• 『傷物語 -こよみヴァンプ-』尾石達也監督が大事にした「暦の選んだ行動と結末」
  • 『傷物語 -こよみヴァンプ-』尾石達也監督が大事にした「暦の選んだ行動と結末」
2024.01.16

『傷物語 -こよみヴァンプ-』尾石達也監督が大事にした「暦の選んだ行動と結末」

(C)西尾維新/講談社・アニプレックス・シャフト


◆物語の魅力とオススメのシーン◆

――改めて『傷物語』というストーリーの魅力を、尾石監督はどこに感じますか。

尾石 『傷物語』は最初に読んだ時から、テーマがとても重い話だなと思いました。扱うのも難しいし、自分自身、主人公の暦の気持ちを理解するのにも非常に時間がかかりました。だからこそ、暦の選んだ行動とその結末を、ラストシーンの暦と同じような気持ちで観客に受け取ってほしい。最後にスクリーンが明るくなった時に、観客のみなさんに暦と同じ心情を持ったまま劇場を出てほしい。そういう映画になるといいなと思って取り組んでいました。

――石川さんはいかがですか?

石川 お話の魅力か……月並みな話になってしまいますが、『傷物語』はあえて言うならキスショットというキャラクターのお話として、キスショットの魅力と相まって非常に面白い。さらには個別の作品を飛び越えて、今も続いている〈物語〉シリーズの根底となる内容を提示されています。西尾さんが『化物語』や『傷物語』を書いた時点で、どこまで現在のシリーズの展開を想定しながら書かれたのか、実は我々も知らないのですが……シリーズを通しての語られる物語のスタートラインであるという点も、『傷物語』の魅力のひとつかなと思います。

――お二人それぞれ本作のオススメのシーンを挙げていただけますか。

石川 僕は、本作はもちろんシリーズを通しても屈指の名シーンだなと思っているのは、暦とキスショットとの地下鉄の駅でのホームでの出会いのシーンです。キスショットが初めて暦の血を吸うシーンはもの凄いラブシーンだと、初めて観た時から感じていましたし、でもそれは単なるラブロマンスではない。〈ヴァンパイア・ストーリー〉でしか描けない独特のラブシーンでもある。そして、原作で書かれたその魅力を最大限に映像化するとこうなるんだな、と。本当に大好きなシーンです。あとはそうだなぁ……芳賀書店のシーンかな(笑)。

尾石 (笑)。

――羽川と出会って何となくムラムラした暦がエロ本を買いに行くという場面。わざわざ芳賀書店まで買いにいくんだな、と思いました(笑)。【*芳賀書店は神保町に実在する老舗書店。成人向け書籍を主に取り扱うほか、寺山修司『書を捨てよ町へ出よう』の最初の版元としても知られる】

石川 そうです。エロ本を買いに行くくだりは、何度観てもおもしろいなと思います(笑)。

――では最後に尾石監督、オススメのシーンをお願いします。

尾石 やはり、ラストシーンの暦の表情ですね。物語の中で描かれたいろいろな行動や選択が、最終的に暦の表情に帰結していく。『傷物語』って暦の挫折というか、失敗というか……彼の青春を描いていると僕は思うんです。ですから、いろいろな選択をした結果、暦が最後にどんな表情をするのか、ぜひ見届けていただきたいと思います。

(C)西尾維新/講談社・アニプレックス・シャフト

アニメージュプラス編集部

RECOMMENDEDおすすめの記事

RELATED関連する記事

RANKING

人気記事