• 『マジンガーZ』だったから面白い…『前田建設ファンタジー営業部』脚本・上田誠インタビュー
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2020.01.30

『マジンガーZ』だったから面白い…『前田建設ファンタジー営業部』脚本・上田誠インタビュー

『前田建設ファンタジー営業部』より。(C)前田建設/Team F (C)ダイナミック企画・東映アニメーション



◆真剣な青春映画


——『前田建設ファンタジー営業部』ってまさにそういう映画ですね(笑)。
プレスシートに「青春を過ぎた青春映画をどうぞ」とコメントされていましたが、青春ものはお好きなんですか?

上田 ん〜、あの、お仕事映画ってジャンルあるじゃないですか? それで、青春映画のような描き方でお仕事映画が出来ないかなって思っていたんです。映画は青春を描いた方がグッとよくなると思っていて。

前に演劇で『サマータイムマシン・ブルース』という作品を作ったんですが、タイムマシーン・コメディとして笑いをガンガン取りに行くぞっていうテンションだったんです。それを映画にした時は、SF青春映画として作って、副産物として笑いもあるという狙いにしたら映画の出来が良くなったんですよ。

『前田建設ファンタジー営業部』も、すごくコメディっぽく作ることは出来て、舞台はそういう感じもあったんですが、映画でそれをしてもあまり良くならないんじゃないかと思うんです。真剣な青春映画にした方が、何かこう、映画の輝きが増すんです。結果的に超笑えるシーンもあるんですけど、そこだけを狙いに行くと、何か大事なことが削げ落ちちゃう。それで青春映画として脚本を書いたんです。

——舞台版と映画版ではそういう違いがあるんですね。

上田 そうですね。笑いだけをやりにいって笑いをとるって、中々難しい。例えば僕は『古畑任三郎』が好きなんですけど、『古畑任三郎』はミステリーなんですよ。ミステリーを皆が真剣にやっている先のこぼれたところに笑いがあって、それが面白い。人が真剣に何かをやっているところを横から見たら滑稽、というのが映像での笑いかなと。

——他にはどんな違いが?

上田 舞台版のほうがもうちょっと、何でしょうね、ダラダラしてましたね(笑)。ラストだけ、夢と現実がない交ぜになって急に戦闘モードに変わっていくような場面があるんですけど、あとはわりとダラダラ会議室でしゃべりあうだけ。前田建設という、普段縁の下の力持ちのような日常を送っている市井の方々が、『マジンガーZ』の基地という壮大でファンタジックな物を作ろうとするギャップは、生っぽい会話の方がリアリティがあって面白いと思ったんです。

映画版は英勉監督からの導きがあって、ヒーローっぽい場面、スイッチが入ってやりすぎなくらい熱くなるっていう場面を増やそうとなって、温度高めにしたという感じです。監督は、ドラマチックであり、フィクションチックであり、ヒーローチックに飛ばすアレンジをしましょうと言ってましたね。これは実話を基にした話ですが、映画で語られるようなスト—リーがあったわけではないんです。じゃあ何が実話かというと、前田建設さんが協力企業さんと一緒に精緻なデータと図面を作り、積算までを本当に作り上げたという部分です。映画に出てくるデータや工法や図面は本物なんで、その本物はちゃんと使う、生かす。そこが一番のこだわりでした。掘削とかって、劇中で言われてるとおりなかなか興味を引きにくい(笑)。でも退屈する場面は「退屈するんですよね」っていう風に描けばいいかと思ったりして、そういう場面になりました。
▲熱血名上司のアサガワを演じる小木博明(おぎやはぎ)。

文/今秀生

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