• 武内駿輔さんが語る映画『バービー』、そしてケン役を通して見た「自分らしさ」(前編)
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2023.10.24

武内駿輔さんが語る映画『バービー』、そしてケン役を通して見た「自分らしさ」(前編)

映画『バービー』の世界観に合わせたピンクの衣装に身を包んだ武内駿輔さん。 (C)2023 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.


◆OKが出るまで20テイクかかった台詞とは?◆

――アフレコ現場の雰囲気についてお伺いしたいんですが、今回はお1人でやられたのですか、それとも何名かと一緒に?

武内 基本は1人でしたね。アラン役の下野(紘)さんとはちょっとだけご一緒できたんですけど、他は完全に一人になっちゃいましたね。先に高畑(充希)さんがバービーの声を入れられていたので、その声のニュアンスを聞きながらというような感じでした。

――他のたくさんのケンたちがいるシーンなども基本的に1人で録られていたんですか?

武内 そうなんです。あと、単純にセキュリティの問題で、映像はモノクロでアフレコをしたんですよね。事前にPVを観てこんな感じなんだなと思ってはいたんですけど、実際の映画を観たら「あ、本当はこんな色だったんだ」みたいな(笑)。だからもうイマジネーションとの戦いでしたね、自分の中での。これはこういう色なんだろうなと。PVで観てここがピンク色でモノクロだったらこの色っぽいから、これは多分ピンクなんじゃないかな、みたいな予想はしていましたけど、何がなんだかわからなくて。ディスコのシーンとか、あと途中の移動のシーンとか、そういう割と非現実的な空間はこんな感じだろうなとか思いながらやったりしました。デュア・リパのマーメイドとかがいっぱい出てくるところも、これって全部同じ色なのかなみたいな。

アフレコ自体は、僕が新人の頃からお仕事をご一緒させていただいている梶谷さんというディレクターの方で、信頼してくださっているところもあったりするんですが、梶谷さんは絶妙なニュアンス感みたいなものにすごくこだわられる方なんですよね。最初のほうでバービーとケンが1日中遊んで、遊び終わった後に、今日は僕のお家に来てくれないかな、みたいなシーンで、「お家に行って何するの?」ってバービーが言った後にケンが「さあ、なんだろうね」って答えるその1つの台詞がなかなかうまく僕も言えなくて、20テイクくらいしたんじゃないかな。一番リテイクしたのがそこだったんですよね。

――大人同士がデートして家に行くとこういうことをするんだよみたいなことを、ケンがわかっていてとぼけているのか、本当にわからないのか、という意外に重要なニュアンスを含む台詞ですよね。

武内 そうそう、でもケンはやっぱりわかっていなくて「なんか全然よくわかんないけどそういうものらしいよ」みたいな。その気持ちに加えて、あとは音色の部分で「なんだろうね」じゃなくて、「なんだろうねえ」って若干語尾を伸ばしてくださいとか。さらっとしすぎてもちょっと違うし。でも、バービーとケンが、ものすごく純粋な状態で、2人っきりで他に誰もいない空間で喋るシーンは確かにそんなに数は多くなくて、やっぱりあれは大切にしないといけないシーンだったんじゃないかなっていうのはすごく思うので、何回も挑戦させていただけた、それにお付き合いしていただけたのは、ご迷惑をおかけしてしまいましたけれどもありがたかったなと思いました。それはすごく楽しい時間でしたね。

――バービーは主に女の子が子供の頃に遊ぶおもちゃですけど、武内さんご自身は子供の頃にどんなおもちゃで遊んでいましたか?

武内 やっぱり人形は通りますよね。ソフビみたいなものはめちゃくちゃ持ってました。30個から40個ぐらいは多分持ってて、仮面ライダーもウルトラマンも怪獣もソフビだと同じ頭身になっているので、それで1人で夢の共演、夢のコラボレーションをしてましたね(笑)。
それから、僕が子供の頃はカードゲーム、それこそ「遊☆戯☆王」とか、女子で言ったら「(オシャレ魔女〈ハート〉)ラブ and ベリー」とかが流行ってましたね。あとは「(甲虫王者)ムシキング」がちょうど直撃世代で、あのシリーズは新作が出るたびに絶対1回は遊んでいました。
昆虫が出たら今度は恐竜だとか、恐竜が出たら今度は動物だとか、色々な会社が競い合っていて、その文化に参加している感じもすごく楽しかったですし。細かい話なんですけど恐竜にも何パターンかあったんですよ。ムシキングの後に出た恐竜もので、先に出たのが「ダイノキングバトル」っていう、たぶん韓国の会社が作ったもので(編注:韓国のD-Gateが開発、日本国内での販売はタイトー)、その後にムシキングのセガさんが「(古代王者)恐竜キング」っていうのを出してきて、お前はどっち派なんだみたいなのもあったりして。キラキラカードが出たら児童館に持っていって、みんなが漫画を読んでいるところにわざとそのキラキラカードを置いて自慢したりとか、そんなことをやってましたね。

――虫と恐竜は男子の間では2大スターなんですね。

武内 虫と恐竜はやっぱりみんなハマりますよね。

――みんなで遊ぶ時の共通の話題みたいな形だったんですか?

武内 いや、でもやっぱりその時はたぶん自分が単純に好きだからですよね。結果として、みんなムシキングの話しかしないっていうだけで。
でも本来はそうですよね。遊びって自分が好きだと思うものをやればいいのに、大人になると、だんだん何か共通の話題のためにみたいな感じになって、付き合いの一環になっていくというか。そう考えると子供の頃は純粋で良かったなと思います。それこそ僕はカードゲームが本当にすごく好きだったんで、父の会社の余っている白紙の名刺をもらってきて、それに自分で鉛筆で描いてドラクエのカードゲームのカードを勝手に作って、それを友達に配ってみんなに昼休みにやってもらうみたいなこともしていましたね。
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前編では、武内さんがバービーについて持っていた印象や、自身が声を当てたケンというキャラクターについて、お気に入りのシーンやアフレコ時のこぼれ話なども含めて語ってもらった。さらに、少年時代にハマっていたカードゲームの思い出話にも花を咲かせた。後編では、作品を通して武内さん自身が再確認した「理想と現実」をめぐる価値観などについてに加え、あらためて映画『バービー』のみどころについてもお話を伺っていく。
後編はこちら>>>


アニメージュプラス編集部

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