• 『ゲゲゲ忌2020』に見た、そのユニークな魅力と可能性~後編~
  • 『ゲゲゲ忌2020』に見た、そのユニークな魅力と可能性~後編~
2020.12.30

『ゲゲゲ忌2020』に見た、そのユニークな魅力と可能性~後編~

『ゲゲゲ忌2020』では、『ゲゲゲの鬼太郎』のアニメ特別上映会も行われた (C)水木プロ (C)水木プロ・東映アニメーション


■第6期放送終了後初の開催となった「ゲゲゲ忌」の意義と今後への期待
『ゲゲゲ忌2020」』開催は、企画運営スタッフの信念と決断が実現させた新たなる一歩だった。何故なら、2018年以降、東映アニメーションが同イベントに協力してきた背景には、紛れもなく『ゲゲゲの鬼太郎』第6期放送という後押しが関係していたからだ。第6期の放送終了後、初めての開催となった今回の『ゲゲゲ忌2020』で、コロナ禍ということもあり、上映&トークを中止する選択肢は十分に考えられたと思う。そこを、勇気を持って敢行した(しかも無事に千秋楽を迎えられた)ことは、『ゲゲゲ忌』の第2ステージへの道を拓いたとも感じている。

2018年以降、『ゲゲゲ忌』に加わった新たな魅力である「上映&トーク」という要素。それは、6期だけでなく、1期から5期までの歴代『ゲゲゲの鬼太郎』に公平な光を当て、それぞれの作品に敬意を持って接したことがとても重要である。そして、スタッフとキャスト両方のゲストを各期別に招き、当時の逸話を話してもらうだけでなく、的確な台詞を配したオリジナルシナリオをもとに掛け合い芝居をしてもらうコーナーを用意したこと。それは、小さい頃に最初に出会ったアニメ『ゲゲゲの鬼太郎』の時代へとタイムスリップするような感覚を、参加したファンそれぞれに与えたことだろう。だからこそ、第6期が終了したことは大きな障害にならなかったのだ。

第6期もまた第1~5期と等しく、ある世代にとっての『ゲゲゲの鬼太郎』原体験となり、今後、公平な時間軸の一つに組み込まれていくことが想像出来る。この「公平性」を実現し得たのは、上映&トークイベントを先頭に立って切り盛りしてきた永富プロデューサーの裁量に負うところが大きい、と考える。今回の『ゲゲゲ忌2020』では、別作品の準備で多忙な永富プロデューサーの意向をアシスタントの高見暁プロデューサーが的確に引き継ぎ、イベントプロデューサーとして実務を全うした。

今まで、アニメ『ゲゲゲの鬼太郎』が放送終了すると、次の期が始まるまでには厳然とした空白期間が置かれていた。ところが、今回は少し様子が違う。この「ゲゲゲ忌」の年次開催が今後も続けば、いつか生まれるだろう第7期の企画内容、第6期との因果関係などには、これまでにない新たなチャレンジが誘発される可能性がある。そんな興味を抱けるのは、それだけ「ゲゲゲ忌」という試みが明確かつユニークなスタイルをもち、しかも成功を収めているからだ。

水木しげるさんが手掛けた一つの原作漫画をもとに、6種類のアニメ『ゲゲゲの鬼太郎』が生み出された。キャラクターデザインもキャスティングも異なる。シナリオや演出にも、それぞれの時代性が色濃く反映されている。にも関わらず、オープニング主題歌は同じ原曲が使われており、最低限のイメージの統一は保たれている。しかも、そこには不思議と明確な優劣はない。それぞれの期にはそれぞれのファンがいて、何年経っても愛着を持ち続けている。各期のアニメ版は、原作漫画の子として血のつながりを持ち、世界観の「かすがい」で結び合っている。漫画原作に基づく日本のTVアニメ史の中で、こんな共存が行われている作品は極めて特異なのではないだろうか。そこには、全シリーズを東映動画(東映アニメーション)という一社が製作してきた、ということも鍵になっているように思う。

そんな『ゲゲゲの鬼太郎』ならではの特異性があるからこそ、『ゲゲゲ忌』もまたイベントとしてユニークな存在になり得る。コロナ禍がいつ終息するか予断を許さないが、スタッフの皆さんには是非、挫けずに来年以降も『ゲゲゲ忌』を継続していってほしい、と切に願う。

(C)水木プロ (C)水木プロ・東映アニメーション

アニメージュプラス編集部

RECOMMENDEDおすすめの記事

RELATED関連する記事

RANKING

人気記事