかもしれません。そしてパッケージの特典として、この映画をどのように作ったかという記録もたくさん収録されています。この機会に手に取っていただければ嬉しいです。
新海誠
1973年生まれ、長野県出身。2002年、個人で制作した短編作品「ほしのこえ」で商業デビュー。以降、発表される作品は高く評価され、国内外で数々の賞を受賞する。
2016年公開『君の名は。』が歴史的な大ヒット、次作2019年公開『天気の子』も高評価を獲得し、日本を代表するアニメーション監督のひとりとなった。
最新作『すずめの戸締まり』は日本国内で観客動員1115万人、興行収入は148.6億円を記録。第73回ベルリン国際映画祭のコンペティション部門へ正式招待されるなど、海外でも高く評価されている。

新海監督 撮影/荒金大介

>>>あの感動をもう一度!『すずめの戸締まり』名場面を見る(写真9点)

(C)2022「すずめの戸締まり」製作委員会

アニメージュプラス編集部

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